ナイジェル・マンセルが「セナ・タクシー」を含む個人コレクションを放出!伝説のマシンを本人から手に入れるチャンス

Tom Gidden ©2022 Courtesy of RM Sotheby's

5月14日に開催されるRMサザビーズのモナコオークションで「ナイジェル・マンセル・コレクション」が出品されるというニュースが届いた。ナイジェル・マンセル本人から直接依頼を受けて実現したこのオークションに出品されるのはマンセルの個人的なコレクションで、1989年に彼が2勝を挙げたフェラーリ640と、1991年のウィリアムズFW14が含まれる。これまでオークションに出品されたF1マシンの中で最も重要な2台であることは疑う余地がない。

2台の完全オリジナルF1マシンを、ワールドチャンピオンであるオーナー兼ドライバーから直接手に入れるチャンスは、めったに、いや、おそらく二度とないだろう。全く手つかずのフェラーリ640とウィリアムズFW14、有名なシャシーNo. 5は、世界中のF1ファン、モータースポーツファンにとって、究極の入手機会となることだろう。V型12気筒のグランプリ・フェラーリは、偉大なF1カーの本格的なコレクターにとって、おそらく究極の逸品である。

1989年のフェラーリ640、シャシーNo. 109は、そのような1台だ。フェラーリF1マシンの中で初めてセミオートマチックギアボックスを搭載したマシンでもあり、フェラーリの歴史において重要な一台だ。1989年2月、シャシーNo. 109は、エンツォ・フェラーリ抜きで発表された史上初のフェラーリ・チームカーとしてプレスに公開され、その後、新たに契約したナイジェル・マンセルがチームでの初戦を戦うために最初に身体を預けたマシンとなった。シーズン前のテストでマシンの信頼性が低いことが判明したため、マンセルはあまり期待せずに1989年3月26日にリオデジャネイロのジャカレパグアのコースに乗り込んだ。実際、マンセルは予選6位、チームメイトのゲルハルト・ベルガーは3位を獲得した。アイルトン・セナ、アラン・プロスト、ネルソン・ピケらがひしめく激戦区で、マンセルは上位に食い込み、2位のプロストを抑えてフェラーリでのデビューレースを勝利で飾った。マラネロでの初勝利、そしてセミオートマチックギアボックスでの初勝利を7秒以上の差で飾った。



ハンガリーGPでは、予選12番手からファステストラップを記録し、アイルトン・セナをオーバーテイクしてトップに立つという鮮烈な勝利を飾った。マンセルはシャシーNo.109を所有することになり、1990年1月に彼のパーソナルカーコレクションに加えられた。1989年に最後のフェラーリ・メカニックが手を引いて以来、ボルトやナットに手が加えられることもなく、コンプリートカーとして現存している。コレクターにとっては、まさに千載一遇のチャンスだ。ちなみに、推定落札価格は2,500,000~5,000,000ユーロ(約3億2000万~6億4000万円)となっている。



エイドリアン・ニューウェイ設計のウィリアムズFW14は、ウィリアムズチームの洗練された技術と新時代の到来を告げるもので、1992年の世界選手権で優勝して頂点に立ったマシンだ。1991年、ウィリアムズFW14はグリッド上のどのマシンにも負けないペースで走れることを証明し、マンセル自身も世界のトップドライバーを打ち負かすスピードを持っていることを証明した。

マンセルはマニクールで初めてFW14-5のステアリングを握り、1991年のF1初勝利を挙げた。FW14-05はレースを終始支配し、マクラーレンMP4/6のゲルハルト・ベルガーに42秒293という圧倒的な差をつけてゴールした。アイルトン・セナは4位でゴールしたが、58周目に燃料切れとなってしまう。ウイニングラップの途中でマンセルがコース上で停車し、セナが乗り込んだ「セナ・タクシー」としてのエピソードは非常に有名だ。



マンセルはFW14-5で連勝を続け、ドイツGPで優勝、モンツァではセナに16秒262の差をつけてフィニッシュした。1991年のドライバーズ選手権はこの時点で、マンセルとセナの差はわずか18ポイント、残り4戦であった。スペインGPでは、レース序盤にマンセルとセナが激しいバトルを展開。モータースポーツの象徴的なイメージを作り上げ、マンセルが1位となった。



ウィリアムズFW14は非常に競争力が高く、FW14-5が優勝、2位を2回獲得し、マンセルとこのシャシーのコンビは向かう所敵なしであることを証明することになった。1991年シーズン終了後、ウィリアムズはマンセルの成功を称えてFW14-5を贈った。以降、前述のフェラーリ640同様、30年以上にわたってマンセルのコレクションの一部となっている。ルノーV型10気筒エンジンはシーズン終了後にルノーに移管されたが、このマシンは現代において最も崇拝されるF1マシンのひとつであり、ドライバーから直接入手できる機会など、これを逃せばまずないだろう。落札価格は1,500,000~3,000,000ユーロ(約1億9000万~3億8000万円)と予想されている。

このコレクションには、マンセルが勝利を収めたもう1台のレーシングカーも含まれている。2006年のグランプリ・マスターズ・シリーズでマンセルが2度優勝した2005年レイナード2KIグランプリ・マスターズ・カーだ。



2000年のレイナード2KIチャンプカーをベースに、650bhpを超える3.5リッターV型8気筒エンジンを搭載し、2005年にスタートしたシングルコンストラクターのモーターレースシリーズで、元F1ドライバーたちが同じ土俵で戦うために使われたのと、同一車両のシリーズである。マンセルのトレードマークである「レッド5」をフロントに装着し、南アフリカのキャラミではポールポジションから優勝、カタールのロサイル国際サーキットでは1位を獲得した。レースシーズン終了後、ナイジェル・マンセル・コレクションに加えられたこのマシンの保存状態は完璧だ。


その他、1990年のiC Modulo M89もコレクションから出品される。1992年イタリアGPの予選でポールポジションを獲得した後、モンツァのパドックでナイジェル・マンセルが初めてドライブし、1992年シーズン終了後に贈られた車だ。このモデューロは、デザイナーであるカルロ・ラマッティーナが所有していた最初のモデューロである。BMW K75Sモーターサイクルエンジンを搭載し、時速200kmを誇る希少なマシンだ。30年近くナイジェル・マンセル・コレクションの一部として保管されており、ラマッティーナからの手紙、当時のパンフレット、モンツァでマンセルがこの車と一緒に写った写真も付属する。



もう一台、1991年のバーキン7スプリントもコレクションの一部として登場する。これは、有名なロータスセブンを正確に再現した南アフリカ製のキットカーであり、1991年にイギリスに輸入され、ナイジェル・マンセルが新車から所有しており、コレクションの一部として保管されていた車両だ。



この非常にユニークなコレクションは、5月14日に伝説のグランプリ、モナコ・ヒストリークと同開催されるモナコ・セールで販売される予定だ。


Tom Gidden ©2022 Courtesy of RM Sotheby's

オクタン日本版編集部

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