飛び石に襲われる不運|『Octane』UK版スタッフが愛車を部分塗装する羽目に

Massimo Delbò

私の1982年 メルセデス・ベンツ 500SLは2007年の冬に全塗装しているのだが、それほど昔にやったようには見えないほど美しい。しかし、問題はつきもの。しかも、想定外のことが起きるものだ。

先日、ドライブしている最中に車体への衝撃を感じた。飛び石のように思えたが、フロントウインドウは無事にみえたので、そのときはあまり気にかけていなかった。しかし、目的地に着き、車体をチェックして見つけてしまった。塗装に結構なサイズの傷、いや、もはやこれは穴というべきものが空いていた。しかもそれは中の鉄板(地金)にまで及んでいたのだ。

私は一瞬で、すぐに対処しなければならないと悟った。なぜなら、修理しないでおくと、むき出しになった鉄板が錆にやられるからだ。さらに困ったことに、この車のペイントはメタリック仕上げなので、簡単な作業ではないことも分かっていた。

たしかに、R107は部分的な再塗装が困難な車だ。というのも、凹凸のない表面が非常に広く、新しくペイントした部分をなじませるのが困難なのだ。4年前に、とても狭いガレージ内で四苦八苦していた時、リアの右ホイールアーチを軽く擦ってしまったことがあった。その時もそういった理由で、パネル1枚だけを再塗装して修復することは止め、その傷は放置することにした。それはパネルといっても、車体の半分ほどの長さがあったのだ。

今回は本当に修理が必要となってしまったので、ミラノ郊外のラボラトリオ・ロペインに連絡した。『Octane』UK版寄稿者でもある私が、アンドレアとアルベルトのロペイン夫妻に初めて会ったのは、何年か前の日本でのコンクールだった。それ以来、彼らとはよく一緒に過ごした。主にコンクールのジャッジを一緒にやったりしたのだが、競技の参加者としてお世話になったこともある。その両方で、私は彼らの情熱やスキルにいつも感心していた。

最初はアドバイスを求めただけだったが、その後、修理をするなら彼らに依頼したいと考え、都合を聞いてみた。お付き合いのよしみもあって承諾してはくれたが、3つの条件付きだった。1つめは、完璧さを求めないこと。メタリック塗装のレタッチは、ほとんど見えないようにすることはできるが、経験者が見れば分かる、とのこと。2つめは、修理対応できるのは、時間に余裕がある時のみであること。3つめは、最終的な費用は予測不可能であること。準備や塗装自体に費やした時間を数値化できれば簡単なのだが、カバーすべき正確な分量を判断するのに掛かる時間を計ることができない、ということらしい。さらに、最も近い色に到達するまで、サンプル塗料を混ぜ合わせて作るといった必要性もあり得るそうだ。



私は全て承諾し、今回の飛び石による穴と、以前擦ったホイールアーチの再塗装を依頼することにした。その後、去年の11月初旬に連絡があり、車を店まで持ってきてほしいと言われた。私が自分の500SLを最後に見たのは、窯に入れられている姿だった。まるでスパゲッティ・アルカルトッチョ(包み焼き)のように包まれながら、第一層の塗装を吹き付けられていた。最終的な仕上がりを想像するにはまだ早いが、細部への心配りとこの仕事への情熱が成功への秘訣であるとすれば、期待通りとなるだろう。



Words and Photography: Massimo Delbò
まとめ:オクタン日本版編集部

オクタン日本版編集部

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