まだまだ現役!キューバの街を彩る「アウトウニオン」愛好家を訪ねる旅

Photography:Matthew Howell



キューバにアウディ公認クラブが発足


こうして、会食はキューバのDKWとアウトウニオンのオーナーズクラブの設立総会となり、翌日にハバナ旧市街の壮大な建物で会うことになった。全員と知り合ったのは他でもなくその建物だった。



手始めに、ゴンザロが自身でシルバーにペイントしたという1959年アウトウニオン1000SPクーペについて説明した。「革命の勝利のあと、私は水産省で働いていましたが、政府からアウトウニオンを与えられ、島の東部に行くことができました。毎月、片道約800kmの道のりを行き来していました。その後、1987年に政府が車を払い下げてくれたので、それ以来、ずっと持っています。現在では部品の調達に苦労していますが、私が生きている間は修理を続けたいと思っています。問題は、息をしているということ。生きているのです!」

マレッロ・ダリアは、1975年から黒色の1958年アウトウニオン1000クーペ・デラックスのオーナーだ。「キューバではDKWの部品はなく、車単体だけでした。1965年から、ワルトブルグの部品が入ってくるようになり、生き延びるためにワルトブルグのピストンなどの部品を流用したことによって今でも走っているのです。ところが、今ではワルトブルグの部品すらも枯渇してしまったので、私たちがいろいろとアレンジしています。想像してみてください、私たちはMZモーターサイクルの部品を使ってDKWを修理したことがあります。私たちはメカニックではありません。私たちの車が動き続けることができるのは奇跡のおかげなのです」

それを如実に表しているのがジョソ・カルロ・ゴンザレスだ。彼のグリーンのDKW 3=6は、前のオーナーのもとで5年間も使われずにいた。「譲り受けるにはいいタイミングだったのかもしれません。5人のメカニックが見に来て直せなかったにも関わらず、僕には直せたんですよ。キャブレターは修理不能でしたが、定置型発電機のものを流用することで解決しました。エアフィルターは、なんとガスマスクから作ったのです」

青いDKW 3=6 ユニバーサルのオーナーのカミロ・モレも同様に独学だったという。「この手の車には整備士がいませんが、現在ではインターネットと、ここの友人の助けで、自分でできるようになったよ。エンジンのリビルドもね」

ラウル・ヒメネスが白いアウトウニオン1000SPクーペを購入したのは1989年だ。「エアロダイナミクスな、流れる外観が気に入ったんだ」と彼はいう。「女性にも人気があるんだ。色々と改造したさ。コラムチェンジはフロアシフトにしたし、スターターモーターはラーダのものを使っている。パワーウィンドウも付けたんだ」ラウルのアウトウニオンはワルトブルグ社製のシャシーパーツを流用しているために、リアサスペンションのリーフスプリングがコイルになっている。そのためか、少し高めのスタンスになっている。もし、真ん中で少し曲がっているように見えたとしたら、その影響によるものだが、うまくフィットしている。

パブロ・プリエト・ゴイトは、叔父のフアン・スアレス・ペレーラと一緒に来ており、彼はアウトウニオン1000Sクーペを50年間所有している。「リアバンパーは自作で、ラジエターも年季を感じさせるが、信頼性に足るものだ。パブロ自身も同様の車を20年間所有している。「運転はとても簡単だよ」と彼はいう。「でも、スペアパーツがないから⋯」

新顔のユリエ・セレスティアン・ラモスは、恋人のジェズス・ロペスと一緒に訪れている。彼女は1959年のアウトウニオン1000を所有して1年になるが、その理由について、「ある車を見た瞬間に気に入ったの。私は3代目のオーナーです」と告白した。

私たちはエドゥアルドのDKW、カミロのDKWを交換しながらツアーに参加した。くぼみに落ち、日に焼けたゴムシールのためにドアが揺れ、エンジン音が狂ったように鳴り響くなか、モスやファンジオ、シェルビーがかつて公道レースをしたマレコンを通って、オールドハバナの壮大さとベダドの1950年代のモダニズムが融合した海辺に向かい、さらに革命広場へと向かった。他のDKWやアウトウニオンと一緒に、ゆっくりと双六のように進み、アメリカ車の間を、思いやりある眼差しとともに縫って、ハバナの魅力的な通りを巡っていく。確かに、これらの車は完璧には程遠い。しかし、ここでは本当にヒロイックなものなのだ。



編集翻訳:伊東和彦 (Mobi-curators Labo.)  原文翻訳:オクタン日本版編集部
Words: David Lillywhite Photography: Matthew Howell

編集翻訳:伊東和彦 (Mobi-curators Labo.)  原文翻訳:オクタン日本版編集部

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