ボルボXC90で、初夏の北陸を自分爽やかリチャージドライブ

Kazumi OGATA

ボルボの試乗会は、ほかのメーカーやインポーターの試乗会に比べて、ロングドライブの試乗会が多いような気がします。ボルボ車本来の魅力はもちろん、乗り心地や居住性、安全性、そしてボルボの世界観などなど、確かに乗れば乗るほどしっくりくる…。

今回は「ボルボXC90 ロングテストドライブ」というタイトルの試乗会です。

これは東京~仙台~新潟~長野~東京のうち、一区間を、丸1日かけて撮影しながら走るというプログラム。とはいえコロナ禍ということもあり、密を避けての開催です。しかも同じ場所に留まらないこの試乗会は、撮影場所が重ならないことで、ほかのメディアとは違う独特の写真が掲載されるというメリットも生み出すはず。私たちチームオクタンはスタートから2番目のルート、仙台から新潟まで約220kmを走り抜けます。とはいえ、初めて通る道ばかりで土地勘があるわけではないし、そのうえ徐々に天気は下り坂の予報。これは早めに撮影したほうがよさそう。

XC90シリーズには「48Vマイルドハイブリッド」と、プラグインハイブリッドモデル(PHEV)の「XC90リチャージプラグインハイブリッドT8 AWD」の二つのグレードがありますが、今回の試乗車はPHEVモデルの「XC90 リチャージプラグインハイブリッドT8 AWD インスクリプション」です。

ボルボといえばブランドとして大きな柱が2つ。それは「安全」と「環境」です。

ボルボは昔から「安全」というイメージが強い車ですが、今では当たり前のように車に装備されている3点式シートベルトの開発が原点となっているのかもしれません。3点式が誕生したのは1959年。ボルボはこの特許を無償公開して他社と共有。現在でも最も重要な自動車の安全装備のひとつとなっています。またサイドエアバックやビルトイン式チャイルドシートなど、ボルボが開発した世界初の安全装備はかなり多いことから、ボルボ=安全というイメージが確立されてきたのかも。現在も数々の安全装備を標準装備とし、さらに新しい安全装備は続々と装備されます。そしてアピールの仕方も上手なのです。エンジンのスタートスイッチを押した瞬間、その車に装備されているすべての安全装備の一覧がスピードメーターに表示されます。エンジンのスタート時に、毎回この儀式が行われるので、自然に「この車は自分を守ってくれているんだ」というサブリミナル効果もあるような気がします。また、ボルボにとって、「安全装備が主役」という考えもあるのだと思います。

そしてもうひとつが「環境」意識の高さ。
ボルボは2017年に「2019年以降の新型車をすべて電動化(PHEV含む)する」と宣言し、日本でも2020年中に国内で販売される新車はすべて電動化モデルにチェンジ。さらに2030年にはフルEVしか販売しないという思い切った施策を発表。これには驚きました。

ボルボは「2040年までにクライメートニュートラル企業なる」という宣言をし、車両の電動化と共に、開発や生産、サプライチェーンに至るまで、環境負荷を低減し、サスティナブルを目指すという宣言もしています。さすが環境意識が高いサスティナブル先進国スウェーデンの自動車メーカーです。

さて、そろそろ今回試乗した「XC90リチャージ プラグインハイブリッドT8」の話に入りましょう。



エンジンは2.0リッター直列4気筒ガソリンにターボチャージャーとスーパーチャージャーの二つの過給機を搭載。プラグインハイブリッド(PHEV)とは、簡単に言うと充電器のコンセントから直接バッテリーに充電できるハイブリッド車のことで、普通のハイブリッド車よりも電気だけで走行できる距離が長いことが特徴。ボルボではPHEVモデルのことを「Recharge(リチャージ)」と呼んでいます。ある意味エンジンはいざという時のアシストであり、主役は電気とモーターです。エンジンの最高出力は233kW(318PS)、最大トルク400Nm 。モーターの最高出力は前後合わせて99kwとなっています 。搭載されるバッテリーは96セルのリチウムイオンバッテリー。車両重量は2370㎏と、結構な重さ。



充電は200Vの普通充電のみで、急速充電は使えません。満充電で約40km、総電力量は34Ahで充電時間は約3時間。仙台のスタート時はほぼ満充電&ガソリン満タンの状態で、EV航続可能距離35km。ガソリン航続可能距離は720kmという表示でスタートしました。

このリチャージモデルは基本的に「ハイブリッドモード」がデフォルトです。バッテリー残量があるうちは電気自動車として走り、アクセルを強く踏み込んだ時などにエンジンが介入します。モーターは前後で2基搭載しており、EVモードではエンジンを停止してリアのモーターを駆動する後輪駆動となります。ゆるい上り坂ならEVモード状態のまま。バッテリー残量が無くなると、駆動はエンジン系になります。さらにアクセルペダルを踏み込むと4WDになりますし、下り坂ではエンジンが停止して後輪でエネルギーを回生しながらEV状態になります。

PHEVらしさを味わうなら、走りながら充電する「チャージモード」をおすすめします。また電池の残量をよりキープしたい場合には「ホールドモード」でバッテリー残量を温存することもできます。もちろん積極的にこれらを試してみるのもアリです!特に高速走行時などにチャージモードにしておくと、若干燃費は悪くなってしまいますが、満充電の80%までは走行中でも充電が可能です。と、いうことは自宅から高速まで電気のみで走行し、高速でチャージ。高速を降りたらまた電気で……なーんて、こんな使い方をするととても効率のいい走り方ができますよ。



