妻には「一切迷惑を掛けない」と誓う羽目に・・・旧車オーナーの悩みは万国共通?

Delwyn Mallett

『Octane』UK版寄稿者のデルウィン・マレットは、前日レポートした1937年スチュードベーカーの他に1952年ポルシェ356ストリームライナーも所有している。クラシックカーのエンスージアストから見れば羨ましい組み合わせかもしれないが、旧車所有車ならではのメンテナンスや家族からの理解に関する悩みは、どうやら万国共通のようだ。今回は、自宅から数マイルで牽引車のお世話になった話題をお届けしよう。



AA(Automobile Association 自動車協会)のバンに牽引されながらクラシックカーで帰宅するほど、気が滅入り屈辱を感じることはないだろう。積載車で運ばれるほうがまだましだ。なぜならその場合は、少なくとも自分は別の車に乗っているため、まわりの人々から奇異(と憐れみ)の視線を集めることはないからだ。

頑強なバーの後ろにいる自分は、他の車のドライバーからするとちょうど眼の高さにいるので、隣の車線から物珍しげな目で見つめられることになる。それに、牽引車両の真後ろでハンドルを握っている状況も非常に不愉快極まりない。周囲が見えない上に、カーブも予測できない。まあ、自分のハンドル操作がほぼ不要だから、自動運転の車に座っているようなものだと思うしかない。

圧迫感で居心地が悪くなるほど至近距離にある、AAのバンのリア。

本当ならこの日は、ストレスとは程遠い愉快な晴れた一日を、他の皆さんのクラシックカーを眺めて過ごすはずだった。私はその日、自宅から数マイルの場所で開催される「Shere Hill Climb」のイベントを観戦予定するだった。数人の友人達が夫婦で参加するため、私も妻を誘った。ただし、正直なところ、乗っていく車が私の1952年のポルシェ356ストリームライナーであることは、あえて言わずにいた。移動手段として妻が最も嫌う車だったからだ。出かける数分前、私は妻にこのサプライズを明かした。もちろん、最近完了したリビルドや移動距離の短さについても説明し、すべてが上手く行くはずだった。

しかし、出発後4マイル進んだところで、もはや“上手く行く”どころではなくなってきた。最初の兆候は、エンジンの軽い不調だった。妻のキャロルはこの微かな異変に気付かなかったようだが、私の心拍数を上げるのには充分過ぎる異変だった。その後、この異変は誰でも分かるレベルまで悪化し、状況は明らかだった。しかし、楽観的な私は「そのうち自然に直る」と願い、アクセルを踏み込んだ。「そのうち自然に治る」なんてことはもちろん実際にはめったに起きないのだが…

結局この問題は解決せず、私たちのポルシェは惰行の末に止まってしまった。そして1時間もしないうちに、憐れみ深い様子のAAの作業員が現れた。私はエンジンの不調について説明し、燃料が少ないせいかもしれないと伝えた。しかし、その後ポルシェは息を吹き返し、留まることなく高回転まで吹き上げたのだ。

そうなると故障の原因が不明のため、修理はできない。そこでAA作業員は私に、牽引して自宅まで送ることを勧めてくれたのだ。当初は断ったが、その後0.5マイルも進まないうちにエンジンはまたもや止まってしまった。少なくとも、AAを呼んだのが正解だったことが証明された形だ。この不調はその後も続き、我慢強いAA作業員のドミニクも、ついに牽引バーを出すこととなった。

この悩ましい不調の原因は、燃料不足ではないことは明らかだった。恐らくシングルキャブレターが、Judson製スーパーチャージャーを経由してエンジンに燃料を送ることができなかったことが原因かと思われる(オリジナルではツインキャブレター仕様だった)。私は、また止まるまでこの車をドライブしてフロートのレベルを確認ようかとも思ったが、いつどこで止まるか予測不可能なため、そのアイデアは不採用とし、観念して大人しく牽引されることになったのだ。



そして妻には、今後はストリームライナーのことで彼女に一切迷惑を掛けないと誓うこととなった。


Words and Photography: Delwyn Mallett まとめ:オクタン日本版編集部

オクタン日本版編集部

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