フェラーリ史に残る Barn Find
驚くべき車が、岐阜県の納屋で見つかった。一見すると埃まみれのみすぼらしいフェラーリ365GTB/4デイトナに見えるが、同車の発見は世界中のコレクターのあいだで大きな話題をとなった。それもそのはずである。これはたった1台だけの特別な車、スカリエッティ製のアルミボディを架装した、ロードゴーイング・デイトナだったのだ。
エンツォ・フェラーリが生んだ最後のフロントエンジン・ベルリネッタ、365GTB/4。この車が初めてお披露目されたのは、1968年のパリ・サロンのことだった。フェラーリが創業以来伝統としてきた優美なロングノーズ・ショートデッキ・スタイルを踏襲しつつも、それまでのモデルとは一線を画す、張りのある平面で構成されたモダンな風格を有していた。「デイトナ」は正式名称ではなく、フェラーリが1967年のデイトナ24時間レースで圧倒的勝利を飾ったことから自然発生的に生まれた愛称である。労使間のトラブルやフィアットによる買収といった、フェラーリにとっては激動の時代の最中ではあったが、デイトナは全部で1406台が生産された。
そんなデイトナには「特別な6台」が存在する。1400台生産された通常のデイトナはスチール製のボディを採用していたが、その6台だけ、スカリエッティの職人が手掛けたアルミボディが架装されていた。目的は言うまでもなく、軽量化である。フェラーリのカスタマーチームから、ル・マン24時間レースのGTクラスでポルシェ勢に勝てる車がほしいという強い要望があったことから、デイトナのコンペティションモデルが少数生産され、アルミボディが架装されたのだった。
6台作られたアルミボディ・デイトナのうち、5台がレースカーとして仕上げられた。残りの1台は長い間、行方知らずになっていた。それが、最近になって岐阜県の納屋の軒下で見つかり、そのニュースが世界中を駆け巡った。
この車、シャシーナンバー12653は、デイトナとしては30台目に生産された車両で、1969年に完成した。コンペティションモデルと同様にアルミ製ボディが架装されたが、完全なロードカー仕様で仕立てられた。ボディカラーは人気のロッソ・キアーロ(明るい赤)で塗装され、インテリアはブラックのレザー仕上げ。パワーウィンドウも装備している。
記録によると、マラネロの工場を出た"12653"は1969年9月にボローニャの正規ディーラーにて販売され、同月にイタリアの自動車雑誌『Autosprint』創設者のルッチアーノ・コンティが購入した。その後、1970年に2人のオーナーを経て、1971年7月にイタリアでの登録を抹消されている。
それから3カ月後、12653は海を渡って日本へとやってきた。自動車雑誌『Car Graphic』の1972年1月号で、「The Magnificent Three from Italy」と題した巻頭特集で紹介されている。この特集では、このデイトナのほか、朱色のランボルギーニ・ミウラ、ブルーのマセラティ・ギブリという、日本初上陸のスーパースポーツカーが取り上げられ、もし資力があったらどれを選ぶかなどと、エンスージアストの間で大きな話題となった。まだ日本にスーパーカーブームが吹き荒れる以前のことであった。
その後、12653は日本でも何人かのオーナーの手に渡ったが、最終的には岐阜県の好事家の納屋で長い眠りにつくことになった。
このフェラーリの存在は、少数のエンスージアストの間で噂にはなってはいたものの、多くの人の口に上ることはなかった。あるエンスージアストによれば、そのまま納屋にそっとおいておきたいという気持ちになったという。納屋に留め置かれたのは1980年頃だといわれ、それから数えて37年の月日が経った今、12653は新しいオーナーの元へと渡ったのだ。
2017年9月9日にモデナのフィオラーノ・サーキットにて開催されたフェラーリによる過去最大規模のワンメイク・オークション「フェラーリ~伝説と情熱」に、発見されたままの状態で出品された。エスティメイトは140万ユーロから170万ユーロ、日本円換算で1億8000万円から2億2000万円の価格がつくと予想されたが、シャシーナンバー12653は、エンスージアストたちの注目が集まる中、180万7000ユーロ(約2億3500万円)で落札された。
本記事は9月26日に発売のオクタン日本版特別編集「Ferrari 70th」に全文が掲載されている。詳しくは本誌を御覧いただきたい。
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