女優から徴用したロールス・ロイス・レイスも展示|イギリスの「王立兵站部隊博物館」

Barry Wiseman

イギリスのThe Royal Logistic Corps Museum (王立兵站部隊博物館)は、昨年オープンしたばかりの真新しい博物館だ。ここではRoyal Logistic Corps(王立兵站部隊。以下RLC)の物語、つまり何世紀にも渡り、イギリス軍に兵器や食料を供給して支えてきた先人達の物語が展開されている。RLCはイギリス軍の中でも最大の部隊として兵士、物資、車両、戦車、弾薬、燃料、食料等の移動を主に担っている。侵攻中の軍に随行しながらの物資補給は簡単なものではなく、RLC抜きでは軍は機能しない。まさにこの部隊のモットーである「持続あるのみ」がそれを現している。

部隊は、何千台もの車両に加え、軍の保管物、軍需品、燃料補給所についても管理している。他にも、空や海だけでなく、列車での運搬もおこなうなど、その手段は多岐にわたっている。

ナポレオン・ボナパルトの名言に、「腹が減っては戦は出来ぬ」がある。この言葉は、この博物館内にあるナポレオンの野外炊事場の貴重な展示にぴったりだ。他の多数の現代的な博物館と同様に、部隊の貴重品の展示や照明には、豊富なスキルとイマジネーションが活かされている。

この時代の軍隊の輸送の風景に、退役者や軍人の人々は当時を回想することだろう。ここには、1942年のベッドフォードOY、1939年のモーリス8CWT、1962年のベッドフォード 3トンタンクローリーに加え、7万4000台が製造され“グリーンゴッデス(緑の女神)”として愛された、ベッドフォードRL四輪駆動トラックも展示されている。これらはどれも荒っぽい軍用の輸送車両ではあったが、徒歩に比べれば快適に移動できたに違いない。より現代的な車両では、ハンバー・ピッグ装甲車や、北アイルランド問題の際に2001年に最初に使用された、スナッチ・ランドローバーの展示もある。





RLCは実にイギリスらしい。ここにはモントゴメリー陸軍元帥が使用した、上級士官用のロールス・ロイス・レイスが展示されている。この荘厳な車は、1944年6月9日、ノルマンディー上陸作戦のD-デイの3日後にジュノビーチに到着し、このビーチにおける最初の民間車両となった。モンティ(バーナード・モントゴメリーの愛称)はこの車で、暗黙の信頼、そして権力とリーダーシップを表現しようとしたのだ。それ以前の彼は、有名なハンバー・スーパー・スナイプを使用していた。この1939年のロールス・ロイス・レイスは、所有者である女優マデリーン・キャロルから徴用され、1946年までモンティが使用したものである。ドイツ軍は全力でこの豪邸のような車両を狙っていたが、無傷のまま残った。



この博物館には、武器、制服などの素晴らしいコレクションに加え、売店や明るいコーヒーショップもある。迎えてくれるスタッフ達も皆明るく知識が豊富で、その上に勤勉だ。


The Royal Logistic Corps Museum (王立兵站部隊博物館)
住所: Worthy Down, Winchester, SO21 2RG.
営業:火〜土曜、午前9時〜午後4時
入場:無料(寄付は歓迎)
公式サイト: www.royallogisticcorps.co.uk/museum


Words and pictures: Barry Wiseman
まとめ:オクタン日本版編集部

オクタン日本版編集部

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