1600馬力、400km/h超、4億円超の凄み|ブガッティ シロン「スーパースポーツ」

Bugatti

低いフロント、サイドのエアロダイナミクス・シェイプ、そして最高のパフォーマンスを発揮するために延長されたテール。新型ブガッティ・シロン・スーパースポーツが、エアロダイナミクス・パフォーマンスのために妥協なく設計されていることは一目瞭然だ。ブガッティのエンジニアは、贅沢さや快適さとトップスピードを両立させるハイパースポーツカーを開発したのである。

ブガッティの社長であるステファン・ヴィンケルマンは、「シロンスーパースポーツは、絶対的な最高速度を維持しながら最高級のラグジュアリーを組み合わせるという、ブガッティの長年の伝統を踏襲しています」「シロン・スーパースポーツは、快適性とエレガンスを向上させ、さらに優れたパフォーマンスと高速性を兼ね備えています。この新しいモデルで、私たちはシロンファミリーの中にもうひとつの明確な個性を確立しました。これは、私たちが近年学び、開発してきた究極のグランドツアラーのエッセンスです」と述べている。シロン・スーパースポーツは、ブガッティの幅広いパフォーマンスのを体現している。コーナリングや横方向の敏捷性を追求したシロン・ピュア・スポーツと対をなすモデルだ。



スピードのためのデザイン

ブガッティは、シロン・スーパースポーツのボディワークのために、エアロダイナミクスを最適化した新しいデザインを開発した。新型シロン・スーパースポーツは、「形は性能に比例する」というブガッティのデザインマントラを、妥協することなく再現している。フロントスプリッターからリアディフューザーに至るまで、全てのボディワークがトップスピードのためにデザインされているのだ。



420km/h以上のスピードでは、十分なダウンフォースが必要であり、空気抵抗は最小限でなくてはならない。ブガッティのデピュティ・デザイン・ディレクターであるフランク・ヘイルは、「私たちが目指したのは、最高速度でのニュートラルなセットアップと、可能な限り流線型の形状を両立させることでした」と説明する。時速440kmでボディワークにかかる揚力は相当なものだ。シロン・スーパースポーツのボディは、巨大なダウンフォースを発生させ、完璧なバランスを保っている。

「そのため、デザインプロセスでは、特に空力効率の達成を目指しました」とヘイルは続ける。シロン・スーパースポーツの延長されたリアはロングテールと呼ばれ、新しいプロポーションと非常に特徴的かつ個性的な美学を持っている車となった。オプションの新しい水平方向のカラースプリットは、シロン・スーパースポーツのプロポーションをさらに視覚的に拡張し、車体をより低く見せる効果がある。



空力性能に関しては、層流をできるだけ長くボディワークにキープするために、リアが約25cm拡大された。また、ブガッティのデザイナーは、ディフューザーの断面を拡大し、ディフューザーの後縁を高くすることで、リアのトレーリングサーフェスを44%減少させた。その結果、車を減速させる要因となるスリップストリームと風の抵抗が大幅に減少したのである。これらの技術的な改良により、リアのプロポーションがさらに良くなり、ワイドでロースラントなデザインになった。このロングテールは、層状の空気の流れをできるだけ長くボディに密着させるのに効果を発揮する。

テールパイプの位置を変更したことで、遠くから見てもシロン・スーパースポーツであることが一目瞭然となっている。ディフューザーの効果を高め、スペースを確保するため、ブガッティは中央にあったエグゾーストシステムを横にずらし、パイプを垂直に並べたのだ。従来のエグゾーストシステムのサウンドも、より深く豊かなものになっている。



「ディフューザーでダウンフォースを発生させることができれば、ドラッグを誘発するウイングでダウンフォースを発生させる必要はありません。つまり、トップスピードモードではウイングを可能な限り格納し、ドラッグを最小限に抑えた走行ができるのです」とフランク・ヘイルは説明する。

