近代ブガッティ初の量産車、EB110SSがオークションに!

Bonhams

1947年にエットーレ・ブガッティが死去してから40年後、自動車史に名を残す伝説的なブランドでありながら低迷していたブガッティは、野心的なイタリア人実業家、ロマーノ・アルティオリによって買収された。アルティオリは、フェラーリ、ランボルギーニ、マセラティの本拠地であるモデナに近代的な工場を建設し、1992年に完成した最初の量産車を送り出した。その名も「EB110」。エットーレの生誕110年を記念して命名された。1950年代以来のブガッティの新型車は、先進的なミドシップエンジンを搭載したスーパーカーとして、歴代の名車の後継モデルにふさわしいと評価された。



ブガッティ EB110 GTは、ランボルギーニ・カウンタックの共同開発者であるエンジニアのパオロ・スタンツァーニとデザイナーのマルチェロ・ガンディーニによってデザインされた。EB110は、ショートノーズ、ウェッジシェイプのボディ、ガルウイングドアなど、カウンタックとよく似た特徴を持つ。カウンタックで開発された、ショートストロークのV12エンジンとフォワードマウントのギアボックスを搭載していたからだ。



しかし、スタンツァーニは、この優れた仕様に加えて、シリンダーあたり5バルブ、4つのターボチャージャー、特注の6速ギアボックス、そして4輪駆動を追加した。その複雑さにもかかわらず、EB110は公道でもその威力を発揮した。コンパクトなボディに4輪駆動を組み合わせたことで、どんな状況でも優れたグリップ力とバランスを保ち、抜群の俊敏性を発揮したのである。3.5リッターV12エンジンは最高出力561bhpを発揮し、イタリアのナルドテストコースで記録された最高速度は340km/hに達した。これは当時世界最速の車であったジャガーXJ220と肩を並べるほどだった。



EB110 GTの発売から半年後の1992年、ジュネーヴサロンで発表されたのが、よりパワフルで高価な軽量版のEB110 SS(スーパースポーツ)である。スーパースポーツでは、さらに出力が高くなった。実に600bhpを超えている。この出力向上は、新しいECUの装着、燃料噴射装置の大型化、排気システムの制限緩和などによって達成された。また、アルミパネルの一部をカーボン/ケブラー製に変更し、マグネシウム製のBBSホイールを装着することで、全体で202kgの軽量化を実現した。スーパースポーツの0-100km/h加速は3.14秒、最高速度は355km/hと、今日の基準でも息を呑むような数値をブガッティは謳ったのだ。



価格はSSが38万ドルとかなり高価ではあったが、EB110は非常によくできた車であり、室内も広く、豪華な装備も施されていた。



しかしアルティオリと彼の協力者たちにとって不幸だったのは、EB110が発売された頃、1990年代初頭の不況の影響を受け、会社の経営が破綻してしまったことである。このエキゾチックカーは、アルミ製5台とコンポジットシャーシの試作車8台に加えて、わずか125台(GT95台、SS30台)しか製造されなかったと言われており、F1ワールドチャンピオンのミハエル・シューマッハやブルネイのスルタン殿下などがオーナーとして名を連ねていた。



今回ボナムス社主催のオークションに出品されたこのEB110 SSは、1993年7月30日に特別注文され、1994年4月にドイツの輸入車メーカー、オートコーニグ社を通じて、バイエルン在住のスポーツカー愛好家である初代オーナーのバーンド・ペールメン博士に引き渡された。ペダル、シフトノブ、ウィンドウスイッチなどにブルーアルマイト処理を施した特別仕様で、インテリアカラーは生産中に顧客の意向でダークブルーに変更された。ペールマン博士は、EB110 SSにはよりパワフルなエンジンを搭載するよう指定しており、この車のエンジン(ナンバー「B110.01 085」)は、生産されたSSエンジンの中でも最もパワフルなもののひとつだ。



1997年10月、ペールマン博士はこのブガッティをハンブルグのユルゲン・ヤウッズィムス氏に売却した。ヤウッズィムス氏は2003年にコレクターのヤン・ヴァン・スチュイヴェンベルグ氏に売却するまで、このブガッティを保管していた。また、このブガッティは、オランダで「83-RK-ZD」というライセンスを取得していた。そしてヴァン・スチュイヴェンベルグ氏はこの車を10年間所有し、その間に記録された走行距離は18,074kmに増え、2013年3月に4番目で最後のオーナー(ミュンヘン在住)に売却された。

今回の販売のために、ブガッティはカンポガリアーノのB.Engineering社に派遣され、フルサービス、技術検査、認証を受け、同時に完全にオリジナルの状態に戻された。また、車は精密な検査を受け、事故の痕跡がないことも証明された。この車は、ブガッティカスタマーズサービス部門で合計3回(2005年11月、2014年2月、2021年7月)のサービスを受けており、最後の訪問時のオドメーターの数値は29,995kmと記録されている。



この車は現在ドイツで登録されており、膨大なサービスとメンテナンスのインボイス、ブガッティから提供されたこの車両に関する重要な証明書のファイルが付属している。またスポーツエグゾーストと大柄なドライバー用のシートも付属している。

グリージョ・キアロ・メタリザート(ライトグレー・メタリック)にダークブルーのレザーインテリアで仕上げられたこの「#011」のEB110は、全体的に素晴らしい状態だ。今回のオークションは1990年代を代表するスーパーカーの1台を所有し、楽しむことができる貴重な機会と言えるだろう。


オクタン日本版編集部

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