「車をきれいに磨き上げてそれを維持すること」 それこそが究極のドレスアップでありカスタマイズ

Photography:Yoshimi YASUOKA

車を所有する以上、常に美しい状態を保ちたいと思うのは自動車愛好家にとっては当然の想いである。そうなるとコーティングは必須だが、どのショップに依頼をするかは非常に慎重に選ぶべきである。だが、どこに依頼しても同じような仕上がりだと思い込んでいるかたも多く、予想とのギャップに驚くことも少なくない。今回は日本スーパーカー協会代表理事を務める須山泰宏氏と、カーコーティングやラッピングなどのボディケアにストイックに向き合うアクティブガレージ代表の阿部雄一氏に話を伺った。


自動車文化の継承は後進の育成から


Octane編集部(以下Octane) 阿部さんがこのビジネスを始めたきっかけは何だったのですか。

阿部 私の社会人経験のベースは、輸入車系ディーラー勤務からスタートしました。努力した甲斐もあって、わずか数年で責任あるポジションを任されたのですが、徐々に仕事全体がルーティンに思えてきたんですよね。そろそろ自分で新しいビジネスを始めたいと考え始めました。その頃には自動車業界全体の構造がだいぶわかってきていたので、自分としてはエンドユーザーと最も深く関わることができる業種を求めることにしました。より多くのかたと出会える仕事こそが天職であると思ったんです。洗車やコーティングをしっかりとしたビジネスモデルで展開することを選んだのはそういった理由からです。

Octane 起業当時、すでにボディケアの競合は少なくはなかったと思います。他社との差別化のために取り組まれたことは何ですか。

阿部 まずは基本ができていないと応用にはつながらないので、多くの先人達に教わりながら基本重視の活動をおこなっていました。そのときに、とある取引先の方から「人間国宝は寡黙とは限らない。自分の言葉で伝えることができなければ人間国宝にはなれない」という話を聞き、強く印象に残ったことを覚えています。それをきっかけに仕事をトータルでプロデュースできるよう、何をどのように工夫をしたか、まずそれをお客様に伝える努力を始めました。ディテイリングという仕事はとても創造的で、本当の意味でのクリエイティビティを求められます。アクティブガレージで働くメンバーは、一人残らず"車好き"。「目の前の1台を、どうやってより上質なものに仕上げるか」圧倒的な経験値とあくなき探究心で次世代を担う若者を育てています。

Octane 須山さんはアクティブガレージのお客様ですが、一方「車好きの仲間」として阿部さんの仕事ぶりをどのように見られていますか。

須山 ハイエンドな車を維持していくには阿部さんのように実直な方のサポートが絶対に必要です。もちろん高い技術力は前提条件であり、さらに言えばそれを上手に顧客に伝えてくれることも重要だと思いますね。アクティブガレージさんの妙は、「できるだけパーツは外して徹底的に磨く技術力の高さ」ですね。とても手間が掛かりたいへんな作業だと思いますが、それこそ見えないところまでこだわるのが匠の技。この仕上げを目の当たりにしたとき、顧客として満足度のレベルは想像をはるかに超えたものになります。

阿部 ありがとうございます。確かに我々は自分たちが納得できるまでやり切ることを心掛けています。僕は須山さんの車のいじり方が"超日本的"で大好きなのですが、ある意味日本の磨きの技術は、世界的にはまだ底辺かもしれません。なぜかというと、欧米では、"傷はその自動車の持つヒストリー"というとらえ方をしていて、その傷を活かすような作業をするんですよね。でも日本はまだきれいに塗り直して完成というのが主流です。だから真の意味で磨く技術が育たないんです。

須山 信頼できるお客様からの紹介も大切だと思います。「あの人がお願いしているならば大丈夫だ」という安心感は、何よりも大きな信用につながります。

阿部 お客様に安心してもらうために、作業内容や修理行程をできるだけ画像で送るようにしています。また"積載車は名刺代わり"。汚くてボロボロの積載車に積まれる姿を見たら、お客様の興奮も冷めてしまいますよね。当社では、車高の低い車や、クラシックカーも安心して積み下ろしできるフルフラットの積載車をご用意。しっかり車庫で保管して、美しい状態で納車することを心がけています。