ドライブモードは6つ。スタート/ストップスイッチの近くに「DRIVE MODE」と書かれたスイッチをコロコロ動かして設定を変えます。前述の通りデフォルトは「ハイブリッドモード」でエンジンとモーターを状況に合わせて使い分けてくれます。「ピュアモード」はいわゆるエコモードで、エンジンを止めて走ります。ほかには常時4WDとなる「コンスタントAWD」、力強い加速を味わえる「パワー」、好みに合わせて設定できる「インディビジュアル」がありますが、私は基本的に「ピュアモード」にしています。そうすればステアリング、エンジン、トランスミッション、サスペンション、エアコンなどを自動制御してくれて、何もしなくてもエコドライブに。モードを変更するときは、エアコンの温度を確保したいときや、高速道路などで強い加速を必要とするときに変更する、という感じです。ちなみに今回のドライブでは残念ながら「コンスタントAWD」の出番はありませんでした。

高速道路での高速巡航時は「パイロットアシスト」で楽々ドライブ。ハンドルにあるスイッチにはシンプルなグラフィックがついていますが、ACCなどのセットの仕方が実に簡単。特に文字などは書かれていませんが、スイッチのデザインだけで使用方法が分かるのは凄い!これもデザイン力の高いボルボならでは。そのため、ACCを気軽に使うことができます。しかも車線のトレースは自然で滑らか。また、アダプティブクルーズコントロール(ACC)設定時に前走車に近づき、車線変更をしようとすると「追い越しアシスト」がサポートしてくれます。そして21年モデルからは車線逸脱しかけると警告としてハンドルが振動する装備が加わったそう。直進安定性が抜群にいいので、疲労も少ないのです。

XC90リチャージは全長4950㎜×全幅1960㎜×全高1760㎜というボリューミーなサイズ。しかも今回は白のボディカラーなので、より大きさを感じるももの、威圧感というよりは上品な印象。エクステリアのデザインも見るからにセンスの良さが伺えます。



インテリアはとにかくお洒落で居心地が良く、まるで北欧家具のよう。革張りのダッシュボード、白木のウッドパネルは白樺の森の中にいるみたい。インパネ中央には大型の液晶ディスプレイ、その左右に横基調のエアコンルーバーが陣取っていて、ディスプレイと一体化しているかのよう。さらにボルボのPHENにはクリスタルの「オルフォス社製」シフトノブが装備され、更に透明感が増し増し。





運転席はSUVならではで、アイポイントが高く、視界がいい。ハンドルの角度は立ちぎみなせいか、アイポイントの高さ以外はSUVというより乗用車という雰囲気。

7人乗り3列シートですが、3列目はエマージェンシー的なものかと思いきや、2列目シートを少し前に出せば、これが意外にも大人でもよほど大柄な人でなければそれほど狭さを感じません。



11.8kWhのリチウムバッテリーはセンターコンソール下に収まっていて足元スペースをしっかり確保。むしろフロア全体には工夫がなされていて、しっかりと足が置けるのも好印象。もちろんバック時は360度見えるモニターのサポートもあるし、ラゲッジルームに大きな荷物を載せるときは、車高を4㎝下げることが出来るので助かります。





さらに2列目と3列目のシートは倒せばほぼフラットになるため、長尺モノもたっぷり安全に詰めるし、いざとなったら車内で横たわって眠ることができるので、質のいい眠りにつけて疲れも早く取れそうです。タイヤはコンチネンタルのプレミアムコンタクト6の275/40R21。大径ですが乗り心地はまったく損なわれていません。さらに試乗車にはお洒落なボルボオリジナルの長傘や防災用バッグも装備されていました。

走っても、そこに佇んでいるだけでも存在感たっぷりのXC90。



先日、あるお笑い芸人さんにインタビューをした時のこと。「これまで一番、モテた車はなんですか?」との質問に「ボルボXC90です!」とキッパリ答えていただきました。残念ながら今は別の車に乗り換えてしまったようですが、性別や年齢を問わず好感度が高いボルボXC90。この車もモテないはずはありません…よね!?(笑)

そして私も、このワンデイドライブでリチャージ完了しました!



文:吉田由美 写真:尾形和美 Words: Yumi YOSHIDA Photography: Kazumi OGATA


ボルボXC90 Recharge Plug-in Hybrid(リチャージ プラグイン ハイブリッド)
T8 AWD インスクリプション
全長x全幅x全高:4950mm x 1960mm x 1760mm
ホイールベース:2985mm
車両重量:2370㎏
エンジン形式:直列4気筒2.0リッターDOHC16V
インタークーラー付ターボチャージャー+スーパーチャージャー
+ 電動モーター
エンジン最高出力:233kw(318ps)/6000rpm
エンジン最大トルク:400Nm(40.8kgm)/2200-5400rpm
電動モーター最高出力:フロント34kw/2500rpm リア65km/7000rpm
電動モーター最大トルク:フロント160Nm/0-2500rpm リア240Nm/0-3000rpm
サスペンション形式:フロント ダブルウィッシュボーン リア マルチリンク
価格:1139万円(税込、オプション別)

文:吉田由美 写真:尾形和美 Words: Yumi YOSHIDA Photography: Kazumi OGATA

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