なんという僥倖!カウンタック、ディアブロ、ムルシエラゴにアヴェンタドールまで。歴代ランボV12モデルを一気乗り

Hidehiro TANAKA



歴代フラッグシップモデルに試乗する

まさにカウンタックは半世紀に渡って(そう、ポルシェ911のように)作られてきたのであり、この車によってブランドイメージは形成された。では、実際にフラッグシップモデルはどのように進化してきたのだろうか。ランボルギーニクラブジャパンの協力で、歴代フラッグシップのアニバーサリーモデルを揃えることができたのみならず、全てに試乗するという僥倖に恵まれた。カウンタック25thアニバーサリー、ディアブロSE30、ムルシエラゴ40thアニバーサリーエディション、アヴェンタドールLP720-4 50°アニベルサリオという、いずれもランボルギーニ社の周年を記念するモデルたちである。



まずは元祖だ。赤いカウンタック“アニバ”に乗り込んだ。このところ運転する機会が多く、また自分でも所有していたことがあるので、タイトだが居心地のいい空間に思わずホッとする。計器類も煩雑ではなくシンプル。全てがドライバーに委ねられている分、確かに緊張感はあるけれど、逆に手に負えない気にもならない。

ランボルギーニ カウンタック 25thアニバーサリー
全長×全幅×全高:4,200×2,000×1,070mm ホイールベース:2,500mm 重量:1,680kg
エンジン:V 型12気筒 DOHC 排気量:5,167cc 最大出力:455ps / 7,000rpm 最大トルク:51.0kgm / 5,200rpm
トランスミッション:5段 MT 駆動方式:RWD


この個体は元々アメリカ仕様でインジェクション付きだ。それゆえ通常のカウンタックのように朝一番にとりわけ気難しい6個のキャブレターに向き合うという緊張がない。案の定V12エンジンはいとも簡単に目を覚ました。狭いペダルスペース、重いクラッチ、渋いシフトレバーだからこそ、3ペダルマニュアルトランスミッションの喜びを噛み締めるようにしてゆっくり操作する。クラシックスーパーカーを駆る時には慌てないことが肝心(どんな車でもそうだけど)。



左足をゆっくり上げてアイドリングスタート。重量バランスに優れたカウンタックは、実を言うと同時代の跳ね馬ミドシップよりスムースな発進が可能である。もしスムースに動かないとすればそれはエンジン回りや足回りに何か別の問題があると思ったほうがいい。早めに二速に入れたなら、そこからはV12エンジンフィールを念入りに味わいながらギアを上げていく。

全てを見上げるような景色のなかを、まさに這うようにしてカウンタックは走る。巨大なエンジンを背負っているという感覚が高速巡航に至る直前までつきまとうので、そうそう緊張を解くことはできない。前輪を腕の先に感じる。それゆえコーナリングは意外にも得意で面白い。特に400S以降のモデルでは太いタイヤゆえ挙動の一つ一つに乗り手との一体感が欠けるきらいはあるものの、カウンタックをドライブしているという昂揚した気分がそれをカバーしてあまりある。



ちょっとしたエクササイズを楽しんだ気分で試乗を終え、次は17年ぶりのフルモデルチェンジを挟み5年後に登場した30周年記念モデル、ディアブロSE30に乗り換える。ひと回り大きくなったボディサイズからも容易に想像がつくように、カウンタックから時間をおかずに乗り込めば低さは変わらずとも余裕のある室内に少し気も緩む。緊張が解けるということはないけれども窮屈さを感じないことで手足の操作に余裕が生まれることも確かだ。

ランボルギーニ ディアブロ SE30アニバーサリー
全長×全幅×全高:4,507×2,040×1,115mm ホイールベース:2,650mm 重量:1,650kg
エンジン:V 型12気筒 DOHC 排気量:5,707cc 最大出力:525ps / 7,100rpm 最大トルク:59.2kgm / 5,900rpm
トランスミッション:5段 MT 駆動方式:RWD


