旧車とは「守り続けるべき文化財」。だから、360°カメラ搭載のケンウッド製ドライブレコーダーをMGB GTに付けてみる

Kazumi OGATA

諸事情あって、『オクタン日本版』編集長氏が所有する1967年MGB GTをしばらくの間お借りすることになった。

MGB GTとは、賢明なるoctane.jp読者諸氏にはご説明するまでもないとも思うが、MGの主力オープンモデルであったBのハッチバッククーペ版として1965年に誕生した粋な一台。固定屋根部分のデザインを担当したのはイタリアのピニンファリーナで、英国のMG社内チームが担当した丸みを帯びたベースデザインのなかに、どこかイタリアンな風味が感じられる直線的なファストバックスタイルが映えている。その“英伊折衷”とでも言うべきたたずまいはひたすら美しく、ひたすら魅力的だ。

だが、美しくアトラクティブな往年の名車だからこそ、しばらくお借りすることには若干の不安もつきまとう。

「駐車中の深夜などに、不逞の輩にイタズラされたらどうしよう?」「もしも盗難されたら、編集長氏に合わせる顔がない……」「MGB GTは可憐なたたずまいの車なので、舐めてかかる輩から“煽り運転”をカマされるのではないか?」等々が、筆者が抱えていた不安である。

そんな不安を解消するために熟考し、たどり着いた答えが「そうだ、ドライブレコーダー付けよう」ということだった。



世間で言うところの“ドラレコ”があれば、不逞の輩への抑止効果は大いに期待でき、万一何らかの被害があった場合にも、記録された映像を元に不逞の輩を追い詰め、詰め腹を切らせることができる。

そして、「善は急げ!」とばかりに装着すべきドライブレコーダー探しに熱中しはじめた筆者が「これだ、これしかない!」と確信できたのが、ケンウッドの「DRV-C770R」なるドラレコだった。

世にあまたあるドライブレコーダーの中からなぜ、私はDRV-C770Rを「これだ!」と思ったのか? 理由はもちろんいくつかある。

まず第一にシンプルで小ぶりな造形が、MGB GTという旧車によく似合うと感じた。ゴテゴテした造形および意匠の後付け品が、往年の英国車には不似合いなのは言うまでもない。だがDRV-C770Rの意匠とサイズであれば、MGB GTの世界感をさほど邪魔しないだろうと考えたのだ。

1967年MGB GTに装着した360°撮影対応2カメラドライブレコーダー「DRV-C770R」。写真は広角レンズで撮影したためやや大きく感じられるが、実際のフロント360°カメラはきわめてコンパクト。旧車ならではの世界感をスポイルしない。

そして第二の理由としては、MGB GTの世界感を毀損しない小さなサイズでありながら、かなり画期的な「フロント用360°撮影対応カメラ」と「後方撮影用カメラ」の2カメラ体制であるというのが大きかった。これらキャメラの具体的なパフォーマンスについては後述する。

そして第三として「ケンウッドはブランドイメージがいいから個人的に好き」というのもあるのだが、より客観的には「JVCと統合したJVCケンウッドならではの高い映像技術に基づく、美しい画像が得られる」というのが大きな理由であった。

映像の美しさ(鮮明さ)は、「不逞の輩対策」として使う際には証拠能力として非常に重要であり、もちろん「旅の記録を後日楽しむ」という目的のためにも、大いに重要なポイントとなる。

ということで購入したDRV-C770Rを、さっそくMGB GTに装着してみようと思う。……といっても難しいことは何ひとつなく、本体/リアカメラユニットともに「両面テープでウインドウに貼りつけて固定し、アクセサリーソケットにプラグを差し込む」という、ただそれだけである。筆者の場合はオプションの車載電源ケーブル「 CU-BC100」(別売)を使いイグニッションから電源を引っ張る形にしたが、アクサリーソケットを使うのが一番ラクであることは言うまでもない。

さて。電源の取得以外には3分もかからなかった装着作業を終えたMGB GTにて、DRV-C770Rの慣熟走行に出てみることにしよう。

事前のイメージどおりMGB GTの瀟洒な世界感を邪魔しないサイズとデザインであったフロントカメラは、水平360°/垂直240°の撮影画角を持つ全天周型カメラ。車両の前方と左右、車室内をまるごと撮影してくれるため、さまざまな方向から襲来すると予想される不逞の輩の姿を、まるごとキャッチしてくれる。そしてGPSやGセンサー、2.4インチディスプレイも内蔵しているため、例えば今回装着したMGB GTよりさらに奥行きがある車であっても、視野が広がる安心感を得られるはずだ。

リアカメラユニットは60mm×25mm×28.5mmときわめてコンパクトであるため、ルームミラーに映り込んでもほとんど邪魔にならない。というか、ほぼ映ってないに等しい(もちろん実際には映っているわけだが)。

フロント用360°撮影対応カメラは、1画面(前方、車内、リアカメラ、左、右)と2画面(前方/リアカメラ)、4画面(前方/左/右/リアカメラ)、パノラマ(パノラマ/リアカメラ)という4種類の画面表示モードを搭載。写真上は4画面表示モード。

リアカメラの外寸は60mm×25mm×29mmと非常にコンパクトなため、まったく邪魔にならない。F1.8という「明るいレンズ」である点も好印象。

だが、そんなにもコンパクトな前後カメラのセットでありながら、この「安心感」は何なんだ?

