フランスで唯一!?「正式に登録」されたシトロエン2CVカブリオレ

Tomonari SAKURAI

フランスからお届けしている記事に何度か登場してくる「ブブさん」という人物を今一度ここで紹介しよう。最初に『オクタン日本版』に登場したのはシトロエン100周年のムック『100年のシトロエン』だった。そこではトラクシオン・アヴァンのオーナーとして紹介した。そしてこのWEBサイトでシトロエン100周年イベントについて書いたときにも登場している。

ブブさんことブルノ・シモエンヌさんは、パリ郊外で親の代から継ぐシトロエンの修理販売店を営む。特に2CVを得意とする彼はまず、この2CVを「42分でバラすことができる」ということでギネスに認定されている。2CVの仕組みがよく分かるということもあって、100周年のイベントでは駐車場でゲリラ的にいきなり2CVをバラしはじめるパフォーマンスを行った。レトロモビルでもよくこのパフォーマンスを見せている。また、このショップの目印に、このショップのある街に生息する(まあどこにでもいるが)カササギ(フランスではピーと呼ばれている)をかたどったマスコットを2CVに載せている。これも話題になり、この「カササギ」モデルはミニカーにもなっているほどだ。

ブブさんのアトリエ(ショップ、整備工場)前。カササギ(ピー)の載った2CVが目印。

このブブさんから「2CVのカブリオレの正式な登録ができたから遊びに来い」という誘いがあった。このカブリオレは何度か見ている。この「正式な登録」というのが今回のミソ。フランスではチューニングメーカーやパーツがあるものの、基本的にフランスの公道を走る車は一切の改造は禁じられているなのである。つまり、あれこれいじった車は本来ならばすべて違法改造車となる。しかし、改造してあるからといって取り締まられるわけでもない。たとえばマフラーが改造されていても、規定の音量以下ならば特にお咎めもない。今回のカブリオレはキットとして販売されていたものだ。それを組み込むということは、厳格な道交法のもとでは公道では走ることができない。そのためブブさんはこのカブリオレの正規登録に挑戦し、ついにそれが叶ったということだ。フランスで正式に認定された2CVカブリオレは唯一この1台ということらしい。1976年の2CVだがカブリオレのキットが作られた1987年がこの車の製造年になり、4人乗りから2人乗りにも変更され、登録車名もこのキットカーを製造した「Azelle」となっているのだ。

2人乗りに割り切った分、ラゲッジスペースが大きくなっている。何よりもそのスタイリッシュさが2CVの魅力を引き出している。

されど、さすがブブさん。ただキットカーをすんなり組んだわけではない。あちこちに手を加えている。エンジンはボアアップされて675ccとなる。たかだか70ccほどの差だが2気筒となるとそのトルクは大きく変わる。エンジンの吹け上がりもスムーズで現代の車と並んで走れる加速を得ている。

675ccとなったエンジン。エンジンルームはなにやらあれこれと着いている。このパワーチューブは空冷用のファンに繋がっていて、ファンが回るとその風はチューブを伝わってエアクリーナーへ。ちょっとしたターボ?ラムエアー?の効果を狙ったモノで意外と効果があるとのこと。

車体の下にはLEDが組み込まれ、夜にドアを開けると足下を照らしたり、リモコンで点滅させたり。「この時期だとクリスマスツリーだな」とうれしそう。クラクションは3種類。歩行者向けにベル。純正のホーン。そして、強烈な音量のホーンと使い分けることができる。

Azelleのロゴをエンジンルームに。その横は巨大な音量のホーン。

2CVのボディはモノコック。それを上半分カットしてしまうと、当然その強度は出ない。というよりも、もはや真っ直ぐな姿勢も保てないほどである。そこでこのキットにはフレームとなるパイプがあり、ボディの中を張りめぐらせて強度を得ているのである。ボディ色はオリジナルの2CVのカラーが残されているため、内装はブブさんのアイデアでデニムで仕上げることになった。ドアの内張やシートまでデニム生地を使用して、これまたブブさんが自らミシンで縫ったという。ミシンは素人というブブさんの手による縫い目は真っ直ぐでないが、それもいい味を出している。また、4人乗りから2人乗りになった分ラゲッジスペースはかなり大きく取られている。

強化用のパイプフレームがあちこちに張り巡らされているので強度は十分。シートもブブさんの手作りデニム。

今回の撮影で近くのマルヌ川に出た。このマルヌ川はセーヌよりも小さいぶんこの辺りでは高級住宅街となっていて雰囲気も良い。引退した芸能人などが多く住むところだ。綺麗なところではあるが不法駐車などができないように道幅も狭くなっており、スピードが出ないようにシケインも多い。川をバックにしようにも、歩道に車が入れないように縁石が連ねられている。でも、ブブさんは「このくらいの縁石は2CVにとって何でもないのだ」と言って乗り越えて中に入って行ってしまった。「2CVで行けないところはない」と自慢げなブブさんである。そんな無茶をしていても車両が車両だけに、近くを散歩している人たちが興味津々で声をかけてくる。これはこの車だけでなくブブさんから出ているオーラにもよるのだと思う。

ということで、これがフランスからお届けする2021年最後のニュースになる。車両にしても人物にしてもクリスマスを前に良い締めくくりになったと自分では思っている。フランスではもう、別れるときには”bonnes fêtes de fin d’année (直訳すると「年の終わりに素敵なお祭りを」)”と年末の決まり文句を使う季節だ。皆さんも素敵なクリスマスとよいお年をお迎えください。

フランスで唯一正規で登録された2CV AzelleカブリオレとブブさんことBruno SIMOES氏。来年もまた色々面白いモノを見せてくださいね!

写真・文:櫻井朋成 Photography and Words: Tomonari SAKURAI

写真・文:櫻井朋成 Photography and Words: Tomonari SAKURAI

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