「いびつな458のような」マシンが、ラ フェラーリの開発で果たした重要な役割とは

Michael Jurtin (C) 2022 Courtesy of RM Sotheby's

2013年のジュネーヴモーターショーでラ フェラーリが公開されるまで、自動車業界ではスーパーカーブランドの巨頭たちが、量産可能なハイブリッドパワートレイン技術の開発にしのぎを削っていた。5カ月の間に、フェラーリ・ラ フェラーリ、マクラーレンP1、ポルシェ918スパイダーが生産を開始し、2013年がスーパーカーの進化にとって極めて重要な年になったことは間違いないだろう。数十年にわたり、内燃機関による最速の車を製造するためにメーカー間の競争が繰り広げられてきたが、電気パワートレインの採用はこのゲームのルールを大きく変えたのではないだろうか。ハイブリッドカーのパイオニアであるこのトリオは、パフォーマンスエンジニアリングの新時代を告げた。

もちろん、フェラーリがコンペティターのステージに登場するときは、常に壮大なものを手札に隠している。「LaFerrari」という大胆なネーミングは、「The Ferrari」と訳され、そのネーミングだけで話題を呼んだ。社長のルカ・ディ・モンテゼーモロは、この車を「私たちの会社を定義するもの」と表現している。先代の288GTO、F40、F50、そしてエンツォに続き、ラ フェラーリはフェラーリのフラッグシップスポーツカーの座に就いたのだ。クーペは3年間で499台、オープントップのアペルタは2年間で210台が生産された。



このような極めて重要な車が、フェラーリのバッジにふさわしくあり続け、また、ハイブリッドスーパーカーのライバルと互角に戦うために、その開発段階において既に他のモデルとは一線を画していたのは明らかだ。プロジェクトコード「F150」として社内で知られるようになったこのスーパーカーの研究・テスト段階は、3つのサイクルに分けられていた。

まず、「M6」と呼ばれる最初のテストミュールは、フェラーリのタイプF142プラットフォーム(通称フェラーリ458イタリア)をベースにしたものであった。ラ フェラーリの最終生産型と比較すると、この初期のテストミュールにラ フェラーリの雰囲気はなく、少し歪(いびつ)な458といった感じだ。ラ フェラーリの特徴のひとつである、ミッドマウントされたハイブリッドパワートレインを冷却するためのエアスクープはサイドになく、458イタリアの滑らかで途切れのないサイドパネルが特徴的で、ピニンファリーナが描いた流麗なラインも多く見られる。



また、ラ フェラーリのハイブリッド・パワートレインのプロトタイプを搭載するため、アルミ製のシャシーは改良され、フェラーリのF1マシンのようなカーボンモノコックとはまた別のものとなった。

エンジンは、M6にはV型12気筒のタイプF140FBエンジンを搭載していたが、最終的な市販車にはこれを発展させたタイプF140FEが搭載される予定だった。また、車体重量配分の研究の一環として、プロトタイプ周辺のショックタワーを改造した。このラ フェラーリプロトタイプの第1期は、2011年5月から2012年12月にかけて、ブレーキ、ステアリング、サスペンション、タイヤなどの機械部品のテストを行う開発モデルとして使用され、ラ フェラーリプロジェクトで初めてESP(エレクトロニックスタビリティプログラム)が採用された。



この3段階のラ フェラーリ・プロトタイプ・サイクルの後期は、社内で「セカンド・ファミリー・ムロティポ」「サード・ファミリー・プレスリー」(プレシリーズ)と呼ばれ、新しいものほど、フェラーリが2013年にカスタマーに納車した完成品に近い外観になっている。新しい電動パワートレインの複雑さを考慮し、フェラーリのエンジニアと研究者は、ラ フェラーリの開発に多大なリソースを投入した。フェラーリのマラネロ本社周辺では、スーパーカーのプレプロダクションカモフラージュが何度も目撃され、最終モデルが発表された後も、過酷なことで知られるドイツのニュルブルクリンクサーキットでテスト中の開発車両が目撃された。これはフェラーリのデザインへのこだわりを示すものであり、車のレベルを極限まで高めるための究極のテストであることは間違いない。



カスタマーの希望に沿うための努力を惜しまないフェラーリは、ラ フェラーリの開発ミュールがテストに必要でなくなった時点で、そのミュールを販売することにした。2016年7月にとあるコレクターに販売されたこの車は、ホモロゲーションを受けていないため公道での登録やサーキットでの使用ができないことを理解した上で、フェラーリによるリフレッシュと再塗装することを条件に提供された。

その後、このプロトタイプはいま再び売りに出されている。もちろん、テスト中に着用した追加の外部パネルも付属する。この車はフェラーリによって公式に認められており、フェラーリ・クラシケの認定も受けている。近代フェラーリの中でも特に評価の高いラ フェラーリ。そんな名車の礎となったこの車両をフェラーリコレクションの一台に加えるのはいかがだろうか。




Michael Jurtin (C) 2022 Courtesy of RM Sotheby's

オクタン日本版編集部

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

RANKING人気の記事