スチュードベーカーのタイヤ交換で途方に暮れる|『Octane』英国版スタッフの車よもやま話

Delwyn Mallett

『Octane』UK版寄稿者のひとりであるデルウィン・マレットの愛車は1937年スチュードベーカー・ディクテイターだ。錆びた“ラット・ロット”に愛を注ぐ日々だが、メンテナンスはなかなか一筋縄ではいかないようで、つい「この間抜けが!」などと呟いてしまうこともあるという。ある日のタイヤ交換の様子を本人のレポートでお届けしよう。



私は決して「間抜け」ではない。これはもちろん私の個人的な意見ではあるものの、とにかくだまされたと思って信じてほしい。しかし、古い車の整備に取り掛かる際、自分が「この間抜け!」とボソボソとつぶやいていることがあることに気づいた。しかも、叫んでいるときもあった。これは自分に向けた言葉なのだ。思い通りにいかないときに、つい口から出てしまう。

最近のこのスチュードベーカーの整備では、自分に向けたイライラの爆発が起きていた。他の車で以前に何度も経験しているようなメカ的な専門知識が不要な簡単な作業でも、失敗して完了できないことがあったからだ。今回のイライラはタイヤ交換だった。タイヤ自体には問題はなかった。問題は、そのカバーだった。



ある日、この”ラット・ロッド”スタイルのスチュードベーカーのタイヤのひとつがパンクしているのが見つかった。スペアのタイヤが1つでなく2つあったことに感謝しながら、私は交換を始めることにした。車の両側に取り付けられたスペアタイヤは、スタイリッシュなカバーに包まれていた。そのカバーをこれからすべて外していく。何とも簡単な作業だと思うだろう。それは天気の良い日曜日の朝の、たった30分の作業のはずだった。



しかし、30分では終わらなかった。このカバーは、内部と外部両方のパーツと合体していたのだ。一番大きい内部のパーツは、3箇所が雑にプレスで固定されていた。それぞれの動作で干渉しないように、ということらしい。指1本がやっと入る程の、溶接された小さな穴があった。そこから無理やり力を入れてカバーを引っぱることはできるものの、タイヤの上から外すのはかなり困難だ。

というわけで、まずは体制を整える。そして、他の部品が外れないようにしながら、インナー部分の下の端にある外側のカバーの先を引っ掛ける。この間、非常に重量のあるスペアタイヤを垂直に保っておく必要があるが、私の経年劣化した筋肉では、このタスクはこなせない。なので、垂直に保つことはあきらめて横向きに寝かせた。カバーのペイントに地面の砂利の傷が付いてしまうが、これも風格と言えるだろう。これは、“ラット・ロッド”所有者の利点ではある。

イライラしながら悪戦苦闘し1時間が過ぎた頃、私はふと気づいた。この2枚のパネルからなかなか外せない理由は、リムに元々取付けられていた出っ張りのある装飾をそのままにしていたからだ。間抜けだ!

すべて最初からやり直しだ。カバーを取る。装飾を外す。元に戻す。何とか動かしてボルトの穴が通るようにする。もう一方の車輪も同様に行う。30分の作業のはずが、2時間も掛かってしまった。認めたくはないが、やはり私は“間抜け”なのかもしれない…



Words: Delwyn Mallett



このようにスペアタイヤカバーの取付け・取り外しは、デルウィンの自尊心を大いに傷つけたが、彼の粘り強さには100点満点を与えてあげたい。試行錯誤や悪戦苦闘、四苦八苦しながら愛車と戯れることができるのも、クラシックカーの醍醐味といえるのではないだろうか。


まとめ:オクタン日本版編集部

オクタン日本版編集部

無料メールマガジン登録   人気の記事や編集部おすすめ記事を配信         
登録することで、会員規約に同意したものとみなされます。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

RANKING人気の記事