英国本社のキーパーソンに聞く、ベントレーが目指すEV化の未来像

Bentley

英国の誇るラグジュアリィスポーツカーブランド、ベントレーのフラッグシップモデル、フライングスパーにハイブリッドモデルが加わり、その日本へのデリバリーが待たれている。

そして2021年12月21日に東京六本木において行われた新型フライングスパー ハイブリッドのお披露目およびQ&Aセッションは実にユニークなものであった。話題性の高いニューモデルながら招かれたメディアやジャーナリストは10組程度と限定的なもの。コロナ禍において十分なディスタンスを保つのが一つの目的であったが、もう一つは2021年5月に新しくUKベントレー本社のマーケッティング担当役員に就任したアラン・ファヴィー(Alan Favey)氏とのオンラインにおけるダイレクトな質疑応答セッションを充実させるためであった。アラン氏はかつてフォルクスワーゲングループであるチェコの自動車会社シュコダにおいて、ENYAQ iVをはじめとした電気自動車系の立ち上げを主導した辣腕ビジネスマン。ベントレーモーターズにおいては会長兼CEOであるエイドリアン ホール(Aidrian Hallmark)氏の直属の部下として、その経験と知識をもって、次のスローガン「Beyond 100」に生かしていくことが期待されている。



2021年3月よりベントレーモーターズジャパンブランドディレクターに就任した牛尾裕幸(うしお ひろゆき)氏。ベンテイガの好調な販売などにも支えられ2021年は国内596台と過去最高の販売台数を達成している。

ここであらためてフライングスパーの魅力について触れておこう。
パワートレインは新設計の2.9リッターV6ガソリンエンジンに電気モーターを組み合わせており、システム最高出力は536bhp(544PS)を発揮する。これはベンテイガハイブリッドより95bhpもパワーアップさせたものだ。ちなみに過給システムについて、ベンテイガはツインスクロールのシングルターボであったが、このフライングスパーではシングルスクロールながら2基のターボを装備している。最大トルクは750Nmと、このハイブリッドモデルは力強いトルクとクイックなレスポンスを誇り、0-60マイル/hを4.1秒(0-100km/hは4.3秒)という加速性能を発揮。最高速度は322km/h。アクティブオールホイールシステムを採用しており、フロントリアのトルクを必要に応じて可変させ安定した走行が可能となっている。航続性能にも優れ満タン状態で700km以上もの長距離走行が可能となっている。ドライバーはEVドライブモード、ハイブリッドモード、ホールドモードを選択可能。車のイグニッションをオンにするとまずEVドライブモードになり、充電量で可能な限りEVとしての走行を続ける。このEVドライブモードは都市部や短距離の移動に正に最適と言える。フル充電でのEV走行可能距離は40㎞と実用性も十分だ。もちろん回生によるパワーリザーブ性能にも特筆であり、そのエネルギーフローはインフォテインメント画面でも表示可能となっている。



さて、オンラインQ&Aセッションの内容にも触れておきたい。



アラン・ファヴィー氏(以下アラン): 103年の歴史を迎えるベントレーのヘリテージには素晴らしいものがあると確信しています。その歴史と共にベントレーは将来に向けて歩んでいく所存であり、そのためにしっかりとした戦略「Beyond100」を2030年に向けて用意をしています。世界コロナ禍にあってもベントレーは世界で11月末の段階で1万3000台超と過去最高の販売台数を達成する勢いであり(最終14,659台)、ROS(売上総利益率)も10%を超える予想となっています。しかし我々にとって最も重要なことは、このベントレーというブランドが将来どのようになっていくかということです。つまりラグジュアリィブランドとして競合を凌駕する販売により収益性を確保することによって、野心的な戦略である「Beyond100」に十分な投資が出来るようにすることを意味します。
ベントレーの戦略としては、まずハイブリッド化を進めていき、最終的には全面的に電動化を目指すことになります。イノベーションこそ、我々のようなラグジュアリィブランドの価値だと言えます。ベントレーは力強い車両のヘリテージをもつメーカーでありますが、今後はサスティナブルも見据えてEV化を図っていくことになります。

Q:コロナ禍においても世界での販売は好調であり、アジアでも特に日本は過去最大の販売台数を記録しそうです。この状況をどのように分析されていますか。

アラン:ベントレーを含めさまざまなラグジュアリィブランドへの関心が高まっていると言えるでしょう。その中でモデルラインナップが刷新してから日が短いということもあり、その魅力をより感じてもらいやすいことがあるのでしょう。

Q:SUVベンテイガの販売が好調で、その中でハイブリッドモデルも追加されてきていますがが、セダン、クーペ(コンバーチブル含む)、SUVの販売比率はどうなっていますか。日本とその他では違いはありますか。

アラン:全体的にバランスの取れたポートフォリオを実現できていると考えております。ベストセラーはやはりベンテイガであり、世界の売上の中でも50%を占めています。次がコンチネンタルGTで30%、そしてフライングスパーが20%くらいとなっています。市場毎にそれぞれの違いがありますが、日本においては世界のボリュームミックスとほぼ同じような比率バランスとなっています。

Q:プロダクトの電動化についておしえてください。Beyond100では2025年までにベントレー初のBEV(バッテリー型電気自動車)を販売する計画ですが、それは順調に進んでいますか。初めてのBEVはSUVモデルでしょうか。

アラン:現在電動化のプロジェクトはフルスピードで進行中です。技術的な側面からみて、お客様がラグジュアリィブランドに求めているBEVの価値というものが実現できるまで完成度を高めていかなくてはなりません。2025年に投入するモデルは単なるSUVモデルではなく、もう少しオリジナリティの高いものになりますが、今の段階ではまだこれ以上は申し上げられません。

Q:ベントレーのインテリアには本革やウッドを豊富に使いますし、そこに価値を求める顧客が多いことは想像に難くありません。今後車種ごとに人工的素材あるいは再生素材の使用比率を高めていく計画はありますか。

アラン:確かにラグジュアリィ市場においては、サスティナブルな製品を手にすることで環境に貢献するといったお客様が多くいらっしゃいます。ベントレーにおきましても将来に向けてソリューションを探求していくことになりますし、本革や本木についても持続可能なソースから調達していくことを考えていますし、そのための戦略を進めていきます。

そのほか多くの質問についても、ひとりひとりに詳しく丁寧に答えてくれたアラン・ファヴィー氏。ラグジュアリィブランドの使命をより深く理解されているマーケティング責任者としての考えが強く伝わってくるセッションであった。Beyond100がどのように展開されていくか、今後のベントレーがとても楽しみだ。

オクタン日本版編集部

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