たったの3馬力 ?! 運転免許がなくても乗ることができた車とは

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1980年代のフランスでは、14歳以上の人なら誰でも、50cc未満のエンジン搭載車であれば運転することができた。運転免許証や道路税の支払いも必要なかったのだ。この法律により、リジエ JS4のようなマイクロカーは、自由を切望する10代の若者だけでなく、高齢者や、罰則で運転免許証を失効している人からも人気があった。

そのユニークな箱型の見た目にもかかわらず、小さなリジエ JS4は、1980年代初頭にフランスでベストセラーとして記録されることになった。この人気はいくつかの要因にあったといえる。JS4はフランスのF1チームマシンやスポーツカー製造で知られるリジエによって製造されたものであること、運転免許証なしで簡単に運転できたこと、安価であったことがあげられる。



リジエは、ミドシップエンジンのスポーツカーであるリジエJS2のようなスポーツカーの製造もおこなっていた。しかし、1973年のオイルショックにより、スポーツカーの売上が急速に減少し、その結果、リジェは代替品を検討し始め、1978年にはルノー用のトラクターキャブを製造していた。このトラクターキャブ製造は、後にマイクロカー製造に役立つこととなる。決して、速く走るための車ではなく、移動のための車であるため、50ccエンジンから発揮されるパワーはわずか3.15馬力。この遅さのため、免許がなくても乗ることができたのだ。



また、1976年、リジエはF1チームの"Equipe Ligier"を立ち上げ、96年まで成功をおさめていた。それは、ロードカーを販売するにあたっても効果的だったようで、多くの10代オーナーは貯金をためてリジエJS4を購入し、それにEquipe Ligier F1ステッカーを貼っていたという。Equipe Ligierも、特別に塗装されたJS4をピット車両として使用していたことがあり、現在それはレーンモーター博物館に所蔵されている。

購入する人の選択肢を広げられるよう、1981年後半、そのラインナップはJS4スタンダード、ラックス、グランドラックスとなり、それぞれ対応する装備とトリムが追加された。しかし、すぐに品質の問題が発生し始める。スチール製のボディは丈夫だったものの、トランスミッションなどの不備が露出してきたのである。アップデートされながら1983年まで生産されたが、スチール製ボディもあってか現在ではほとんど見られることがない。しかし、その価値は再び見出されているようで、2020年9月に開催されたオークションでは推定落札価格(500~1000ユーロ)を大きく上回り、4214ユーロで落札された。

オクタン編集部

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