何だこの牽引車は? シトロエンSMの「自作ピックアップ牽引車」に試乗してみた!

Dennis Noten

この記事は【シトロエンSMがまさかの320km/hを叩き出す!? 世界最速記録に挑んだ男の物語】の続きです。


私は2013年にカリフォルニアを訪れた際に、ロサンゼルスの北に位置するサンタクラリタのSMワールドのワークショップに、ジェリー・ハサウェイを訪ねた。彼はこちらまで熱くなる情熱の持ち主だった。訪問の前には、ハサウェイの紹介で、ある人に私の本の序文を書いてもらった。『Octane』のコラムニストでもある、かのジェイ・レノだ。

ジェイはSMのエンスージアストで、ハサウェイを心から敬愛し、今は亡きハサウェイについてこう述べている。「シトロエンSMの知識にかけては、ジェリー・ハサウェイの右に出る者はいない。彼はこのユニークな名車の歩く百科事典だ。私が彼と初めて会ったのは1990年代初頭で、そのとき彼からSMを購入した。所有して30年近くになるけれど、故障も立ち往生も一度も経験したことがない。ちょうどオドメーターは13万マイルを超えたが、今も手に入れた当時と変わらぬ素晴らしい走りをしている。友よ、どうか安らかに。あなたのレガシーが消えることはない」

私の訪問から8年後、ハサウェイは離婚し、速度記録車とトレーラー一式は元妻のものとなって、2021年1月にアリゾナ州スコッツデールで開催されたグッディング&カンパニーのオークションに出品された。これを落札したのはベルギーのSMのエンスージアスト、ティエリー・ドゥアックだった。信頼できる人物の手に渡ったと知り、ハサウェイは胸をなで下ろした。

特別なSMを何台も所有するドゥアックは、次のように話す。「トレーラーは安泰だと伝えるメールを多くの友人がジェリー・ハサウェイに送ったと聞いて、本当に嬉しく思ったよ。もちろん私自身もジェリーに連絡して、シトロエンSM専用として、3つめの棟を増築し、トレーラーもそこに収蔵すると説明した。彼は親切にも、関連する記録をたくさん送ってくれただけでなく、ベルギーで登録できるように、ソルトフラッツ・レーサーの助手席も譲ってくれた。エンジニアリングの天才にして偉大な人物に敬意を表したい。私たち全員が、シトロエンSMの最高の友を失った」

ティエリー・ドゥアックは速度記録車を再び走らせることを望み、ハサウェイを驚かせた。しかしそのおかげで、私は史上最も意外な取り合わせのトレーラーを運転する機会を得たのである。牽引車だけに、重量はたしかに感じるが、SMピックアップは非常に扱いやすく、楽しく運転できる。おそらくあの独特のサスペンションシステムの賜物だろう。ただし、フラットベッドはアメリカンサイズだ。広大なカリフォルニアでは問題なかったが、ベルギーでは横幅が法規制を6cm超えているため、公道は走行できない。

セルフレベリング・サスペンションを持つSMは牽引車両にうってつけだ。

フラットベッドも実に手が込んでおり、ハサウェイはとりわけ誇りに思っていた。これ単独で語るに足る驚くべきエンジニアリングだ。航空母艦も顔負けの油圧システムを持ち、搭載するバッテリーで牽引車両とは独立で自立するほか、荷台が空でも車両を載せていても同じように機能し、どんな路面でも悠々とさばいて見せる。

セットの平台トレーラーも独立したニューマチックサスペンションを擁する。

オクタン日本版編集部

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