車以外にも「ギア」が一杯!メカニカルな技術を楽しむ博物館

Tomonari SAKURAI

パリ工芸博物館は1794年に教会の修道院の建物を使って作られた博物館。工芸博物館と聞くとなんとなく職人が作り上げるものという感じがするが、元は国立工芸院の科学の遺産、発明の保管場所というのが起源だ。そのため国立技術博物館として始まり、後に改修されてこの名前になったようだ。

知らなければここが博物館だとは気がつかないような外観。

中に入れば分かるが、展示されているものは織物機械、印刷機械、カメラや映像の機械、様々な工業機械など。多くが19世紀~20世紀のものだ。その中にはもちろん車も含まれる。まあ車に絞るとそれほど多くの展示があるわけではないが、修道院の建物内に展示された車というのも面白い。子どもの頃に見た(学研の図鑑の車だったと思うが)イラストで鮮明に覚えている18世紀の蒸気で走る車の実物もある。1770年といえば日本は江戸時代まっただ中。フランスはマリー・アントワネットが王家に嫁いだ年。その時代の車から、最近のモノでは1996年のF1のルノーエンジンV10 RS08までが展示されている。

車両のほとんどは、修道院というより教会の中といった方がイメージしやすい所に展示してある。教会の中で車が上下に展示されているのだ。展示の始まりは蒸気機関を使った実用的な車両として、アメデー・ボレーの車から。これは1873年製で時速30~40kmで走行したという。

修道院の教会をそのまま展示に使っている。

車の構造を見せるために、シトロエンTypeC6Gのカットモデルがある。ここから階段を上っていき黎明期の車両を見ていこう。1983年のルノーRE40は車両が展示されている。

1931年のシトロエンType C6Gのカットモデル。

ここから先は命がけだ。というのも、僕は高所恐怖症。階段で上がるのは良いがガラス張りの床である。手すりにしがみつき自分をだましだまし、なんとか見て回ることができた。笑いごとではない。必死なのだ。車と並んで天井からつるされた飛行機も眺められる。同じ部屋にはフーコーの振り子などもある。

展示物の機械と同様なスタイルで鉄骨を組み上げた展示。スケスケの階段とガラス張りの床は高所恐怖症には命がけとなる。

今、特別展では音楽に関した展示がされており、その中にも車が登場する。「当時の写真のように車に腰掛けて写真を撮りましょう!」とプジョー404のノーズだけが腰掛けられるように展示してあったり、我が家にもあるモビレット、プジョー102が展示されている。1980年代前半には「フランスはモビレットのようだ。色々なものを混ぜて前に進むのだ!」というスローガンがあったという。自転車とバイク、ガソリンとオイルを混ぜる、ということと、移民をを受け入れそれを混ぜることでフランスは前進する、という意味合いをかけ合わせ、庶民の足であったモビレットがスローガンに使われたのだ。そのモビレットに乗ってデモが行われていたそうだ。この小さな2輪車が社会運動に使われていたことは知らなかった。

大衆の足、モビレットに現代フランス社会に繋がる大きな意味があったとは。

これまで何度も足を運んだこの博物館。各所に手描きのイラストで紹介するようになっているのが、とても良い雰囲気なのだ。このイラストはブックレットとなっておみやげコーナーで購入できる。産業革命以降、一気に発展していく技術の一連の流れの中に車が紹介されているこの博物館。車以外もギアが一杯のメカニカルな機械を眺めているだけでワクワクしてくる。

このイラストを集めたブックレットがショップで購入出来るのもうれしい。


写真・文:櫻井朋成 Photography and Words: Tomonari SAKURAI

写真・文:櫻井朋成 Photography and Words: Tomonari SAKURAI

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