真冬のイギリスで開催されたポルシェのミーティング「Das Feuer」に参加

Delwyn Mallett

2021年12月の身を切るように寒い日曜日。グロスターシャー州のモートン・イン・マーシュにあるファイア・サービス・カレッジ(消防大学)でポルシェクラブGB(以下PCGB)のイベント「Das Feuer」が開催された。小さなコンロですら、手を温めるのにありがたいと思うほどの天候だった。元々は2020年の3月に開催される予定だったが、コロナウイルスによる最初のロックダウンの影響によりキャンセルされ、昨年12月にやっと開催されたイベントだ。

「Das Feuer」はドイツ語で「火事」や「炎」を意味する。ポルシェレーサー兼オーナーであるパトリック・ロングがアメリカで始めた空冷ポルシェの祭典「ルフトカルト」に倣ったイベントだ。開催内容はポルシェ好きのための車両やアートの展示で、選りすぐりの車を撮影できる機会も数え切れないほどだ。イベント名にちなみ開催場所が消防大学だというのも洒落が効いている。ファイア・サービス・カレッジがモートン・イン・マーシュにできたのは、ここが第二次大戦時のイギリス空軍ウェリントン爆撃隊の訓練兼戦略基地だったことが由来だ。ここは平坦でだだっ広く、またこの日はひんやりした風も吹いており、イベント開催にはぴったりの条件だった。

巨大な500エーカーの敷地にはいくつものビルが建ち、内側や周辺には機械の破片などが散らばっている。演習を行えば、火事になるかもしれない。すすで汚れたコンクリート製タワーを見れば、戦地にいる実感が湧くだろう。他には緊迫した要素はないが、奇妙な光景ではある。例えば、ヘリコプターを思わせる大型の鉄製ボイラーのような物。船を型どって造られた「ヘンリー卿」と呼ばれるコンクリートのビルなどだ。また、敷地内には400ヤードの直線道路「M96」もある。

会場には、20台の変わった車たちが並べられた。その中には、展示車のなかでは最も古い車として、ル・マンにインスパイアされた私の1952年356ストリームライナーも展示された。911以前の車両、私のこの1台だけだった。

展示にあたり、私の356は会場までの往復移動にトレーラーを使うこととなった。先日の外出時にAA(自動車協会)にお世話になったことを知ったポルシェクラブの図らいで、数日前に決まったことだった。トレーラーに乗せるということは、つまり、車載固定用のベルトを通すために、スパッツを取り外すことになる。

車両の搬入後は当然スパッツを再装着しなければならない。早朝のイベント公開前、私はコンクリートの上に横たわり、凍える指で作業を開始した。自己流ではなく、クイックリリースのズースファスナーが使われていることを祈りながら。幸い、自己流ではなかった!イベントオーガナイザーのクリス・プルーデンに手伝ってもらい、なんとか作業を終えることができて一安心。

ストリームライナーは、コンクリートの防空壕に閉じ込められたように見えた。

その他、熱心なファン向けに目立った車としては、レストア直後で鮮やかに映えるシグナルオレンジカラーで1970年代を思い起こさせる914-6 GT数台に加え、RACラリーで優勝した911、ヒストリック・レースや「タットヒル・ポルシェ」に出場したサファリカーなどだ。

また非常にレアなロングテール956や、TV番組『スワップ・ショップ』に登場したクレマー935 K3がM96の”高速道路”の案内板の下でポーズを取り、会場に彩りを添えていた。その案内板には『Das Feuer』のロゴが表示されている。

(C) RICH PEARCE

ここ最近の356での遠出の際に感じたストレスと比べると、今回のトレーラーによる『Das Feuer』への旅は心地良く、ストレスフリーだった。少し肌寒かったけれど。空気が冷たい、そう、実に「空冷」なイベントだった。


Words and Photography: Delwyn Mallett まとめ:オクタン日本版編集部

イベントの写真はPCGBのサイトにも多数掲載されている。
https://www.porscheclubgb.com/community/images/latest/das-feuer

オクタン日本版編集部

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