皆の想いと共に走る 北京-パリ・モーターチャレンジに挑戦する日本人女性ドライバー


 
しかし身近に北京-パリ参加経験者がおらず、とにかく具体的な情報が少ない。ここでまた彼女を助けてくれることになるのが人との縁である。好きなことに熱中できる環境を作るために"普通のOL "を辞めて自身が興した会社で、こもちゃんが大切にしているのは「人材」ならぬ「人財」だと公言しているように、人との繋がりは彼女にとって不可欠なもの。知人からの縁で今度はパリ-ダカール経験者と巡り会う。食事やテント、1カ月以上にわたる道中での細かな必需品から、トイレの心得やいくつもの国境を越えるために必要な予防接種といった保健衛生的な話まで、経験に裏打ちされた的確で実用的な助言をパリ-ダカール出場歴のあるレジェンドから直々に教わることができた。これも、彼女の目標に共感して応援してくれる人がたくさんいることの証だろう。
 
生来の資産家でもなく、"普通のOL "だったこもちゃんが、ここまで真摯にクラシックカーラリーに挑み続ける理由をたずねると「お金があるわけでもないのに『こんな小娘が何やってるの?』と思われるかもしれないけど」と笑って前置きしながらも、まっすぐな眼差しでこう答えてくれた。



「私みたいな人でもこうして参加できるんだよ、と伝えることで、より多くの人にクラシックカーラリーを知ってもらいたい。自分だけのドラマではなくて、皆の夢になり誰かの力になればいいと思って挑戦を続けている」と。
 
2022年の北京-パリではドライバーとしてもステアリングを握る予定のこもちゃん。その練習のために2020年には国内外のさまざまなクラシックカーラリーに参加する予定だったが、コロナ禍により今年の参戦計画はすべて白紙になった。そんな彼女にとって「走る」とは何か?を聞いてみた。


 
曰く、それは目的地まで辿り着くための手段ではなく、夢を実現するために行動し続けることだという。彼女にとって、北京- パリ出場は壮大な夢であるのは事実だが、北京からパリを走破することがいちばんの目的ではなく、その夢を実現するために走り続けている日々の出来事ひとつひとつが大切なドラマなのだ、と。困難に直面しても、どうやったら夢を実現できるか、他の方法を考えることも「走る」ことの一部。「だって、はじめて国内ラリーに参加したときも、車は途中で壊れちゃったけどヒッチハイクでたどり着いたじゃない?」といたずらっぽく笑うこもちゃん。2022年に向けて少しでも多くの荷物を積めるよう、10kgのダイエットにも励んでいる。

多くの人との縁に支えられながら皆の夢を乗せて北京- パリにチャレンジする、彼女の本気をこれからも応援していきたい。


参加者だけが入手可能? 貴重な北京-パリのパンフレット

EVENT GUIDE

参加資格、車両規定、必要な装備などが網羅されている。砂漠のテント泊での心得(道中8泊ほど)や通過する各国の最高/最低気温(例:モンゴルは最高40 ℃/最低5℃)や、食事の説明(例:提供される食事は安全、アルコールハンドウォッシュも完備、非常食用に乾燥食品を北京のホテル近くで調達するのがお勧め、など)といった具体例の記載が嬉しい。


REGULATIONS

車両のクラス分けや参加費用の内訳、ペナルティーの対象、サポート体制、賞典などのレギュレーションが記された冊子。参加車両カテゴリーは「A:Pioneer(1920年製まで)」「B:Vintage(1921年~1930年製)」「C:Vintageant(1931年~1947年製)」「D:Classic(1948 年~1975年製。例外として1985年まで)」「E:Special」の5つ。爰野さんはBカテゴリーにエントリーしている。


CAR PREPARATION GUIDE

事前準備についてのアドバイスが満載。不要なモノは持参せず軽量化を、スペアパーツは実際に装着して動作確認してから積むこと、スーツケースはソフトなトラベルバッグを推奨、オクタン価の低い燃料でも動くことを確かめておきましょう(「モンゴルのRONは95だと言われるかもしれないけれど、違います」とこの冊子では断言)といった具合だ。

文:湯淺央子(本誌) イラスト:あべ あつし Words:Chikako YUASA(Octane Japan) Illustration:Atsushi AVE 

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