安価で手に入るスタイリッシュな英国サルーンとは?

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スマートで洗練されたローバーP6は、改革がテーマだった。1963年に登場したP6 2000は、ローバーの新時代を象徴する存在となる。イメージがやや古くなっていたP4とP5の後継モデルとして構想され、エンジニアが中心となって開発を率いた。そのため、走りが素晴らしいのはもちろん、見た目も未来的だ。
 
ローバーP6のスタイリングの鍵は、巧妙なボディの製造方法にあった。シトロエンDSと同じように、すべてのボディパネルをインナーモノコックにボルト付けしたのだ。錆を寄せつけないことを“願って”の選択だった。また、独立懸架と4輪ディスクブレーキという異例の高度な仕様だった。


 
歴史が示すとおり、完全にエンジニア任せにすると、コストの面で成功しないことがままある。当初はハイドロニューマチック・サスペンションと水平対向4 気筒エンジンも構想に上ったが、それは経営者のウィルクス兄弟が却下した。結果、P6には新しい2リッター 直列4気筒エンジンが搭載された。賢明な選択だ。
 
生産は、ソリハルのロードレーンにあったローバーの工場で1963年に始まり、競合するトライアンフ2000の1週間前に発売された。抜群のハンドリングと頭脳的なデザインが評価され、1964年に第1回のヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞する。ただひとつの不満は、出力90bhpの4気筒エンジンがやや洗練さに欠けることだった。だが、P6は大好評を博し、需要に生産が追いつかないほどになった。ストライキなどでたびたび生産が滞ったのもひとつの理由だ。しかし1970年代までに徐々に安定していった。
 
1966年に最初の大きな変更が加えられ、ツインキャブレターを備える出力114bhpの2000 TCが投入された。最高速度110mphのパフォーマンスに加えて、性能の高いガーリング製ブレーキを装備するなど、いくつかの変更が施された。その後も販売は伸び続ける。1968年4月には、ビュイック設計のアルミニウム製V8エンジンの製造権を買い取って、これをP6に搭載。当初は3段ATのみだったが、144bhpへと大幅なパワーアップを果たした。パワー以上に重要なのは、P6にふさわしい洗練さが備わったことだ。
 
人気は高まり続け、1971年には出力150bhpの3500Sが登場。2000の4段MTを強化したマニュアルギアボックスがV8と組み合わされて、真のスポーツサルーンとなった。
 
エンジンラインアップの最後の変更として、1973年に2200が登場する。この新モデルは2リッターエンジンをボアアップしたバージョンを搭載し、出力は98bhpで、トルクが向上。2000と同様にキャブレターはシングルとツインの2バージョンがあった。1976年6月に後継のSD1が登場するまで販売は好調で、2200と3500 の生産はSD1と平行して1977年3月まで続いた。
 
3.5リッターのローバーV8エンジンを搭載する後期モデルの魅力もあり、P6は常に人気のクラシックカーだったが、今も入手可能な価格に留まっている。近年は堅調な値動きだが、それでも1万ポンドも出さずに素晴らしい1台が購入できる。とりわけ魅力的で非常に使いやすい英国クラシックカーだ。しっかりした1 台をきちんと選んで、この時代随一のサルーンカーを楽しんでほしい。

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Transcreation:Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) Translation:Megumi KINOSHITA

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