継承と革新を知る週末の旅 新しくなったルノー・ルーテシアで行く軽井沢

フルモデルチェンジを経た五代目ルノールーテシアは、リリース直後から高い評価を受けている。Bセグメントに当たる小型車が、なぜここまで注目を集めているのだろう。それは恐らく、乗用車としてのリアルな価値を正しく継承し、時代に合わせた革新が加えられているからに違いない。そこで新型ルーテシアを駆って、晩秋の軽井沢へ出かけてみた。東京から片道約二時間弱。サイズを越えたドライビングプレジャーに加え、豊かな時間の過ごし方に気付くことができた。

ジェニファー・L・スコット著『フランス人は10着しか服を持たない』には、現代フランス人のもつ豊かさの基準が描かれていて興味深い。どうやらフランス人にはモノを大切にしながら、少しずつ合理的にアレンジを加えていくという価値観にも似たスタイルが根付いているようだ。日本風に言えば温故知新に通じる発想だが、この考え方はフランスにおける生活の隅々にまで行き渡り、アイデンティティともなっている。お気に入りのジャケットを数着揃えたなら、いたずらに買い替えることを控えつつ、それらをベースに時々のシャツや小物を添えて装いを楽しむというのがその典型だ。
 
また、フランス人は余暇時間を楽しむことが本当に上手い。むろん効率よく観光スポットを巡るというような意味ではない。自分の時間は自分の尺度でじっくりと味わうことが余暇時間であることをわかっている。そんなフランス流の価値観の延長線上に、ルノーのルーテシアはある。

フランスのエスプリを凝縮させた万能の小型車だ。初代モデルが"パリの小さな高級車"というキャッチフレーズを引っ提げ登場したことを覚えている人も多いだろう。日本ではBセグメントなどの小型車は、往々にして廉価モデルと見做されがちだ。しかし富裕層好みのひとつである小型車文化が成熟した欧州では、小さな高級車という考え方は、ある意味トラッドだ。それが証拠に初代ルーテシア・バカラの内装などは、贅沢な革張りインテリアの他、ハッチを開くと現われるパーセルシェルフの下にレザー製コートケースを奢るなど、洒落者の琴線に触れる仕立てとなっていた。
 
2020年に登場した5代目となる新型ルーテシアは、いわゆるフルモデルチェンジを経つつも、初代の哲学をしっかり踏襲した温故知新な進化型。エクステリアとしては先代の曲線的かつ官能的なフォルムを生かしつつ、適度に直線を取り入れ精悍な印象とスポーティさを彷彿させるルックスだ。ルノー共通のフロントマスクでありながら、ルーテシアだとハッキリ分かるデザインも非常に好ましい。

南軽井沢にて7万坪の敷地を誇る、ルグラン軽井沢ホテル&リゾート。ヨーロッパ風のクラシカルな建物に、新型ルーテシアが良く映える。

今回お借りした最上位グレードとなるインテンス・テックパックにはクラストップレベルの運転支援システムに加え、車両全体を見渡せる「360°カメラ」、ステアリング&前席シートヒーターなどを奢る。
 
そんなルーテシアを本国のフランス人たちはどう使っているだろう。きっと休日には都市を抜け出して、郊外へと出かけているに違いない。例えばパリ在住ならば、ランチボックスにご馳走を入れてクラシックな街並みが残るシャンティイを目的地にするような。そんなイメージも手伝って、軽井沢へ向かうことにした。日本三大避暑地として知られる軽井沢は、一方で冬は積雪が少なく、落葉した針葉樹の森は、散策するのに恰好のフィールドに溢れる。夏に比べれば随分静かになった街は、それでも別荘保有者たちにとっては静かで過ごしやすいという。近年は働き方や価値観の多様化も伴って、都市部からの移住者もあらためて増加傾向にあるようで、その片鱗を覗いてみたい興味もあったというのがもうひとつの理由だ。


文:長谷川剛 写真:高柳健 コーディネイト:星野雅弘 Words:Tsuyoshi HASEGAWA Photography:Ken TAKAYANAGI Coodination:Masahiro HOSHINO

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