ガールフレンドのために注文!?唯一無二の奇天烈なフェラーリ

RM sotheby's

世界中で知られる高級車ブランドのフェラーリは、美しいイタリアンスタイリングにパワフルなエンジンを搭載する車を生み続け、根強い支持を得てきている。しかし、華やかな車とは打って変わって過去には奇天烈な車も生み出してきた。その一風変わったフェラーリは市販車とは異なり、顧客からの機知にとんだ依頼によってワンオフで作られたり、プロトタイプとして作られたものばかりである。パンを焼く窯のようなボディを持つことから、"ブレッドバン"というあだ名が付けられたドローゴ250 GTは中でも有名な一台である。ブレッドバンはとある伯爵が依頼したものだった。

ブレッドバン


ブレッドバン以外にも、"レインボー"と名付けられたプロトタイプのフェラーリはマルチェロ・ガンディーニによってエッジの効いたラインが与えられた。今となってはその刺激的な独創性からある意味では注目されているが、1970年代中盤の当時はまったく人気を集めなかった。この他にも"ナヴァッロ・スペシャル"と呼ばれた一台は、イタリアでナイトクラブを経営していたオーナー(ナヴァッロ)の依頼によって、330 GT 2+2をベースに風変わりなワンオフカーを作ったというもの。また、ルイジ・"ココ"・キネッティの案で作られたカロッツェリア ヴィニャーレによるステーションワゴンもナヴァッロ・スペシャルと同様に、330GT 2+2をベースとしているが発表当時の評判は最悪だったとか。このようにフェラーリは紆余曲折ありながらも特別な顧客やアイデアのため色々と試行錯誤をしてきており、今回の主役であるフェラーリもそのうちの一台である。

1982年にサウジアラビアの王族のためだけに作られた、あらゆる意味で唯一無二の特別なフェラーリ、その名も"ミーラS"である。国王の息子が愛するガールフレンドのために100万ドル近くを投じて製作し、彼女の名にちなんで命名されている。男性的なデザインを持つフェラーリ400iをベースに、マラネロのファクトリーからというイタリアの著名なデザイナー ジョバンニ・ミケロッティのもとに送り込まれ、新たなアイデンティティが吹き込まれた。搭載するエンジンはもちろんパワフルな12気筒である。



ウェッジシェイプや低く構えたフォルム、ポップアップ式のヘッドライトなど、400iを意識したデザインでありながら、張り出したボディパネルやスラット状のボンネットグリル、ルーフピラーを隠したフロント、リアのラップアラウンドウィンドスクリーンガラスなど、独自のデザインで仕上げられている。パールカラーのボディにブルーレザーとビアンコ・フジのツートンインテリアで仕上げられたミーラSは、1980年代の華麗なデザインを象徴しているといえよう。宇宙船のような計器類、4面ワイパー、従来のバックミラーの代わりに搭載されたインダッシュ・モニター、最新のサウンドシステムが組み込まれていた。

しかし、維持が難しかったのだろうか、どういう訳か現在はモニターやスイッチ類などがすべて取り除かれている。内装についても詳しいことが分かっていないが、どこかのタイミングでレザーのオリジナルカラーであるブルーから現在のピンクに変更されておりオリジナルより華やかな雰囲気になっている。





2010年11月、ミーラSはフェラーリ・クラシケによって25万2,100ユーロ相当のレストアが施された。エンジンのリビルト、電気系統の再構築、エキゾーストシステムの交換など一通りの修理がおこなわれている。ミケロッティが手がけた最後の車という面においても希少性が高いこの唯一無二のフェラーリ、ミーラSは現在ドバイのオーナーが所有しており2月にオークションに出品される。推定落札価格は公表されておらず、価格や落札後の使い道含め結果が楽しみではあるが、結局のところガールフレンドの"ミーラ"からはどのような評判だったのであろうか気になる謎は残ったままだ。

オクタン日本版編集部

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