ヤングタイマーで賑わう、フランスの2021年最後を締めくくるオークション

Tomonari SAKURAI

フランスのクリスマスは、家族で過ごす大事な行事。日本でいうお正月のようなものだ。それゆえ、フランスはすでにバカンスに入っている。その代わり、お正月は元旦の新年を祝う休日だけ。大晦日から大騒ぎして新しい年の始まりを祝う。来年は暦でお正月は土日にあたる。明けた月曜の1月3日にはフランスはもう普通に動き出す。学校も、会社も。

そんなバカンスシーズンに入っているフランスの今年最後のオークションのひとつとしてOSENATのヤングタイマーとコレクターズカーのオークションが行われた。ヤングタイマーといえば聞こえは良いが、下手をするとただの「中古車」にもなりかねない。OSENATは由緒正しいオークショニアだ。絵画や、美術品も扱う。過去にはマリーアントワネットの着ていたドレスや、王妃が作ったレースのハンカチなども話題になった。つまり、「中古車」のオークションとは違う。

12月20日(月)に行われたオークションに先立って、その前の週末に一般向けに下見会が行われた。会場はいつものようにヴェルサイユ宮殿にほど近い、旧エリザベートのお屋敷だ。現在は公園になっているがルイ16世の妹に当たるエリザベートの邸宅をその会場としている。朝露におおわれた車たち。お昼ぐらいにお邪魔したのだが日は低く、影が長くてまだ朝方のようだ。冬至に近い今頃のパリの日の出の時間は午前8時過ぎ。日の入りは午後5時前。出かけるときはまだ暗く、帰宅はもうすでに真っ暗というのがフランスの冬だ。
展示会場の邸宅の庭園。

会場に着くと、下見会初日ということもあり、スタッフがひっきりなしに呼ばれてあれこれ質問を受けたり、実際にエンジンをかけて見せたりと結構な賑わいの様相だ。公園に遊びに来ている家族連れが、珍しい車を見て、わいわい騒いでいるのとは違う。カタログの表紙を飾ったマセラティ4200スパイダーや中心に置かれた2台のロールス・ロイス。ヤングタイマーという意味では普段ほとんど見ることのないMGメトロ、MG FやスポーツバージョンのシトロエンVISAクロノIIなどは懐かしい感じだ。ルノースーパー5GTターボはモンレリ・サーキットのヤングタイマーのイベントに参加したステッカーも貼ってある。

ロールス・ロイスが数台。その中の1台シルバースパー。予想落札価格は130〜180万。

ほとんど見かけることのないMGメトロ ターボ。予想落札価格は110〜140万円。

この邸宅の正面に停められていたメルセデスのリムジン。500SELをベースとしベルギーのカロッツェリア”L’ETOILE(エトワール)”の監督の下ロニー コーチ ビルディング カンパニーが制作している。5台しか生産されなかったという、4ドアのリムジン。内装は派手さはなくゴージャスでシックなもの。備え付けのブラウン管テレビとVHSビデオレコーダーが80年代に製造されたものを物語る。ちなみに予想落札価格は320万〜380万円だ。

処刑台に上がってショールが剥ぎ取られ肩が露わになった。「礼儀を知りなさい!ショールを掛けなさい」と言った瞬間にギロチンに首をはねられたエリザベート・フィリッピーノ・ド・フランス。フランス革命の犠牲になった一人でルイ16世の妹。その邸宅がオークション会場。玄関の前に展示された”エトワール"によるリムジン。

この撮影の前からず~っとそばを離れず食い入るように眺めている少年。彼が次のオーナーになるのかもしれない…

先日カステックス首相のテレビでの記者会見でもあったように、年明けにはさらにオミクロン株が広がるだろうと暗い見方がすでにある。クリスマスのバカンスで浮かれた感じのある中でどれだけ値段を上げていくのか興味深いところだ。


写真・文:櫻井朋成 Photography and Words: Tomonari SAKURAI

写真・文:櫻井朋成

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