フロントカメラが周囲の状況を360°にわたって記録してくれ、そしてリアカメラも十分以上の鮮明さでもって後方の状況を記録してくれていると考えると、貴重な旧車を公道で走らせる際の精神的なストレスは――自分比で――おおむね5分の1程度まで低下するのだ。これはいい。

高感度CMOSセンサー「STARVIS」なるものの活躍により、昼間はもちろん、夜間やトンネル内での暗いシーンもかなり鮮明に録画してくれるわけだが、それに加えて筆者が「これはいいぞ!」と思ったのが、前後2つのキャメラに「HDR機能」が搭載されている点だ。

HDR(High Dynamic Range)撮影とは、明るさが異なる画像を複数撮影し、それを合成することでダイナミックレンジ(再現できる明るさの幅)が格段に広くなるという技術。DRV-C770Rはこれを使用しているため、トンネル出入り口などの明暗差がかなり激しいポイントでも「白とび」や「黒つぶれ」がきわめて少ない、安定した録画が可能となるのだ。

またDRV-C770Rの前後2カメラには、明るさをそれぞれ7段階で調整できる「明るさ調整機能」が搭載されている。まぁ英国車の場合はリアガラスがスモークタイプである場合は少ないと思うが、仮にそうだったとしてもリアカメラの明るさだけを調整し、後方の映像を明るく、鮮明な映像で録画することも可能となる。



フロントの昼と夜のシーン。前後2カメラにCMOSセンサー「STARVIS」を搭載するとともに、JVCが長年培ってきた独自の映像技術によるチューニングを行うことで、夜間も鮮明で高画質な録画が可能となっている。

リアカメラの映像も自転車も含め、かなり広範囲に撮れている。例えばトンネルの出入り口などの明暗差が激しいシーンでも、HDR機能により安定した録画が行えるという。

以上のとおり、機能およびデザインならびにサイズ感としては「申し分ない」と思えるDRV-C770Rなわけで、それを装着したうえで借り物の1967年MGB GTを青山界隈で走らせていた筆者の心中からは、事前の不安はほぼ雲散霧消していた。仮に今、何か良くないことが起こったとしても、DRV-C770Rが鮮明な画像で記録してくれている。そのため、私がジェントルマンとしてジェントルな運転をしている限り、私の身の潔白と名誉は守られるのだ。

そして今この瞬間、万が一の話ではあるが不逞の輩が車を降り、私の(というか、私が借りている)MGB GTのドアを蹴るなどする兆候を見せた場合には、ディスプレイの右下すぐの位置にある「緊急イチ押し録画ボタン」を押せば、フロント用360°カメラが即座に録画をスタートする。

このボタンを押すことで録画される映像は、常時録画で書き換えがされないイベント記録専用のフォルダに自動的に保存されるため、貴重な文化財に蹴りを入れてきた輩は後日、猛烈に後悔することになるだろう。輩は「反省している、許してください」などと懇願するかもしれないが、私は許さない。確固たる証拠を元に、不逞の輩の罪と責任をとことんまで追及する所存だ。

万が一の際に、迷わず素早く手動録画を開始できる「緊急イチ押し録画ボタン」(2.4インチモニターの右下)を、フロント用360°撮影対応カメラに搭載。


……などと力みかえってみたが、2022年3月の青山界隈は実に平和で、不逞の輩に遭遇することもなく、きわめて平和で楽しいドライブを続けるのみであった。

そして帰宅。別売りの車載ケーブルを使うことで利用が可能になる「常時監視モード」または「衝撃検知録画モード」に駐車中のMGB GTを守ってもらいながら、私は自宅にて本日昼間に記録したSDカードの映像をPCで再生してみた。

やはり、いい。晴天の青山界隈の様子を、DRV-C770Rは見事に360°にわたって録画してくれていた。青山も、私の大好きな街ではある。だが次回はさらに風光明媚な場所にMGB GTを連れていき、爽快なドライビングを楽しむとともに、帰宅後は――これまでは見ることが叶わなかった――ドライビング中のさまざまと風景とを、録画映像にて堪能してみようと、心に誓ったのであった。

文:玉川 ニコ 写真:尾形 和美 Words: Nico TAMAGAWA Photography: Kazumi OGATA

文:玉川 ニコ 写真:尾形 和美 Words: Nico TAMAGAWA Photography: Kazumi OGATA

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