真のサラブレッドの魂を秘めた超小型ロードスターとは?

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マイクロスポーツカーは、現代の自動車業界にはそぐわないアイデアに思える。しかし、軽自動車という規格のある日本では、ニッチ市場として成立してきた。国外に出るモデルはほとんどないが、スズキ・カプチーノは違う。
 
スズキの湖西工場で生産され、日本では1991年11月に発売。スズキ初の(そして唯一の)スポーツカーとなった。キュートで愛らしい見た目に反して、痛快な走りが追求されている。小さなボディの中で脈打つのは、ターボチャージャー搭載、656ccの3気筒エンジン。標準的な軽自動車のユニットではない。バランスに優れた12バルブのDOHCで、出力は63bhp(軽自動車の自主規制値)だが、嬉々として9300rpmまで回るのである。これをエンジンベイの後方に搭載して、ほぼ50:50の重量配分にし、5段MTで後輪を駆動する。日本ではオプションでリミテッドスリップ・ディファレンシャルも装備できた。

車重は725kgで、単に軽いだけでなく、重要な部分が軽量化されていた。フロントはアルミニウム製ダブルウィッシュボーン、リアは軽量・コンパクトなマルチリンクで、アロイホイールに細いタイヤを履いてバネ下重量を最低限に抑え、ノンアシストのステアリングも秀逸だった。ボンネットと取り外し可能なルーフパネルもアルミニウム製である。
ルーフパネルといってもソフトトップに近く、分割して取り外せる。外したパネルはトランクに収まり、ロールバーとガラスのリアウィンドウはスライドして格納される巧妙な仕掛けだ。
 
交渉の末にイギリスの輸入代理店に説得され、スズキはイギリスで販売できる認可を取得した。こうしてカプチーノは1992年に英国モーターショーに登場し、1年後に1万1995ポンドで発売される。1995年までに1110台のカプチーノが公式に輸入され、イギリスで登録された。888台が赤、222台がシルバーだ。ヨーロッパ大陸に渡ったものも少数ある。その後、新たな排ガス規制のためイギリスでの販売継続には再認可が必要になったが、実現しなかった。
 
日本では1996年にマイナーチェンジがおこなわれ、トルクがやや太く、軽量なアルミニウム製ブロックのエンジンに変わった。こうした後期モデルの一部はステアリングにパワーアシストが備わり、オプションにATが加わった。生産は1997年に終了し、日本での販売も1998年に終わる。カプチーノの総製造数はわずか2万8010台だった。
 
カプチーノのカルト的ファンはたちまち世界中に広がったが、サポート態勢が特に充実しているのはイギリスだ。この10年で数は間違いなく減っているものの、いまだに人気は根強く、過去20年に、かなりの数が非公式に輸入されている。その理由はドライブしてみれば分かる。実に愉快な小型車なのだ。かわいらしいスタイリングや控えめな出力からは想像できないほどドライバーを楽しませてくれる。
 
ポイントのひとつはコンパクトさで、イギリスの裏道でも市街地でも軽快に楽しめる。マツダMX-5が大きすぎると感じるほどだ。軽量さに加えて意外なバランスのよさも、本格的な小さなサラブレッドといった印象を与えている。カプチーノというよりエスプレッソと呼びたくなる。


バイヤーズガイド
価格
一般に状態の悪いものは避けるのが一番だが、大変な安値で手に入る。少々愛情をかける必要のある走行可能なものは2000ポンドから。これ以下のものは部品取りのため解体されることがほとんどだ。4000ポンドほど払えば、メンテナンスの行き届いた素晴らしい状態のものが手に入る。走行距離の短い輸入されたばかりのものは6000~8000ポンド、特別なものはそれ以上の値が付く。イギリス仕様にプレミアは付いていない。コンディションが何よりも重要だ。日本仕様車はヒストリーが揃っていないこともあるので、イギリス仕様車のほうが確実だろう。

□注意点
エンジンの信頼性は高いものの、定期的なメンテナンスが不可欠で、3000マイルでオイル交換が必要。ギアはシンクロの弱さが有名だから、異音のチェックが必要だ。アルミニウム製の分割式ルーフパネルは乱暴に扱われがちなので、へこみなどがないか確認すること。錆にも注意。すぐ分かるのはシルとホイールアーチだが、アンダーボディをよく調べることをお勧めする。

words; Matthew Hayward 編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Transcreation:Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) Translation:Megumi KINOSHITA

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