<異例の高額落札>さらなる過熱を見せる時計オークションの世界

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さて、ここで実際に11月に開催されたジュネーヴ、香港でのオークションから厳選した注目モデル5点をご紹介したい。


ロット53(11月5&7日ジュネーヴ)
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オメガ、スピードマスター
・予想落札価格:CHF80,000 - 120,000(約1000万円-1500万円)
・落札価格:CHF3,115,500 (約3億8000万円)
1957年にデビューを飾ったオメガのアイコニック・ピース「スピードマスター」は、オメガファンにとって格別な存在である。その「スピードマスター」の初号機。製作から60年以上を経ても蛍光する初期の重要な要素“ブロードアロー”の時分針、文字盤の熟成具合、そしてこれもファンにとって崇拝の対象であるキャリバー321の状態など、そのどれをとってもトップクラスの保存状態と希少性を持ち、エスティメートの範囲でも充分に話題となるピースであったが、結果はなんとエスティメートの25倍、オークションによるオメガの歴代最高の落札額を記録した。そのニュースは驚きとともに世界を駆け巡り、まさに2021年のオークション・マーケットを象徴する1本となった。



ロット852(11月25&26日香港)
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パテック フィリップ, Ref.3448
・予想落札価格:HK$10,000,000 (約1億4500万円)
・落札価格:HK$17,795,000 (約2億6000万円)
パテック フィリップの愛好家には非常に人気のあるフェイスで知られる永久カレンダーのなかでも、このRef.3448は「ブルー ロワイヤル」と呼ばれる特別なピースである。まず目につくのはブルー・サファイアがインデックスに使用されていること、次に、現在まで僅か数例しか確認されていないプラチナ・ケースの3448であること、そして極めつけは、1997年パテック フィリップ自らの手によってシースルーバック・ケースに仕様変更され、その証明がなされていること。このうちのひとつの要素でも非常に稀であるにもかかわらず、そのレア要素が3つも備わっている奇跡のピース。予想を大きく上回り、パテック フィリップの面目躍如ともいえる堂々の落札額を記録した。


ロット819(11月25&26日香港)
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ロレックス, Ref. 6241、JPS
・予想落札価格:HK$4,650,000 - 9,400,000(約6500万円-1億3650万円)
・落札価格:HK$13,560,000(約1億9700万円)
たとえ時計に興味のない人にもその価値が知られているモデルといえば、ロレックス「デイトナ」は間違いなくチャンピオンだろう。しかし愛好家とオークショニアは、その「デイトナ」の中にも、さらなる希少価値を持つレファレンスを知っている。Ref.6241「ポール・ニューマン ジョン・プレイヤー・スペシャル」はその中でも最も希少なモデルのひとつだ。ダイヤルの配色パターンがタバコで有名な英国のインペリアル・ブランドのロゴを想起することからこの名で呼ばれるが、発売当時は不人気で1965年からわずか4年間で生産が打ち切られたため絶対数が少なく、しかもこれほどの保存状態のものは稀だ。査定会など専門家の見解を経て初めて、素人知識では及びもつかない真の価値が見いだされる実例といえる。



ロット140(11月5&7日ジュネーヴ)
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F.P. ジュルヌ, Chronomètre à Résonance
・予想落札価格:CHF200,000 - 400,000(約2400万円-4800万円)
・落札価格:CHF3,902,000(約4億8000万円)
本文でも触れたが、ここ数年、ロレックスやパテック フィリップといったオークション常連のブランドやメゾンとは異質の、独立時計師と呼ばれるメジャー・カンパニーに属さない独立系ブランドや個人作家の時計が高額で落札される傾向がある。このF.P.ジュルヌはその代表格ともいえるだろう。初期作品とはいえ2000年の製作で、数年前であれば間違いなくエスティメートの範囲で決着していたであろうモデルだが、予約者のみに販売された限定番号1番の個体であることやダイヤル素材の希少性などのレアな要素が愛好家間の競合を呼び、記録的な落札額となった。こうしたインディーズ・ブランドの作品が、投資的な意味合いも含んだ高額で落札される傾向は、今後も続くと予想されている。



ロット949(11月25&26日香港)
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ボヴェ

・予想落札価格:HK$78,000 - 120,000(約115万円-175万円)
・落札価格:HK$107,100(約155万円)
億単位の落札実例を挙げてきたが、それらは極端な一面であり、オークションが一般的な時計愛好家に支えられている事実は今も昔も変わりはない。過去に買い逃して今は製造中止となってしまった名品を探す場だったり、マニアックな愛好家が趣味の時計を求める場だったりという、オークション本来の健全さに根差しているのも、オークションハウスとしてのフィリップスの特徴のひとつである。こちらは知る人ぞ知るスイスの古参ブランド、ボヴェが1940年に製作したラトラパンテ・クロノグラフという複雑機能を持つモデル。クロノグラフ・ウォッチを専門に収集するコレクターなどにとっては垂涎の一本で、フィリップスのスペシャリストが算出した絶妙なエスティメートの範囲内でのハンマープライスとなった。




実際、フィリップスに限らずオークション査定会はどこも盛況で、中にはカタログ掲載まで一年待ちなどという状況もあるようだが、ジュネーヴ、香港、ニューヨークという世界的市場で定期的にオークションを開催し、経験あるスペシャリストを多数擁するフィリップスは、こうした特殊な状況にもっとも適応できるオークショニアといえるかもしれない。気になる時計をお持ちの方は、ぜひ一度査定を受けてみてはいかがだろう。




フィリップス査定会詳細

時計のスペシャリストがジュネーヴ・香港・ニューヨークで開催されるオークション出品時計の無料査定会を開催いたします。
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PHILLIPS
PHILLIPS は1796年にロンドンで設立された老舗オークションハウスとしてジュネーヴ、ロンドン、ニューヨーク、香港、台北、ソウル、そして日本オフィスを構える。時計、20世紀およびコンテンポラリーアート、デザイン、エディション、写真、ジュエリーを取り扱う。2014年11月に時計部門を設立し、5月: ジュネーヴ・香港、11月: ジュネーヴ・香港、12月: ニューヨークの年5回、オークションを開催。現在、PHILLIPS 時計部門は世界のマーケットリーダーとして活躍。日本では全国無料査定会ツアーを年2回開催し、東京オフィスでは日本人スペシャリストによる査定がいつでも可能。あなたのお手持ちの時計の現在の価値や、オークション出品及び入札のご質問など、どうぞお気軽にお問い合わせください。

文:北村泰(WATCH MEDIA ONLINE編集人) 

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