ロイヤルエンフィールドに見る、ベーシック・オブ・モーターサイクルの今

自動車がそうであるように、オートバイの高性能化、用途別の多様化が加速している。と同時に、エンジンその他駆動系はブラックボックス化が進み、ハイパフォーマンスマシンはその能力の半分も一般道では実感できなくなりつつある。当然、そこにユーザー(=オーナー)が自分好みのカスタマイズを施せる範囲はますます小さくなっている。それが工業製品の正しい進化ではあるものの、ことオートバイに関しては「人馬一体」との言葉のとおりに、気軽に乗れて、少々のモディファイなら自分で施し、その気になれば1日中フラフラと気の向くままに走っていたい、そんな存在であって欲しいというのも素直なところだろう。

ロイヤルエンフィールドは1901年にイギリスで創業、今年120周年を迎える老舗のオートバイメーカーだ。現在はインドのアイシャー・モーターズの一部門となってはいるが、むしろ巨大グループの中に入ることで、ユーロ5はじめ、さらに厳しくなる規制をクリアしながら、今なおクラシックな趣の”オートバイらしい”オートバイを生産している。

東京都杉並区にオープンするショールーム


創業120周年の今年3月(予定)、東京都杉並区にブランドショールームがオープンする。そのショールームのお披露目を兼ねて、現在のロイヤルエンフィールドを代表する、コンチネンタルGT650、INT(アイ・エヌ・ティ)650、ヒマラヤ、という3車種に試乗させていただいた。試乗したのは編集長の堀江史朗、クリエイティブ・ディレクターの前田陽一郎。ともに10代からオートバイに乗り続けるオートバイフリークのふたりのインプレッション。


前田の評

ロイヤルエンフィールドといえば、スプリング付きの前後別体のシートがクラシックな「クラシック500」だが、あの名車もユーロ5をクリアできずにファイナルエディションになってしまったことが残念。その代わりと言ってはなんだが、コンチネンタルGTとINT650は今後のロイヤルエンフィールドのベーシックモデルになるのでは、と気になっていた。

ベーシックモデルになりそう、と思わせてくれたのには明確な理由がある。

まず、フレーム形状がベーシックであること。コンチネンタルGTはクリップオンハンドル、INT650はアップハンドルに合わせて、シートとステップを変更しているわけだが、どちらもフレームには一切手を加えていないにも関わらず、デザインとしてまるで違和感がない。これは1970年代のオートバイがそうだったように、シンプルなフレーム形状によるところが大きい。近年のヨーロッパのビルダーたちがこぞって70〜80年代の国産バイクや、現代のネオクラシック系車種をカスタムする際にも、シートレールを直線基調にリメイクしているが、このベースフレームならその必要はなさそうだ。
 
コンチネンタルGT

前後ともに18インチホイールを採用していることも大きい。タイヤの選択肢に多少の制約はあるにしても、クラシックな雰囲気を作るのに前後18インチというのは嬉しい設定だ。もちろん走ってみればわかるが、ハンドリングはコンチネンタルGTもINT650もともにまったりしている。正直にいえば、峠やタイトコーナーを攻める走りよりも、街中を気持ちよく走るのに適しているともいえるだろう。

INT650

 
さらに、並列2気筒の空冷エンジンは、空冷というシンプルな機構、フィンが強調された懐かしい造形が、まさに往年のオートバイのエンジンそのもの。650ccの排気量は270°クランクを採用することで、下からの”ツキ”の良いトルク感あるフィーリング。街中でのストップ&ゴーが楽しい味付けだった。エンジンは全くの同型ながらもマッピングの書き換えで、コンチネンタルGTが3000〜5000回転あたりに”旨み”を持ってきているのに対し、INT650は2000〜4000回転が美味しい味付けがされているところも、懐の深さを感じさせる。
 
つまり、この2つの650モデルは、ロイヤルエンフィールドにとってはモディファイの幅がとてつもなく広く、派生モデルを作りやすいはずだし、ユーザーやカスタムビルダーにとっては素晴らしく”いじり甲斐”のあるオートバイのはずだ。

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