なぜ、いま初代ロードスターなのか|オリジナル再生にこだわるショップを探訪

EURO PORT

すべてをオリジナルに戻したい

  
すでに仕上がっていた1.6リッターのVスペシャルに試乗した。ボディはていねいに磨くと艶が戻ってきたので全塗装はしていない。この車は北海道から買い付けたとのこと。相当大事に乗られていた形跡があり、インテリアやエクステリアを含め、ほぼ完全なオリジナル状態が保たれている。オドメーターはまだ1.5万km台。アイドリングは低く安定し、純正マフラーからは澄んだサウンドが響いていた。1速にシフトして走り始める。手首の動きだけでシフト操作ができる5 段MTには、まだ新車のようなしっかり感が残っていた。一般道を中心に30 分ほど走ってみたが、ロードスターの面白さを十分に感じ取ることができた。前後のサスペンションにダブルウィッシュボーン式をおごられた本格スポーツカーのポテンシャルは健在。排気量1.6リッターの本来の性能を楽しむには、高回転をキープしながら軽いワインディングを駆け抜けるほうが適しているのだろうが、実際にそこまで走り込まなくても、その走りの良さをイメージできる完調ぶりであった。

工場に戻って、次は1.8リッターのVスペシャルに乗り換える。こちらは機関系の整備は終わっているが、ステアリングホイール他、まだオリジナルに戻せていないところがいくつかある。先ほどの1.6リッターモデルと同じ“ネオグリーン”というボディ色は、今も十分に魅力的だ。そして排気量の違いは、走りに如実に表れる。B6-ZE型1597cc 直4DOHCエンジンは最高出力120ps/6500rpm 、最大トルク14.0kgf・m/ 5500rpm。それに対してBP-ZE型1839ccは最高出力130ps/6500rpm 、最大トルク16.0kgf・m/4,500rpmを発揮。この2.0kgf・mのトルクの違いは非常に大きい。1.8リッターは低い回転域からの加速でも、グイグイとボディを引っ張っていってくれるが、1.6リッターでは常に高めの回転数を意識しながらシフトチェンジを工夫する必要がある。では1.6リッターは非力なだけのダメなエンジンなのか。それは否である。スポーツカーとしての味わいという点において、やはり現代でも初期型1.6リッターを好むエンスージアストが相当いるのでは。そう感じたほど。

汚れを取り清掃して、徹底的に磨いていくのが再生術の基本。もちろんエンジンを降ろしてボンネット内部まできれいに仕上げていく。この黒いボディのエンジンは一見きれいに見えるが、エンジンヘッドに後からシルバーの塗装が施されて不自然さがあった。もったいないが、これもパーツ交換または塗装剥離でオリジナルに戻していくという。

多くの人に愛されただけあり、まだマーケットに残っている台数は少なくないが、やはりオリジナルの状態のものを見かける機会は極端に少ない。一般的な中古車の場合、マフラー、ホイール、ステアリングホイールなどは非純正が当たり前のようになっており、それを戻すだけで車体がピシッと見えてくるという。

ユーロポートのオリジナル再生術は、メーカーの仕事に対抗するつもりはないという。それより、こういった日本が誇る名車をしっかりと仕上げ、できればいつか海外でも再度こういった車の存在を披露することで、日本の自動車文化レベルの高さをアピールしたいと考えているという。また「レストアは時間が掛かるのが当たり前」そんな風潮を払拭して、クラシックカーにも、もっと多くの方が興味をもつようになってほしいとも田中氏は考えている。「できれば預かってから1カ月で納車できるようにしたい」それを叶えるため、整備スタッフと一緒に試行錯誤を繰り返し、日々熟練度を上げている。

オクタン日本版編集部

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