チャールズの登場から20年。タイムレスな洗練の極み。

卓越した美というのは、時間だけでなく空間をも、いとも簡単に飛び越えてしまう。イタリアで、チャールズ・イームズにちなんで、その名を彷彿させる「チャールズ」が生まれたのは、20年前のことだ。

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1997年に「チャールズ」をデザインしたアントニオ・チッテリオは、今や建築、インテリアからプロダクトまで、イタリアのデザイナーとして最も大きな影響力をもつ一人といえる。その彼は、「チャールズ」の誕生20周年に際し、次のように回顧している。

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「チャールズは 50年代、60年代のデザインに敬意を表して作られており、その名がチャールズ・イームズに由来があるのは明白です。デザインが参照したものや影響を受けたものを明言するのはとても重要なことです」

つまりチャールズは、モダンファニチャーの黄金期から連綿と続く何かを、アントニオ・チッテリオが、20世紀の最後に表現してみせた大作であるのだ。チッテリオはこう続ける。

「あらゆる建築家やデザイナーの仕事は、他の同業者の作品に影響されている。そして確かに模倣するだけという傾向がある嫌いはある。しかし、少なくとも私自身に関しては、模倣はしないようにしている。けれども偉大な先達の仕事の様相を感じたり、投影をしようとしている。近似性とは、デザインの結果よりもその過程における発想に表れるもので、逆にいえばチャールズのようなデザインは50年代、60年代に存在していない」

B&B Italiaの前身であるC&Bは、1966年にチェザーレ・カッシーナとピエロ・アンブロージオ・ブスネリによって設立された。カッシーナはすでに、建築家の先鋭的なアイディアやデザインを高度な職人業で実現し成功していた。それに対して、最新のテクノロジーを採り入れて工業化と量産をも視野に入れた新たなファニチャーブランド、それがC&B だった。1973年にブスネリがカッシーナからこれを買取り、B&B Italiaとなってからも、その生産体制はそのまま引き継がれた。イタリアの多くの家具ブランドは生産を外部委託する形をとっており、開発から生産まで一貫して自社内でコントロールしている例は稀なのだ。

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チャールズの革新性は、アイディアと生産を手元でコントロールできる体制あってこそのものといえる。スリムで強靭なスチールフレームや、クッションの要となるエラスティックベルトは、金型の中で低温ポリウレタンのモールド内に成型され、それをファブリックやレザーが包んでいる。いわば構造と生産過程、最終的な製品の仕上りはすべて一体で不可分のものだ。これまでは実現できなかった有機的、あるいはファブリックによっては難しかったシャープな形状を安定したクオリティで作り出すことも可能となった。それは、テクノロジーの進化によって新しいフォルムの創造を試みた、イームズ以来のモダンファニチャーのスピリットに確かに繋がるものだ。

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かくしてチャールズ特有の、天地の薄く水平方向に伸びやかなプロポーション、両端L 字型の脚部フォルム、宙に浮いたような佇まいが可能になった。それはシンプルだが快適性とその進化を象徴化した、そこに座りたいと思わせるデザインでもある。優れたデザインは機能美のみならず、そのインスパイアの源やリスペクトをも語りうるのだ。

文:南陽 一浩 Words:Kazuhiro NANYO

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