スペチアーレの中のスペチアーレ !? 特別なフェラーリF12tdf

RM Sotheby's

フェラーリF12tdfは2015年のフィナーリ・モンディアリで発表された当時、フェラーリの中で最も速い自然吸気モデルだった。スクーデリアフェラーリのF1ドライバーであるセバスチャン・ベッテルとキミ・ライコネン、会長のセルジオ・マルキオンネが発表会には登壇し、そこに居合わせたフェラーリのVIPオーナーたちは発表会に胸を踊らせていた。

そしてその会場で実際にお披露目されたF12tdfこそ、シャシー番号#213364、外装色がジアッロ・トリプロ・ストラトでインテリアがネロ・アルカンターラのこのF12tdfなのだ。F12tdfはF12ベルリネッタと比べさらに魅力的なスタイリングで、tdfという名前は1950年代後半から1960年代初頭にかけて活躍したオールドフェラーリをオマージュしている。発表会ではセバスチャン・ベッテルが実際にこのF12tdfのステアリングを握り、数周のデモンストレーションをおこなった。



フィナーリ・モンディアリに続いて#213364はマラネロに戻り、フェラーリの国際メディアテストドライブイベントで使用された。世界中の自動車ジャーナリストが集まったこのイベントでは、イギリスBBCのトップ・ギアでお馴染みのクリス・ハリスなどもこの#213364を運転した。

この車のプレスツアーはまだまだ続き、イギリスにも上陸した。トップ・ギアでF12tdfが特集され、再びクリス・ハリスの手によってポールリカールサーキットを走った。モータージャーナリストのオリー・マリアージやアンドリュー・フランケルなども#213364を運転し、皆一様にF12tdfを褒め称えていた。さらにユーロファイタータイフーンという戦闘機と撮影をするなど、#213364は他のF12tdfとは一味違う経験をしてきた車なのだ。



プレスツアーが落ち着くと、#213364は2016年12月にマラネロに再び帰ってきた。そして2017年2月から2018年2月まで「ドライビング・ザ・スターズ」展でモデナのエンツォフェラーリ美術館に展示された。その後はフェラーリの副会長であるピエロ・フェラーリの署名付きの「エンツォ・フェラーリの生誕120周年を祝うため」という言葉が刻まれたプレートが装着され、ワンオフのモデルとしてエンツォ・フェラーリ美術館で開催されたオークションに出品された。



このオークションの収益はすべて慈善団体に寄付された。ちなみにこの慈善団体は、エンツォ・フェラーリが彼の息子であるディーノの名のもとに設立したアソシアツィオーネ・セントロ・ディーノ・フェラーリという慈善団体で、筋ジストロフィー、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症などのさまざまな病気の研究に資金を提供している。

最終的に#213364はイギリスの著名なフェラーリコレクターによって落札され、ピエロ・フェラーリやフェラーリの最高マーケティング責任者であるエンリコ・ガリエラも同席するプライベートセレモニーにて納車された。そしてフィオラノでのシェイクダウンが行われた。



現在#213364の走行距離はわずか4000マイル(約6500km)で、そのうちのほとんどはフェラーリが所有しているときに刻まれている。個人所有時には240kmしか走っていない。2019年7月9日にはフェラーリのメインディーラーであるメリディアンモデナによってサービスを受け、2020年の10月16日の最後のサービスからは約100キロしか走行していない。さらにフェラーリ・クラシケが発行した「アテスタトパー・ベチュア・シリー・スペチアーレ」という特別車両であることを証明する書類も付属する。

フィナーリ・モンディアリという最高の晴れ舞台に立っただけでなく、エンツォ・フェラーリの生誕120周年を祝うための車としての称号を獲得し、世界中の自動車メディアにも取り上げられた#213364は、生産された799台のF12tdfのうち最も特別なF12tdfであるといえるだろう。

オクタン編集部

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