日本でわずか11軒のルレ・エ・シャトー認定の宿へ、アストンマーティンDBXで行くラグジュアリーな旅

Ken TAKAYANAGI


信州の奥深い自然の中へ分け入って行く休日の贅沢


『扉温泉明神館』は今年、創業90周年を迎える。開業当初は山で採れたもの、畑でつくったものでおもてなしする家族経営の小さな宿だったそうだが、作家や学者が好んで長期逗留するようになると、その名が次第に知られることとなった。扉温泉とはこの地を指す地名で、日本神話の岩戸伝説に拠っているそうだ。明神館へのアプローチはそこが秘境である通りに、少々細い山道を行くことになる。葛おれのアザレアラインを抜けてくる(塩尻〜松本市内経由)と扉温泉の道路標識があり、そこから700mほどは対向車に気を使いながらの一本道となる。全幅1998mmのDBXにとっては少々狭い道となるが、否応のない山深さを感じるにはなかなかの演出だ。聞けばかつてはもう一軒、同地区に温泉宿があったそうだが、現在は明神館が残るのみで、敷地よりも先には低山トレッキングを楽しむ人のほかは関係者以外立ち入る人はいないという。

パノラミックガラスルーフになっている天井部。おかげで室内は相当に広く感じる。電動式のシェードも備わる。

あらためてルレ・エ・シャトーのホームページに戻って、その価値について確認をすると『扉温泉明神館』がどんな宿かが見えてくるので、再度引用させていただく。
「ルレ・エ・シャトーの加盟メンバーは、彼らの根差す地域や歴史、環境、そして文化を深く理解し、共存することを望んでいます」
「各加盟メンバーは、その地域の文化やライフスタイル、そしてその土地に住む人々を尊重しています」
「各加盟メンバーの責任者は、自身の情熱を顧客だけでなくスタッフとも共有します」
「ルレ・エ・シャトーは、その地域に連綿と伝わるおもてなしや料理を更に進化させることに貢献します」
「ルレ・エ・シャトーのメンバーは、世界各国・地域のホスピタリティーや食文化の多様性と豊かさを大切に守り、より多くのお客様へ提唱していくことを理念として共有し、2014年11月にユネスコで宣言したルレ・エ・シャトーのヴィジョン“その土地の伝統や環境を守りつづける”を日々実践しています」
90周年を迎えるにあたり、長年にわたり進められてきたリノベーションはようやく完成となるようだが、そこかしこに見えるスタッフの手作り感の残る生花や季節の装飾には、ルレ・エ・シャトーの精神がきちんと息づいているように見えた。

信州ダイニング『TOBIRA』。春から初夏にかけてのこの地の食の恵みは、苦みや甘みなどを楽しむのが醍醐味とか。

信州ダイニング『TOBIRA』では和食を提供。和食目当てはもちろんのこと、この空間でお食事をいただきたいとのリクエストが多いという。

5種の小鉢による前菜は、春の間はうるいとほうれん草のお浸し、たらの芽の唐墨和えなど季節を味わう内容に。


お造りは信州サーモンの山葵包みと車海老の土佐酢〆に、鰆焼霜燻製。

本来ならこの季節の肉料理は信州牛の角煮が用意されるが、こちらのようにフィレ塩焼も特別に用意することも可能だそう。

除菌・抗菌のための味気ないハンドウォッシャーをスタッフが演出している。ちょっとしたスタッフの心遣いを感じる取り組み。

アストンマーティンDBXで訪れた『扉温泉明神館』はまさに完璧な選択だった。ルレ・エ・シャトーの精神がヨーロピアン・ラグジュアリーの本質そのものであり、それこそがメンバーシップの絶対的存在価値だとすれば、それはアストンマーティンというブランドの価値そのものではないだろうか。『扉温泉明神館』が時間をかけてリノベーションしたのは、現代的な過ごし方を可能にする空間そのもの、一方でアストンマーティンがDBXに託したのは次代のアストンマーティン・オーナーが指向する新しいライフスタイル・ビークルであることからも似たものを感じる。

ビーナスラインではスポーツ/スポーツプラスモードが楽しい。見切りの良さもあって走行時はその巨体を気にすることはない。

ひと目でそれとわかるアストンマーティンのデザインコードに習ったDBXのフロント。威圧感ではない存在感。

3分割が可能な荷室。左手前の縦に並んだ2つのボタンで車高調整ができる。リヤシートを立てた状態で容積は632リッター。

仕上げにはビーナスラインのハイスピードドライブを堪能


2日間に渡る今回のツーリングルートは往路を東京都内〜中央自動車道塩尻IC〜松本市内〜アザレアライン、復路をアザレアライン〜ビーナスライン〜中央自動車道諏訪南IC〜東京都内を選定した。加えておくと、ビーナスラインに入ってからはスポーツモードとスポーツ・プラスのモードを選択したが、存分にジェントルでありながらもスポーティというそのフィールを堪能することができた。やはりDBXはアストンマーティンそのもの、だった。真夏には逆のルートで再訪してもいいかもしれない。緑の山々を抜けた先に、あの温泉と地産の美味と、おもてなしが待っていると思うと、適度に疲れているくらいがちょうどいいと思えることがその理由。

そういえば、ボンドが静かに物思いにふけっているのはいつも山奥の小さなコテージがイメージ。イアン・フレミングならきっとここを舞台にすると思うのだが。


扉温泉 明神館
〒390-0222 長野県松本市入山辺8967 TEL:0263-31-2301
(お電話でのご予約・お問い合わせ受付時間9:00〜19:00)
http://www.tobira-group.com/myojinkan/


アストンマーティンDBX
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5039×2050×1680mm
ホイールベース:3060mm
車重:2245kg
駆動方式:4WD
エンジン:4リッターV8 DOHC 32バルブ ツインターボ
トランスミッション:9段AT
最高出力:550PS(405kW)/6500rpm
最大トルク:700N・m(71.4kgf・m)/2200-5000rpm
価格:2299万5000円
https://www.astonmartin.com/ja/


文:前田陽一郎 写真:高柳 健
Words: Yoichiro MAEDA Photography: Ken TAKAYANAGI

文:前田陽一郎 写真:高柳 健

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