先進的なルックス!後世の「モパー」に大きな影響を与えたファイヤーアローとは?

Patrick Ernzen (C) 2021 Courtesy of RM Sothebys

初期型のダッジ・ファイヤーアローは、クライスラーブランドで製作した多くの車の中で、ギア社の新たな挑戦であった。ファイヤーアローは1953年に華々しくデビューし、すぐに大人気となった。展示されれば多くの人々が訪れ、限定生産であることが噂された。

ファイヤーアローの大人気により、「ダッジ・ファイヤーアロー II」の生産が決まった。初期型同様に、それは低く流線型の2シーターのロードスターで、フレームレスのフロントガラスとシャープで鋭いフィンが印象的だ。シャシーはダッジ製が使用された(このケースでは、ホイールベースは119インチ)。4灯ヘッドランプがワイドな2灯になり、他はテールライトが丸形、クロームのワイヤーホイール、新型の歯型グリル、サイドまでのトリムなど、相違点は多数におよんだ。フロントとリアの横面のトリムは廃された。ボディはライトイエローで塗装されている。





一番大事なことは、当時のある理由から、4本出しのエグゾーストパイプがリアフェンダーに統合されたことだ。241平方インチ、150馬力の「レッド・ラム」HEMI V8エンジンがボンネット下に搭載され、ジャイロスコピック・トルクの4段オートマチック・トランスミッションが採用された。外側のドアハンドルがないものもある。大部分の外観はイタリア由来であったが、デザイナーであるエクスナーの主義に基づき、クリーンで水平的なデザインが活かされている。また、限られつつも効果的な装飾品が、極めて有効に装備されている。



1954年のデビュー後の大体的な露出により、ダッジ・ファイヤーアローIIは改めての大ヒットとなった。その後、クーペとロードスターの2タイプが加わった。そして「ファイヤーアローⅣ」では、外側ドアハンドルやコンバーチブルトップが追加された完全体の量産プロトタイプが登場した。しかし、その生産には最後までゴーサインが出ず、HEMIエンジンのギア社の車2台が、ベーシックなファイヤーアローのデザインとして利用された。低い屋根、クリーンなサイド、広いコクピットなどのスタイリング要素が、後世の「モパー」に受け継がれている。



純正のライトイエローと黒色の2シーターのインテリアでレストアされ、1990年代のジョー・ボーツのコンセプトカーコレクションで有名になった、この1954年ファイヤーアローⅡ by Ghiaは、いま見てもデビュー当時と同様に先進的だ。ウッドリムのナルディのハンドルや、ギア社のエンブレムなどはイタリアの伝統を表すが、ダッジ製シャシーとHEMIV8エンジンは明らかにアメリカンなパワーと存在感を誇示している。初期のファイヤーアローは後期のものに比べ、最も純粋で良質な“ジェット世代”のコンセプトカーデザインを具現化しているといえるだろう。





魅惑的で比類ないイタリアン・アメリカンのハイブリッドカーは、1954年に最初に公開された時と同じように、現代のカーショーでも注目の的となるに違いない。

この車両は8月にアメリカ・カリフォルニア州モントレーでおこなわれるRMサザビーズのオークションに出品される。

RM Sotherby’s
https://rmsothebys.com/


Photography: Patrick Ernzen (C) 2021 Courtesy of RM Sothebys

オクタン日本版編集部

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