モータースポーツ史に色濃く残る名車、917Kがオークションに!

Phil Norton (C) 2021 Courtesy of RM Sothebys

自動車やモータースポーツの愛好家にとって、ポルシェ917は言うに及ばず、なかでも情熱を最も強く掻き立てるのは初期型の917Kクーペであろう。「世界で最も偉大なスポーツカー」と称されるポルシェ917は、ほぼ完璧な水平対向12気筒の空冷エンジンを搭載し、時速230マイルを超えるスピードで走行することができた。そしてポルシェ917は、耐久スポーツカーのデザインを新たなレベルに引き上げるデザイン、エンジニアリング、そしてパフォーマンスの基準を確立し、世界選手権でも3シーズンにわたって圧倒的な強さを見せつけたのであった。



シャシーナンバー「026」は、JWオートモーティブ・エンジニアリング/ガルフ・レーシング・チームが1970年のル・マン24時間レースにエントリーした3台のうちの1台で、姉妹車のオレンジ色のセンターライン・ストライプとは対照的に、ルーフ全体がベルトラインまでオレンジ色に塗装された、他のガルフ・カラーとは異なるカラーリングであることが特徴だ。レースナンバーは「22」で、ドライバーはデビッド・ホッブスと、モーターサイクルの世界チャンピオンになったことのあるマイク・ヘイルウッドのコンビだった。そのレースでは難しいウェットコンディションの中で49周を走り、一時は総合3位まで順位を上げたものの、50周目にヘイルウッドがアクアプレーニングによりクラッシュし、そのままリタイヤとなった。



ル・マン終了後、シャシーはファクトリーで修理され「031」のナンバーが付けられた。その後、1972年のヨーロッパ・インターセリー選手権(グループ7のスポーツレーシングカー向けのレース)に出場するために、軽量なオープンボディのポルシェ917スパイダーに改造された。



この車は、プライベーターのエルンスト・クラウスによって1971年から1972年のヨーロッパ・レース・シリーズに参戦。同年4月3日にドイツのニュルブルクリンクで開催された300kmのレース、グッドイヤー・ポカール・レンネンでデビューした。1973年のインターセリエ・チャンピオンシップでは、強力なライバルとの激しい争いの末に好成績を収め注目すべき戦果も残した。1974年にレースから引退した後、917Kはシャンドン・コレクションに加わり、1988年まで大切に保管されていた。そしてその後、この917Kは、著名な愛好家でありコレクターでもあるマイク・アマルフィターノ氏の手に渡り、現在のオーナーの手に渡るまで所有されていた。



現在のオーナーは、10年以上前にスパイダーの状態でこのポルシェを手に入れ、その後、この車を完全にレストアしてオリジナルのガルフ・リバースのル・マン・クーペ仕様に戻した。このレストアはコストを度外視して行われ、その結果、見事なデザインとカラーリングから、ボクサーエンジンを搭載した12気筒のフル回転時のサウンドまで、あらゆるフィーリングが完璧なものとなった。ポルシェ917Kの奏でる他に類を見ないサウンドは、まるで「次のイベントはル・マン24時間レースへの復帰だ」と言いたげに息巻いているようにも聞こえる。



今年の8月に開催されるRMサザビーズのモントレー・オークションに出品されるこの917Kの落札予想価格などは発表されていないものの、スティーヴ・マックイーンの「栄光のル・マン」の影響もあり、「史上最高のスポーツレーシングカー」として広く認められている917Kに計り知れない価値があるのは間違いないだろう。



Images: Phil Norton (C) 2021 Courtesy of RM Sotheby's

まとめ:オクタン日本版編集部 Images: Phil Norton (C) 2021 Courtesy of RM Sotheby's

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