そこにしかない、静かな自然のもてなしを求めて。アストンマーティンDBXで訪ねる別邸 仙寿庵

別邸仙寿庵とアストンマーティンDBX。つい数日前に降った雪のなかを軽快に駆け抜けた車体と、伝統的な茅葺き屋根の門が美しく調和する(Photography:Ken TAKAYANAGI)

オクタン日本版では、真のヨーロピアン・ラグジュアリーを提唱する自治運営の協会組織である「ルレ・エ・シャトー」に加盟している日本のホテルを、本当の一流を知るブランド、アストンマーティンで巡る企画を進めている。アストンマーティンが、そして「ルレ・エ・シャトー」加盟のホテルによる世界観がどう共鳴するのかを、車での旅を通じて確かめようという狙いだ。

1950年代のフランスに端を発した「ルレ・エ・シャトー」は1974年に設立。世界62カ国、約580のホテルとレストランが加盟している。加盟資格は、そのホテルとレストランの格式のみならず、「世界各国・地域のホスピタリティーや食文化の多様性と豊かさを大切に守り、より多くのお客様へ提唱していく」という理念を共有できることだ。

今回、アストンマーティンDBXで向かったのは群馬県・谷川温泉の「別邸 仙寿庵」。群馬と新潟の県境にそびえる谷川岳の南面に位置し、澄んだ空気と谷川の清流に沿って広がる自然豊かな場所だ。歴史をさかのぼれば、その前身である「川久保屋」には文豪・太宰治も転地療養のために1カ月ほど滞在したことがあるという。

1997年創業の「別邸 仙寿庵」。細く流れる谷川の渓流沿いの広大な敷地のなかに建つ。

「別邸 仙寿庵」を訪れるために選んだ車は数日前に降った雪のなかでも安心して走ることのできる、走破力にすぐれるアストンマーティンDBX。赤いレザーの内装に木目も美しいウッドパーツは静かなコントラストで広々としたキャビンをラグジュアリーに演出。それでいて、トーンはしっとりと落ち着いており英国流のアンダーステートメントとはなんたるかを語りかける。

今回の旅の出発地は「アストンマーティン仙台」。北日本ではじめての正規ディーラーとして昨年春にグランドオープン、最新CIのショールームには常時6台の車両をディスプレイしている。仙台市泉区の「アストンマーティン仙台」から「別邸 仙寿庵」までは、東北縦貫自動車道/東北自動車道から北関東自動車道、関越自動車道を経由し水上ICを降りて10分ほど。距離にして406km、休憩をはさみながら5時間強のロングドライブとなる。高速道路を降りると、道路の左右には数日前に降ったという雪がつもり、市街地とはまるで異なる山間の興趣あふれる世界が広がっていた。

落ち着いたトーン赤いレザーとウッド、そして操作系のコンビネーションが見事に調和するインテリア。

「別邸 仙寿庵」へと繋がる、雪の積もる林とアストンマーティンDBX。都会的インテリジェンスはやはり自然とも見事に調和している。

谷川の細い渓流をたどると、やがて長い直線の道路へと差し掛かる。雪景色のなかを静かに進む、「別邸 仙寿庵」へのアプローチだ。くだんのルレ・エ・シャトーでは「谷川岳を望む静謐の宿」と説明されている「別邸 仙寿庵」の特徴を、この長いアプローチが象徴的に表現している。

車のエンジンを止め、車外へと降り立てば、聞こえてくるのは遠く風の音のみ 。周辺の道路や町とは切り離された、谷川岳の自然に包みこまれることを存分に感じられる静かな環境がここにある。それを成し遂げているのは、3万5千坪からなる広い敷地だ。

奥に見えるのが谷川岳。標高1,977m。群馬県と新潟県の県境に位置する、日本百名山のひとつ。

「別邸 仙寿庵」の「別邸」とは、そもそもの家業が谷川岳の四季折々の景観を楽しめる温泉宿「旅館たにがわ」にあったため。この「旅館たにがわ」のコンセプトをさらに突き詰め、あらためて「自然のなかで静かに過ごす豊かさ」を追求するため1997年にスタートしたのが、この「別邸 仙寿庵」だという。

プライバシーの守られた滞在を謳う多くの宿が、外界との間に壁を巡らせることでそれを叶えているのに対して、「別邸 仙寿庵」は建屋から視認できる可能な限りの土地を自地とすることで、ゲストの視野に他の人工物がなにも入り込まない、ただひたすら自然に囲まれる真のプライベート空間を作り上げている。

ちなみに「別邸 仙寿庵」は敷地面積が3万5千坪を誇りながら建屋は1000坪に留められている。それをたった18室のゲストで“独占”するのだから、そのスケールの大きさはなんとも表現し難いほど。さらに、すべての客室から谷川岳を眺めることができ、かつ全室に厳選かけ流しの露天風呂を備える。設計は和風モダンな建築デザインに優れる、羽深隆雄によるものだ。

「別邸 仙寿庵」のエントランス。京土壁とコンクリートという異素材が融合して上品な佇まいをつくりだす。左手には、ルエ・レ・シャトーのエンブレム。

2フロアをひとつの空間で繋ぐ、高さ8メートルの広大な曲面廊下。ガラス越しに谷川の自然の息遣いを感じられる「別邸 仙寿庵」のハイライトのひとつ。



露天風呂を備える大浴場。渓流を見ながら涼めるソファーもあり、存分に開放感あふれる入浴を楽しむことができる。

訪れたゲストを迎えるロビーは、採光豊かな全面ガラス張り。ソファーに腰を下ろせば目の前に美しい谷川岳の姿を見ることができる。部屋に向かう廊下は、8メートルの高さの広々とした曲面廊下。谷川岳を借景にした中庭の中を歩くような開放感あふれる作りになっている。