けれども動き出せば一体感はカウンタックを確実に上回っていた。第二世代となったV12エンジンはパワフルでレスポンスよく、シャシーもより頑丈だ。それまでの17年間カウンタックを作り続けてきた中で、クライスラーという後ろ盾を得てやりたくてもできなかったことが一気にできたという印象を鮮やかに感じ取ることができる。端的に言ってカウンタックより遥かにモダン。それでいてフロントアクスルを抱え込むようなステアフィールはさらに先鋭となり、下方へえぐれたサイドウィンドウの造形も手伝って、より一層ハンドリングを楽しむことができる。カウンタックの進化版であることがわかる。ボディサイズが大きくなったにもかかわらず!

エンジンフィールはカウンタックより洗練されてはいるものの現代の基準からすれば十二分にワイルドである。高回転域ではエンジンを背負って自分も揺すられているように思える。人牛一体ではない。心臓にドライバーが巻き込まれてしまうかのようだ。





ディアブロからムルシエラゴ40thに乗り換えると、カウンタックの匂いはほとんど消えて、いきなり現代の香りが漂ってきた。それはきっとインテリアの様子がグッと洗練されたことにも起因するのだろう。ランボ初の2ペダルセミMTであると同時にマニュアルミッションで操作できる最後のフラッグシップモデルだが、やはり3ペダルはよかった。やや重々しく回るものの高回転域における凝縮された機械フィールは何ものにも替え難い。

ランボルギーニ ムルシエラゴ 40thアニバーサリー
全長×全幅×全高:4,580×2,045×1,135mm ホイールベース:2,665mm 重量:1,650kg
エンジン:V 型12気筒 DOHC 排気量:6,192cc 最大出力:580ps / 7500rpm 最大トルク:650Nm / 5400rpm
トランスミッション:6段 MT / 6段セミAT 駆動方式:4WD


ディアブロに比べるとGT的な要素が強まった。端的に言って優雅だ。実際にはボディもシャシーも進化しており、パフォーマンスは確実に向上しているのだけれど、それを相対的に感じさせない完成度の高さがある。アウディ傘下となって初のモデルチェンジで、時間は限られていたとはいうものの、ドライバビリティという点でディアブロの古さを払拭する仕上がりであったことは間違いない。





最後にアヴェンタドール"アニバ"だ。ボディ骨格としてCFRPを採り入れ、最新技術で設計された12気筒エンジンを搭載する。その完成度の高さは10年で累計1万台をこえたという生産量が物語っていると言っていい。すべての点で新しく、すべての点でムルシエラゴを凌駕する。否、カウンタックからディアブロへのモデルチェンジがそうであったように、ディアブロ~ムルシエラゴの二世代を一括りにしてできなかったことをすべてやり尽くした。それでいて巨大なエンジンが常にドライバーの身近にあるという感覚は”カウンタックそのもの"だ。要するにスタンツァーニのLPパッケージがアヴェンタドールのドライバビリティを決定している。

ランボルギーニ アヴェンタドール50° アニヴェルサリオ
全長×全幅×全高:4,834×2,030×1,136mm ホイールベース:2,700mm 重量:N/A
エンジン:V 型12気筒 DOHC 排気量:6,498cc 最大出力:720ps / 8,250rpm 最大トルク:690Nm / 5,500rpm
トランスミッション:AT7段 駆動方式:4WD




ブランド60周年を来年に控えて言うのも何だけれども、カウンタックの50周年が同時に、現代ランボルギーニの半世紀を意味していたことは間違いない。


文:西川 淳 写真:タナカヒデヒロ
Words:Jun NISHIKAWA Photography:Hidehiro TANAKA

オクタン日本版編集部

無料メールマガジン登録   人気の記事や編集部おすすめ記事を配信         
登録することで、会員規約に同意したものとみなされます。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

RANKING人気の記事