見事な保管状態!ある一家が60年間大切にし続けた「ダービー・ベントレー」が公の場に

Bonhams

この「ダービー・ベントレー」は、ロールス・ロイスが製造したベントレーの最初の1台である。プロモーション用として広く使用され、ある時期には、マルコム・キャンベル卿やウルフ・バーナートといった偉大なレーシングドライバーがドライブし、彼らの称賛を得たまさにその車が、オークションハウスのボナムスが3月にアメリカで開催するアメリア・アイランド・オークションに出品されることになった。

いわゆる「サイレント・スポーツカー」は、ロールス・ロイスがベントレーを買収して最初に製造されたものである。買収後は、ベントレーの車両は故郷クリックルウッドではなく、あらたな所有者であるロールス・ロイスのダービー工場で生産された。ヘンリー・ロイス卿の影響を受けて設計され、デザインされたベントレーは、ロールス・ロイスのパワー、パフォーマンス、静寂、洗練といった特徴を備えたモデルとなった。

「ダービー・ベントレー」はW.O.ベントレーによって広範囲にわたりテストされた。そしてW.O.ベントレーに「すべてを考慮した結果、この名前で製造されたどの車よりも、このベントレーを所有したいと思う」と言わしめたという。

シャシーナンバー「B1AE」が与えられたこの歴史的な1933年3½リッタースポーツツアラーは、いかにも速そうなアルミニウムのバンデンプラによるオープンツアラーコーチワークをまとい、特徴的な「ALU321」ナンバーで登録された。前述のとおり、この車のハンドルをブルックランズで握った人の中には、元祖ベントレーボーイズのひとりであるウルフ・バーナートも含まれる。

ウルフ・バーナートがこの車を実際に運転している様子(Getty images)

今回、オークションに登場することになったダービー・ベントレーは元々、スカイブルーのレザーインテリアを備えた印象的なシルバーのカラーリングで仕上げられていた。しかし、そのペイントワークは、この車の2番目のオーナーであるゴーダン・トーマスが「派手すぎる」とみなしたことによりブラックに塗り直されたといい、その外装色のまま今に至っている。

その後、このベントレーは1953年にイギリス空軍のパイロットで、捕虜となった経験をもとに小説「The Wooden Horse」を執筆したイギリス人作家、エリック・ウィリアムズが購入した。ウィリアムズはランドローバーでの世界一周旅行を実行するにあたり、この車を売りに出したが、しばらくの間は買い手がつかなかったようだ。そこでウィリアムズは『The Times』にこんな投稿をする。「最初のロールス-ベントレーを購入できるような裕福でロマンチックで強い人は、イギリスにはいないのでしょうか?この素晴らしいオープン・ツアラーはアメリカに行かなければならない運命なのでしょうか?」

果たしてこの車両は1959年にガイ・ローレンスが購入し、彼は「ALU321」からエセックスのナンバーである「RB1933」に再登録した。長きにわたるこのダービー・ベントレーの人生の中で、ローレンスの手元にいた期間が一番短く、3年後の1962年にはロンドン・メイフェアのディーラーであるチャールズ・フォレットで売りに出されてしまう。



この車の重要性を認識したのが現在の所有者の父親である。イギリスを旅行中にフォレットのショールームで偶然それに気づいた彼は。この車の4人目のオーナーになることを決意。ダービー・ベントレーは1962年にイギリスを離れ、アメリカに向かうことになった。以降、この車両は同一家族のもとに60年もの間とどまっており、初期に加えられた色の変更を除けば、製造時と同じようにオリジナルのままの状態で保管されている。

ベントレーの歴史において重要な役割を果たしたダービー・ベントレーの第1号車。しかも保存状態も非常によく、レストアも施されていないオリジナルの個体である。これがオークションに登場するとは、ベントレー愛好家やコレクターにとっては決して見逃せない千載一遇のチャンスだといえるだろう。

オクタン日本版編集部

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