「重い障害に打ち勝ちながら校長先生が生涯愛用した車」

Photography:Jordan Bulters

ラゴンダ LG45ラピードは、1930年代のもっとも華やかな英国車の一台である。ここに紹介するLG45は最初のオーナーが重い障害に打ち勝ちながら生涯愛用した車だった。

話しは1984年に遡る。それは、このラゴンダJG45ラピードの当時のオーナー、ロジャー・ファースが、ウェストミッドランド地方ウスターシャーのマルバーンヒルで開催されたVSCC(ヴィンテージ・スポーツカー・クラブ)の設立50周年を祝うイベントに参加した帰路のことだった。ちょうど隣町のシュロップシャーを通過中、ホイットチャーチ村のあたりで給油のために止まろうとした時、突然の出会いがあった。

「突然、古いぼろ車が結構な速度で現れ、乱暴なスキッドで車を止めるとドライバーが車から飛び出して叫んだんだ。『僕はその車で免許試験に受かったんだ!』って」とロジャー。この偶然の遭遇は驚くべきことの連続だった。まず、その叫んでいた人物、リチャード・ニールが免許試験に受かったのはシュロップシャーからは遠く離れた、ベッドフォードシャーであることだ。この二カ所は120マイルも離れた、現在でもM1とM6ふたつのモーターウェイを利用しても2時間以上かかる。さらに、免許を取得したのは1930年代の終わり、すなち半世紀前も前のことだ。


 
当時、リチャード・ニールはベッドフォードスクールの生徒だったが、彼の教師がこのラゴンダを購入したというのだ。リチャードは、今でもその車が納車された1937年7月30日に、ボーイスカウトのユニフォームを着た彼自身がこのラゴンダの脇に立っている写真を持っている。
 
戦前の英国では、ラゴンダLG45ラピードは市販車の中で最もエキサイティングなものの1台であった。軽く100mphを超える高い性能を持ち、後にアストンマーティンDB3Sなどをデザインするフランク・フィーリーの手になる、ラゴンダ社自製の"礼儀正しく"グラマラスなコーチワークなど、大陸製の高級車がまとっていたエレガントな雰囲気を備えていた。

編集翻訳:小石原耕作(Ursus Page Makers) Transcreation:Kosaku KOISHIHARA (Ursus Page Makers) Words:Mark Dixson Photography:Jordan Bulters

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