さらにエクスクルーシブ性を高めるために、5本のY字型スポークで構成された新型のアルミホイールがシロン・スーパースポーツのためだけに用意されている。そしてこの新しいスーパースポーツ・ホイールには、ダイヤモンド・カットのオプションも用意されている。また、バネ下重量をさらに軽減するシロン・ピュア・スポーツのアイコンであるマグネシウム・ホイールもオプションで用意されている。

インテリアは、時代を超えたエレガンスと比類なき快適性を兼ね備えている。レザーやポリッシュされたアルミニウムなどの自然素材と、ハイテクなカーボンファイバーが融合されているのだ。ハイスピードで駆け巡るのに最適なインテリアだ。



開発にあたっては、技術的な限界に重点を置き、要求は厳しいものであった。最高速度が440km/hに達しても、簡単かつ安全にコントロールできなければならないからだ。

高性能化と高回転化

ブガッティは、シロン・スーパースポーツのために8.0リッターW16エンジンを徹底的に見直し、100PS向上させて1,176kW/1,600PSとなった。同時に、23kgの軽量化も実現した。エンジニアは、ターボチャージャー、オイルポンプ、バルブトレイン付きシリンダーヘッド、トランスミッション、クラッチなどにも手を加えた。ブガッティの開発責任者であるマイケル・コドラは「縦方向の加速をさらに高め、よりエモーショナルなドライビングエクスペリエンスを実現するために、1分間あたりの回転数を上げました」と語る。エンジンの回転数を300rpm上げて最大7,100rpmとし、俊敏性が顕著に向上した。最大トルクは、従来の6,000rpmまでではなく、2,000rpmから7,000rpmの間で発揮される。



より効率的なコンプレッサーホイールを備えた大型のターボチャージャーによって生み出されたパフォーマンスの向上により、フルロード、フルスピードでの7速デュアルクラッチトランスミッションは、403km/hで6速から7速へとシフトアップする。シロン・スーパースポーツは、0-200km/hが5.8秒、0-300km/hが12.1秒だ。0-400km/hではシロン・スーパースポーツの方がシロンよりも7%速い。

フルスロットルでのシームレスな加速を実現するためには、急速に勢いを増して最適な速度に達するまでの間、ブースト圧を最大に近い状態に保つ必要がある。ギアチェンジの際には、わずか0.3秒間だけブースト圧が低下し、その後2.8バールのフルブースト圧に戻り、シロン・スーパースポーツのW16エンジンを満たす。

「膨大なパワーと縦方向の加速にもかかわらず、シロン・スーパースポーツは快適で静か、かつバランスのとれた走行を実現します」とミヒャエル・コドラは説明する。6,000rpmを超えても加速は衰えず、7,100rpmまでにシロン・スーパースポーツに強大な推進力を与える。「このエンジンの特性は、シロンにぴったりなのです」とマイケル・コドラは語る。

トップスピードを引き出すシャシーセットアップ

ブガッティは、シロン・スーパースポーツの高速性と新しいエアロダイナミクスに特化した新しいシャシーを開発した。ステアリングシステムとダンパーは、ドライビングフィールから車両とのつながりをより強固にし、タイトなステアリングを実現して、よりスムーズなステアリングの動きを可能にした。また、硬めのスプリングがトップスピード時に車両全体を安定させ、さらにエンジニアは電子制御式シャシーもさらにチューニングを加えた。これは、6mm/sという速さでリアルタイムに設定を調整し、シチュエーションに適応するようになっている。ドライビングモードは、EB、ハンドリング、アウトバーン、トップスピードの4種類から選ぶことができる。

拡張されたリアと修正されたフロントにより、シロン・スーパースポーツはトップスピードでもバランスのとれたエアロダイナミクスを実現している。「高速ロングコーナーでも、リアはニュートラルな状態を維持しているため、非常に落ち着いた運転ができます。トップスピードでは、私たちは絶対的な走行安定性と快適性を重視しています」と、ブガッティのシャシー開発責任者であるヤーチン・シュヴァルベは説明する。この揺るぎない方向安定性に加えて、ステアリングの静粛性と剛性、そして顕著に向上したパフォーマンスが、シロン・スーパースポーツの特徴だ。



