レストア途中で放置されていた、美しきランチア アウレリア B24 スパイダー

Bonhams

ランチア アウレリア B24 スパイダーは、第二次世界大戦後にイタリアで生まれた最も影響力のあるデザインのひとつ。1950年のトリノ・モーターショーで発表されたアウレリアは、市販車として初めてV6エンジンを搭載している。フランチェスコ・デ・ヴィルジリオが戦時中に設計した1754ccの60度V6エンジンは、オールアルミニウム製で、ランチア伝統のオーバーヘッドカムシャフトではなく、ショートプッシュロッドで作動するオーバーヘッドバルブを採用していた。先進的なユニット構造をベースにしたアウレリアは、ランチアがラムダで初めて採用した「スライディングピラー」と呼ばれる独立フロントサスペンションを継承しつつ、リアには世界初の独立セミトレーリングアームレイアウトを採用していた。



B24 スパイダーは、ピニンファリーナの最も美しいデザインの1つとして知られており、1955年のブリュッセル モーターショーで初めて公開された。第4シリーズの短縮されたシャシーに、最高出力118bhp、最大トルク127lb/ftを発揮する2451ccのV6エンジンを搭載し、わずか1050kgの車重で活発な加速と115mphの最高速度を実現した。装備はスパイダーらしく、ペイントされたダッシュボード、外付けハンドル、ボンネットとサイドスクリーンのみの風防など、スパルタンな仕上がりで、1955年に240台のみ生産され、左ハンドルと右ハンドルの比率は181/59であった。





写真のB24 スパイダーは1958年5月にイギリスに輸入された個体だ。数人のオーナーの手に渡り、1974年にイギリスのピーター・エバンスが所有した。機械技師であり、ランチア・モーター・クラブのメンバーでもあるピーターは、このアウレリアのレストアを本格的に始めた。また、ピーターは自動車だけでなく、骨董品や美術品など、珍しいものなら何でも収集する熱心なコレクターであり、優れた技巧や質の高い工芸品を好み、分解して仕組みを調べるのが好きだった。





ピーターは所有していたフォードのモデルTを、愛情を込めてレストアし、レッドベリーやヘレフォード地域のキャンプで披露していたため、広く知られるようになった。彼は常に忙しくしていたために、ランチアのレストアは他のことに追われてしまったプロジェクトのひとつだった。ピーターはランチアを愛してやまなかったが、レストアを完成させることができないことを悔やんだ。友人でありランチアの第一人者であるロン・フランシスには、久々の再会でも会うたびに「Its not for sale!」と最初に言っていたという。





このB24 スパイダーはグッドウッドリバイバルセールに出品され、推定落札価格は48万ドル(約5274万円)~62万ドル(約6812万円)となっている。残念ながら、この車のオリジナルのエンジンを見つけることは不可能だったが、先日、ロン・フランシスを介して、同一の正しいタイプのエンジンを確保することができた。正しいエンジンを手に入れたことでこの車がどのように完成するか、今後が楽しみなところだ。



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オクタン日本版編集部

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