「安価で元気のあるGT」喜劇俳優が愛した素晴らしいアストンマーティン

Photography: Alex Tapley



我々はこのフォトセッションで、セルロイドのフィルムに映し出された車の姿が、本物の姿からかけ離れているとは感じていない。 「泥棒気分で運転する」という表現が頭に浮かび、映画の逃走シーンをいくつか再現する際、タイヤがわずかに抵抗してくるように感じられる。パトカーの追跡を合法的に再現することは、滅多にできるものではない。ただ。青服の少年たちがこのセッションに興味を持った時に、本物の少年たちなのか、はたまた窃盗団なのかと尋ねることは我々にもできる。車は映画の中で素晴らしい姿で登場し、ハードに運転されていた。セラーズと映画の製作者はそれ見て楽しんでおり、またそのことの理由は簡単だ。比較的控えめな変更で、GTが標準のDB4とこれほど異なる姿になったのは驚くべきことだ。アストンは重量感に定評があるが、この車も軽く俊敏さを感じられる。まさにGTカーであり、同時にスポーツカーでもあるのだ。

ドライバーが、交通量や制限速度に縛られず、快適さは二の次で高速の旅を実現するためにすべてが設計されている。ダッシュボードのシンプルな純粋さは、車全体に素晴らしいスタイルと個性を与えている。追加のエンジン容量の影響は明らかで、パワーとトルクを増加させ、DB4GTでの運転を楽なものにしている。

もっと挑戦してみよう。まず曲がり角に来ると、ノーズが重く常にスロットルを使って運転する必要があることがわかる。それをマスターすると、今度はそのパワーによって軽い身のこなしで思い通りにノーズを向けてくれるだろう。しっかりとしたディスクブレーキは決してすり減るようには思えず、ほとんどのメーカーが参考にするレベルの感触を提供している。すらりとしたピラーからの素晴らしい眺め、正確なギアチェンジとコントロール、コンパクトさ、力強いエンジン、これらすべての特性が、大陸横断をスイスイとこなせる車のように、レースをこなすのにぴったりな車なのだ。そして、焼けるような暑さの夏の日でさえ、しっかりと要求通りに機能する。



アストンマーティンはDB4 GTを75台のみ(および20台のザガートバージョン)を製造し、そのうち8台はフェルサムで軽量仕様とされている。今日このモデルは、戦後の最も重要で印象的なアストンマーティンのひとつとしてますます伝説的な地位を獲得しており、フェラーリ250SWBの値にどんどんと近づいている。これは、ジョン・ワイヤーのDB4を5インチ切り取ろうという、ほぼ投げやりともいえる指示から生まれた素晴らしい結果だ。

DB4 GTが今日でも印象的な車であると評価を得るのであれば、1962年当時はこの世のものとは思えないほど凄い車という評価であったに違いない。確かに、当時人気のあったウォルズリーのパトカーは、『新泥棒株式会社』を観ても分かるように、アストンについて行けていなかっただろう。では、アストンとカーチェイスを繰り広げた警官の一人から、最後の言葉を頂こう。「行け、捕まえろ」と促され、 「違うんだ、聞いてくれ」と彼が答えた。「化けの皮は剥いだぞ。遂に尻尾を掴んだ」その時にはもう、アストンはとんずらして消えてしまっている…

Words:Stephen Archer   訳:オクタン編集部   Photography: Alex Tapley

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