ル・マン クラシックに初めて参戦した日本人ドライバーにインタビュー



ジャコバン広場で車検を受けたり、ピットロードには木製のドアから入ったり。また、周りが本物のル・マンマシンばかりだった瞬間を忘れることはないという。ここ数年、ル・マン クラシック参戦の相談を受けることがよくあるが、国際C級ライセンスが必要であり、様々な意味で胆力を要するので「誰にでも勧められるものではありません」と鈴木さん。ちなみに第1回参戦マシンは今でも大切に保管している。
 
自身の体験から最近では顧客に、ロードカーではなくナンバーを付けないレーシングカーを所有する選択を提案している。まだ日本に入ってきていない名車もたくさんあり、エンジンのバリエーションも豊富なので、車の真の楽しみを味わえるからだという。グッドウッドやル・マン クラシック、ラグナ・セカなどを現地で観る日本人が増えてくると、やはり本物のクラシックレーシングカーが欲しいという声が徐々に増えてきているそうだ。だが実際に買ったとしても、今のままではどう遊んでいいかわからない。日本でも趣味でレーシングカーが走れるような文化を創っていきたいと鈴木さんは考えている。

「日本の自動車趣味は、やっとその入り口に立ったという感じですね。逆にイベントの敷居も、もっと高いレベルで企画したほうがいいかもしれません。まだ日本では"自分の車は自分で走らせたい"と考える方が多いですよね。でもヨーロッパではほぼ馬主のような感覚で、ドライバーを雇って走らせることが結構当たり前になってきています。当然ドライバーが多少ぶつけたところで何も文句を言わない。そんな懐の深さもありますしね」


 
日本でもレーシングカーの本当の全開サウンドを轟かせたい、そんな想いが鈴木さんにはある。たしかに車好きでもモータースポーツにまったく興味がないひとは少なくはないが、一度本格的なレーシングカーの世界を目の当たりにすると、一気にハマってしまった場面を今までにたくさん見てきたからだ。

「イベントでクラシックカーを楽しむにしても、走らせるのは年に2、3回という方が圧倒的に多いですから。冷静に考えてみると、わずか数日間公道を走らせるために車検を取得することが、実は意味がなかったと気付かれる方も多いんですよね」
 
然もありなん。鈴木さんはホームページで、自己紹介をこう括っている。"長年培った独自の美意識でクラッシックカー業界を洞察し、顧客との長期にわたる信頼関係を構築できるよう日々さまざまな問題に取り組む"
 
若くして世界のモータースポーツの最高の舞台を視てきた経験をもって、これからの日本のクラシックレーシングをいかに楽しませてくれるのか、これからの活躍に期待したい。


鈴木英昭
イタリア車の専門店「CORGY’S」代表。1969年東京出身。幼少時から自動車、特に1960~70年代レーシングカーの世界に強い興味をもつようになる。第1回 ル・マン クラシックへの参加は最高の思い出だという。

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