須山 オーナーは工場内の修理内容は、実際にはなかなか見ることはできませんが、まず愛車を預けるときにどれほどていねいに運んでくれるのか、そこで多くは判断ができます。積載は顧客が見ることができる最初の作業なので、どのように愛車と接してくれるかを判断するひとつのポイントだと思います。

須山氏のアストンマーティンDBSとともに阿部氏と談笑。アクティブガレージではガラスコーティングはもちろん、カーフィルムやカーラッピング、プロテクションフィルムなど、対象車種に対して適切なボディケアを提案している。

Octane 阿部さんの今後のビジョンを教えてください。

阿部 志を同じくする同業と、「東京ディテイリング倶楽部」という団体を立ち上げています。カーコーティングやプロテクションフィルム、カーラッピング等、各専門分野において、専門的かつ高クオリティを検証していく集団が東京ディテイリング倶楽部です。洗車方法、洗車道具、カーケア用品の開発、検証などもおこなっています。あるカーイベントでカーラッピングのデモンストレーションを始めたところ、車好きな人達でスマホによる動画撮影の人だかりの輪が幾重にも重なりました。なかでも職人が音もなく貼っている瞬間を、国際映像として収められていたことが強く心に残っていて胸が熱くなったのです。そういった熱い経験を若いスタッフに数多く積んでいってもらいたいと思いました。そのためにも、サブコンセプトとしては"適正利潤の追求"を掲げています。お客様にも説明をすることもあります。一切の妥協を排除して高いクオリティの仕事を果たすには、適正な料金をいただく必要があります。きちんとした対価をいただく代わりに、我々自身が完全に納得できるまで徹底的にやり直します。団体としては、この作業クオリティが業界標準になっていくことを目標にしています。

須山 物を大切にするのは日本人の素晴らしい国民性であり、一方で世界に目を向けると、車との生活や歴史的価値を尊重し、きちんと評価する文化があります。その両面を理解したうえで、日本ならではのハイクオリティなサービスを提供しているアクティブガレージは、これからの日本の車文化を支える縁の下の力持ちだと思っています。


説明サンプルに用意された本革製スニーカー。コーティングが施された部分は、貨幣で強く擦ってもほぼ傷は残らない。ここ最近の依頼内容は、コーティングよりもカーラッピングやプロテクションフィルムが多いそうだ。

フィルムXPELや静電気を防止するIGNISのクリーナーやコンディショナーなど、アクティブガレージでは優れた機能をもつ製品のウォッチを欠かさない。


インタビューを終えて

インタビューの後、本社から少しだけ離れたファクトリーでも取材をおこなった。それぞれのブースにはホコリなどが入らないためのケアがしっかりと施され、その環境において複数の若いスタッフが皆、真剣な眼差しで作業に集中していた。自分の仕事に誇りをもって熱く語る阿部代表と、無類のスーパーカー愛好家である須山代表の対談は、コーティングにとどまることなく自動車業界の今後など、遠い未来のことまで見据えるものとなった。自動車の多くが、"愛おしい車"から"移動手段としての道具"に変容していくなか、日本の車文化のために本当に大切にしていくべきは若手の人材育成に尽きるとまで言い切る阿部氏。顧客満足を第一に考えるアクティブガレージの流儀は、正しくスタッフに受け継がれ、今後もさらに磨きがかかっていくに違いない。


(左)アクティブガレージ代表 阿部雄一氏
2000年に現在の会社を起業。カーラッピング、コーティング、カーフィルムなどに特化したカーディテイリング事業を展開。お客様の「こうしたい」を形にすることをモットーに国内外で研鑽を積む。

(右)一般社団法人 日本スーパーカー協会 代表理事 須山泰宏氏
スーパーカー文化のさらなる発展と社会的スーパーカー活動の推進を理念としての活動を推進。最近はクラシックカー分野でも幅広く活躍中。


文:オクタン日本版編集部 写真:安岡 嘉 Words:Octane Japan Photography:Yoshimi YASUOKA


アクティブガレージ
〒133-0044 東京都江戸川区本一色3-42-8
営業時間:AM 9:00 ~ PM 7:00
定休日:日曜日
TEL:03-5661-6477
http://www.activegarage.co.jp/

オクタン日本版編集部

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