全18の客室の内訳は、洋室1、和洋室2、そして和室が15。館内の随所に京土壁や手漉きの特殊和紙、江戸墨流し、組子障子やカリグラフィーアートを施す。常に谷川の大自然に囲まれていることを感じさせながら、建築もまたその景観に溶け込むよう配慮されている。

建物の内外随所で使用されているスサ入り京土壁。地元高崎市の職人による高い技術で作られる。京都から取り寄せた土を使用し、スサ(藁屑)などを混ぜ込み、木ゴテで仕上げる。

大きな水槽に水を張り、そこに墨を流し、模様を漉き取る「江戸墨流し」による土壁。伝統的技法では和紙に漉き取るのが一般的だが、新しい技法として土壁に写しとった。

日本の伝統技法である組子障子。高い精度が求められ、一本一本を職人の技術により組み合わせて作り上げられる。

その一方で、ともすると表層的な和風建築の伝統的な表現になりがちなところに、モダンであり新鮮な表現を意欲的に取り入れ、静かな刺激のある空間を作り上げている。この絶妙なバランスを保ったさじ加減こそ、知的なラグジュアリーというものだ。

ただ豪奢なことに傾倒するでもなく、伝統のみに頼るでもなく。モダンとトラディショナルの融合による、現代的なラグジュアリーが館内の調度品だけでなく、客室の随所にも刺激的なニュアンスを配しているところからも感じられる。それは、朱のレザーにモダンリビングの象徴的なウッド素材を組み合わせたアストンマーティンDBXのキャビンにも通底する美意識だ。

ロビーから見える中庭のスノードーム、庭園の奥にあるログキャビンのような暖炉を備えた読書ルーム、林のなかにさりげなく備えられたハンモック。そして、客室の数と同じ18の個室からなる食事処。自然の中を散策する、または自然に包まれたなかでプライベートな滞在を堪能する、それらのことが敷地のなかで完結できるというのも「別邸 仙寿庵」における和風リゾートの興趣だ。

広々とした和室。京土壁には文様を施し、照明は柔らかく。畳の縁には植物を描き、たっぷりとした開放感のなかにもさまざまな要素を盛り込んでいる。



広縁には北欧のモダンリビングのような要素を取り入れる。左手に見えるのは露天風呂。障子の手前にはアルミを織り込んだ畳を配置するなど、刺激的なデザイン要素が随所に。



お食事は自室ではなく、それぞれ趣の異なる18室の個室でいただく。客室数と食事用個室の数がイコールであることは、つまり訪れるたびに新しい組み合わせが楽しめる、ということ。

太陽の光を浴びる時間帯は、スノードームの中は意外にも温かい。ミッドセンチュリーのモダンなシングルソファーで静かな日光浴を楽しめる。

エステルームSORA。「肌・心・体」のコンディションをトータルに整えるというコンセプトから、狭い個室ではなく、開放的な空間で上質なリラックスタイムを提供する。



庭園の奥へと進むと、そこには図書ルームが設けられている。なかでは薪の燃える暖炉がセットされ、セルフで豆から挽いたコーヒーを楽しめるようセットされている。一日そこで過ごせるほどの快適な空間だ。

ノイズのようにも感じられる喧騒のなかで過ごす毎日。プライベートでも、ビジネスでも、すべてがスムースで思い通りに行くことは稀だ。だからこそ、自然のなかで誰にも邪魔をされることのない、なにもない時間が贅沢なものだと知る。

アストンマーティンDBXでのドライブにおける強力なエンジンパワーは、時速300kmを出すためではなく、時速80kmを快適に過ごすことで活きる。まるでストレスを感じないドライビング体験のようでいて、実は自分たちは絶妙なバランスでラグジュアリーにデザインされた車内にいて、低く身体に響くエンジンの音に感性を刺激されている。

なにもない時間が、ただの退屈な時間にならないためには、五感へのちょうどいい刺激が必要だ。その匙加減こそがラグジュアリーの本質であることは、アストンマーティン・オーナーならおわかりいただけることと思う。

停めた車に近づき、そして乗り込むときに感じる佇まいの美しさに息を呑む。これもまた、アストンマーティンに乗る喜びのひとつ。





ところで今回の旅の伴侶のDBXにはアストンマーティン純正のシートバッグ、ペット用キャリーバッグとフードボウルキットに、キャリアシステムが搭載されていた。どれも質感高く、さすがの仕上がりで旅気分を高めてくれる。詳細は各ディーラーに問い合わせ願いたい。



別邸 仙寿庵
〒379-1619 
群馬県利根郡みなかみ町谷川614
TEL:0278−20−4141(代)
FAX:0278−72−1860
※冬季は積雪状況などを事前にご確認いただくことをお薦めします。

アストンマーティン仙台
〒981-3117 宮城県仙台市泉区市名坂御釜田148-1
TEL:022-342-1913
営業時間:10:00〜19:00
定休日:毎週水曜日、第1・第3火曜日

アストンマーティン DBX
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5039×1998×1680mm
●ホイールベース:3060mm
●重量:2245kg(乾燥重量)
●駆動方式:AWD
●エンジン:V8 DOHC32バルブ ツインターボ
●排気量:3982cc
●最高出力:405kW(550ps)/6500rpm
●最大トルク:700Nm(71.4kgm)/2200-5000rpm
●トランスミッション:9速AT
●EU複合モード燃費:6.98km/L(目標値)
●タイヤサイズ:前285/40YR22、後325/35YR22
●税込価格:2299万5000円

文:青山 鼓 写真:高柳 健 Words: Tsuzumi AOYAMA Photography: Ken TAKAYANAGI

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