「ジェームズ・ボンドのように」ロータス・エスプリをダンスさせながら

Photography:Justin Leighton



その前に、はっきりさせておくことがある。私のエスプリは白だが、スクリーンに現れたボンドカーはカッパー・ファイアと呼ばれるボディカラーにペイントされていた。コルティナに先立ってギリシャのケルキラ島(コルフ島)で撮影されたシーンでは白のターボ・エスプリが用いられたが、これでは雪のなかで映えないと判断した監督が茶系のボディカラーをリクエストしたのだ。



おかしなことに、映画のなかではボディカラーが変わったことに関する説明が一切ない。ダメージを負ったエスプリがQワークショップでリペアされている現場を見たボンドは「直してもらえて嬉しい」という主旨のセリフを口にしているが、ペイントに関してはひと言も触れていない。物語の整合性に神経質な観客であれば、このような手抜きに激昂したに違いない。私自身は、この作品を通じて白いエスプリを登場させるべきだったと考えているが、きっと皆さんも同意してくれるはずだ。映画が本来あるべきだった姿を求めて、私たちはツィスティーなホテルのドライブウェイを下り、そこから数kmほど離れたスキージャンプの競技場へと移動した。

森を通り抜けるデコボコ道を進み、凍り付いた巨大な施設の地下にエスプリを駐車したとき、私の心は高鳴っていた。もしもあなたが『ユア・アイズ・オンリー』を観たことがあるなら(もちろん私は取材の一環として観ている。最近の大げさな作りの007 映画と違って、面白く、そして深い感動が味わえる素晴らしい作品だ)、ジェームズ・ボンドがこのジャンプ競技場を滑り降りる有名なシーンをご記憶だろう。

私はいま、そのジャンプ台にきている。ここはスロープから宙に向けて踏み切るポイントで、見下ろすと、遠くに着地するエリアがあった。現代の選手がここからジャンプすれば、おそらく着地するエリアをはるかに通り越して丘の向こうまで飛んでしまうことだろう。スキージャンプの技術は、それほど目覚ましい勢いで進化を遂げているのだ。


どうしても訪れたかった場所へ・・・次回へ続く。

編集翻訳:大谷達也 Transcreation:Tatsuya OTANI Words:Harry Metcalfe Photography:Justin Leighton

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