トップスピードでの走行時に最適化された新開発のミシュラン・パイロット・スポーツ・カップ2タイヤは、シロン・ピュア・スポーツに装着されているグリップが最適化されたタイヤよりも高い剛性と滑らかさを備えているのだ。さらに、このタイヤは最高速度500km/hで安定して走行できる唯一のタイヤだ。これは、スペースシャトル用に作られたテストベンチでも検証された、非常に強い力に対応できる強化ベルトによって開発されている。また、製造後にはすべてのタイヤにX線検査を行われ、ごくわずかな異常も見逃されない。

「シャシーの開発にあたっては、圧倒的な加速とブガッティならではのラグジュアリーで快適な走行を実現するために、あらゆるパラメータを調整しました」「シロン・ピュア・スポーツは、横方向のダイナミクスを持つ自由回転型の車両であるため、350km/hまでは大きなダウンフォースが得られますが、シロン・スーパースポーツは、それ以上の速度域でも非常にニュートラルで静かな状態を維持しています。これにより、安全性が大幅に向上します」とヤーチン・シュワルベは説明する。結果として、ドライバーが予測できる極めて正確なハンドリングと確実なステアリング、静かなボディワークを実現しているのだ。

スーパースポーツの先人たち



新型シロン・スーパースポーツは、ブガッティの有名な先人たちの仲間入りを果たした。ブガッティは、1931年のパリモーターショーでタイプ55スーパースポーツを発表した。このグランドツアラーは、レースカーの技術と洗練された2シーターの快適性を兼ね備えていた。2.3リッター8気筒エンジンは、コンプレッサーの助けを借りて最高160PSを発揮し、タイプ55スーパースポーツを180km/h以上に加速させた。ボディワークの多くは、若く才能溢れるジャン・ブガッティがデザインしたもので、1935年までに38台しか生産されなかった。そしてブガッティが次のスーパースポーツを製作するのは、1993年から1995年にかけてのことだった。39台のEB110スーパースポーツが生産されたのだ。EB110は再び、軽量構造、性能、豪華さ、高級感のすべてを追求し、その時代の最高のスーパースポーツカーとなったのである。カーボンファイバー製のボディワーク、全輪駆動、4つのターボチャージャーを備えた最初のスーパースポーツカーだった。V12ターボエンジンは610PS以上を発揮し、EB110スーパースポーツでは、最高時速351km/hの記録を含む複数の記録を打ち立てた。

その20年後、ブガッティはスーパースポーツを再び世に送り出した。1,200PSを誇るヴェイロン16.4スーパースポーツは、2010年に431.2km/hの速度記録を更新し、路上走行可能なシリーズスポーツカーの世界最速記録としてギネスブックに登録され、長年にわたりその記録を保持してきた。ヴェイロン16.4スーパースポーツはヴェイロンでは唯一、大型のエアインテークではなくNACAダクトが採用されており、エンジンの大部分が覆われているモデルでもある。またブガッティは、ヴェイロン16.4スーパースポーツのために特別に水平方向のカラースプリットも開発された。

その後、スーパースポーツの伝説は2019年夏に蘇り、ブガッティはシロン・スーパースポーツ300+で時速300マイルの閾値を超え、記録車両は304.773マイル(490.484km/h)という信じられない速度を記録した。これをベースに、同様のデザインとカラーエレメントを採用したわずか30台の少数生産モデルも誕生した。

ブガッティは間もなく、フランスのモルスハイムでシロン・スーパースポーツの製造を開始する。価格は320万ユーロ(約4億2600万円)で、2022年初頭に納車が開始される予定だ。


オクタン日本版編集部

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