150年以上の歴史を持つオークション会場│20台のコレクションを訪ねて

Tomonari SAKURAI

20年以上前のこと。パリ滞在の時には、ほとんど毎日ここオテル=ドゥルオーに足を運んだ。ここは1852年にできたオークション会場だ。いってみればアートの市場だ。19世紀パリがアートビジネスの中心地となるとその美術作品のオークションが盛んになり場所が必要だとして、ここができた。この建物を使って各オークションハウスがオークションをおこなうのだ。オテル=ドゥルオーに入るといくつもの部屋に分かれていて絵画であったり、家具であったり、宝石やファッションなどのオークションが開かれる。

パリ9区の区役所のファサード。

オークションの日までの数日前は下見会になっており、出品される商品を品定めできる。時に博物館や美術館も持っていないような作品が並ぶ。それを眺めるだけでも楽しい。欲しければ購入することも可能というものになっている。インターネットオークションが一般に浸透すると、ここは閉鎖するだろうといわれたが、多くのオークショニアがより一層盛り上がっているように反して盛況なのだ。ネットを活用して遠方からもライブでオークションに参加可能。ネットオークション以上に自分の目当てのものが近づいてくると心臓の鼓動が高鳴りはじめるエキサイティングな取引に参加できる。

野外なので早朝の雨で濡れている。9区の区役所前に並んだロールス・ロイス。一番手前は戦後に作られた6気筒のシルバーレイス。予想落札価格は380万円から640万円。

さて、このオテル=ドゥルオーにはここのところ毎週通うようになってきた。美術館や博物館が外出禁止令でもう半年近く閉まっているのに対し、ここでは色々な作品を無料で、何なら手に取って鑑賞もできるのだ。一通り見た後、翌週のオークションの予定などをチェックしていると車のオークションがあるじゃないか!早速そのオークショニアに連絡し撮影許可を得た。今回のオークションをしきるのはパリにあるMARC-ARTHUR KOHNだ。20台のコレクションを販売する。カタログの表紙にロールス・ロイスがあるように半数近くがロールス・ロイスとなる。それらの車の展示だが、さすがにすべてはこのオークションハウスのオテル=ドゥルオーには収まりきらない。そこで隣にあるパリ9区の区役所のファサードに並べられた。18世紀に建てられた個人宅が今は役所になっている。

区役所のファサードにある第一次世界大戦の9区からの戦没者が書かれたモニュメントと1923年シトロエンTYPE C 5HP。予想落札価格は65万円から130万円。

そのファサードが会場となっている。オークションのことを知らずに普通に市役所を訪れた人たちがそこに並べられた車達に足を止めて見入っている。設営の早朝は雨だったので濡れた車両。それでも下見に来ている客もいて目当ての車のコンディションを確認している。今回のオークションで一番気になっていたのはジャガーDタイプだ。係に聞くとそのジャガーはオテル=ドゥルオーの入り口にディスプレイされている。今日は他にも土曜におこなわれるオークションの下見の初日。入場を制限しているのもあるが外まで長蛇の列。ようやく中に入るとお目当てのジャガーを挟んでパナール・ダイナX86とジャガーXK150クーペの3台がやや窮屈に展示されていた。

今回の目玉の1つ1956年製ジャガーDタイプレプリカ。XK140をベースとしたレプリカで公道を走れる上に、本物のDタイプより入手しやすい価格となっているのも魅力。予想落札価格は1000万〜1300万円。

霊柩車仕様の1962年ロールスロイス・シルバー・クラウドIIIはパリ7区のプレタポルテのブランドのデリバリー用に塗装されたもの。予想落札価格は320万円から510万円。


このジャガーDタイプはXK140をベースとしたアルミボディを持つレプリカで、Dタイプが製造されていた1956年に作られたもの。3442cc直列6気筒にウェーバーがつき260馬力になっている。書類が残っているのでこのまま公道を走ることが可能なのだ。これらのオークションは土曜日27日フランス時間14時スタート。ネットから入札が可能。入札しなくともそのオークションをライブで見ることもできる。アクセスはこちらから。

文・写真:櫻井朋成

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