癒されて、委ねることができる安心感。疲れ知らずのボルボV90で金沢へ

Octane Japan

「これは困ったことになった…」というのが最初の本音。何が困ったのかというと、ボルボV90の試乗会に編集長の代役として筆者が急遽参加することになったのだ。普段はオフィスワークが多く、ニューモデルの試乗会に参加することは滅多にない私に、都内から金沢までの片道およそ500kmのロングドライブが務まるのだろうか。一抹の不安を覚えながらも、ボルボ・カー・ジャパン広報部からの「女性目線の長距離試乗記も大歓迎です」というあたたかい言葉を信じて金沢を目指すことにした。

ロングドライブの相棒は10月21日にマイナーチェンジしたばかりのV90。パワートレーンに48Vハイブリッドが導入されたV90 B6 AWD INSCRIPTIONだ。ボディカラー名は「プラチナムグレーメタリック」だが、実物を見るとグレーというよりは落ち着いたブラウンのようにも見えて、とてもシックでラグジュアリー。

室内は明るく広く、機能的にまとめられている。白いファインナッパレザーのシートカラー名は「ブロンド」。きらめく美しさを感じさせる素敵なネーミングだと思う。インテリアが女性に人気というのも納得だ。サンルーフから注ぐ日差し、上品かつキラキラと光るスイッチ類など、ドライブする前から気分が“アガる”。上がるといってもアドレナリンが湧き出るのではなく、モチベーションが上がるという表現がぴったりだ。本物の木のパネルが多用された上質で落ち着いた空間に迎え入れられた瞬間、穏やかな心持ちで運転に臨む準備が整った。

運転席にさりげなくあしらわれた小さなスウェーデン国旗。ひそかに女性に人気のポイントだという。

キラキラと光をやわらかく反射するパーツが車内に明るさをもたらす。中央のスタートノブは時計回りにひねって始動する方式だ。

圧倒的な解放感を与えるパノラマルーフには、開閉式のサンブラインドが付いている。

平日ということもあってか関越自動車道もさほど混んでいない。一気に金沢へ向かう新幹線とは異なり、せっかく車で行く今回の旅。道中で気になる場所に気ままに立ち寄るのもよかろうと途中のICで降りることにした。

向かった先は、世界遺産に認定された富岡製糸場。明治時代に政府が近代国家設立のため西欧の先進技術を導入して建設された官営模範製糸場である。日本各地から募られた子女が工女として生糸の生産に携わり、日本が誇る高級繊維の絹が世界へ送り出されることになる。最新のボルボと150年近く前の日本の工女、まったく正反対のようでありながら、先進技術を用いた製品づくりへのプライドという共通項があるのが興味深い。

富岡製糸場には駐車場施設がなく、近隣の駐車場へ停めて徒歩で向かう。中には明治初期の建物群がほぼそのままの形で残されている。

寄り道ついでに、今が見頃の紅葉も愛でようと妙義山方面へ。高台までは緩やかなワインディングが続くが、V90はパワーにもゆとりがあって上り坂もまったくストレスなく小気味よく登っていく。その先で出合った色付いた木々は言葉にならないほどの美しさだった。





とはいえ、あまりのんびりしていると金沢に到着するころには真っ暗だ。先を急がなくては…

車両感覚にも慣れてきたところで、ロングドライブには欠かせない運転支援機能をセットしてみた。ボルボはメーカーとして「自動運転」という言葉は使わない。運転するのはあくまでもドライバーであり、快適で安全な運転を支援する先進テクノロジーが車両に備わっているという位置付けだ。



ステアリングホイール左に配置された運転支援機能の操作ボタンはシンプルで直感的にわかりやすい。左右の◀▶で機能を選択したら中央のボタンを押してセット完了、上下ボタンで設定スピードの増減を調整できる。アダプティブクルーズコントロールおよびPilot Assistの使用中に先行車との距離を調整するボタンはステアリングリモコンの右側に配置されている。レバーで操作するクルーズコントロールよりも、基本的な操作に必要なスイッチ類だけが見やすく使いやすい位置に配置されているのは好印象。

クルーズコントロール下での加減速もきわめてスムーズで、ステアリングアシストを使用したレーンキープ機能も頼もしい。もちろん自動運転ではないので常にドライバーが関与するのだが、車両側でも必要なときに先進テクノロジーでサポートしてくれる。言い換えればドライバーに寄り添ってくれる。まるで車にも意思があって、快適に安全にドライブするにはどうするのが最適なのかをドライバーとコミュニケーションを取りながら支援してくれるように感じられた。サポート機能を過信して任せっぱなしにするのは危険だが、このV90の場合は車と対話しながら委ねることができる。そういった安心感はロングドライブの際には非常に心強い。

運転支援機能のサポートを得て心の余裕も出てきたので、今度はサウンドエクスペリエンス=音響についても試すことにした。今回試乗した車両には「Bowers&Wilkinsプレミアムサウンド・オーディオシステム(1400W、19スピーカー)サブウーファー付」が備わる(メーカーオプション)。特筆すべきは「コンサートホール」モードで、これはボルボの故郷スウェーデンにあるヨーテボリ・コンサートホールの音響を再現したものだという。まるでアーティストがその場にいるかのような臨場感あふれるこのサウンドは、特にクラシック音楽を聴く際におすすめしたい。

ダッシュボードの上部中央にある髭剃りのような丸い物体もBowers&Wilkinsプレミアムサウンド・オーディオシステムのスピーカー。

こちらはフロントの中高音用スピーカー。アルミの質感が美しい。

関越自動車道を北上するにつれて外気温が下がってきた。ここで本領を発揮するのが北欧ならではのヒーター機能だ。シートヒーターが備わるのは当然のことながら、V90でさらに幸せを感じたのは外気温が10℃を下回るとシートヒーターとステアリングヒーターが自動で始動する機能があること。これは女性にとってうれしいポイントである。さらにフロントシートにはマッサージ機能も完備されているため、少し運転に疲れを感じたときでも至福の環境を提供してくれる。

シートヒーターはリアシートにも備えられる。リアの空調も左右独自で温度を設定することができる。

リアシート用のエアコン送風口がBピラーにも。ペットを乗せるときにもうれしい環境だ。

ロングドライブの終盤は雨が本格的に降ってきたが4WDなのでまったく不安感はなし。2.0リッター電動スーパーチャージャー&ターボエンジン(B6 AWD)の燃費はどうだったかといえば、平均11.7km/Lだった。カタログには燃費(WLTCモード)11.4km/Lとあるので相応の結果といえるだろう。

それにしても、ほんの数時間前まではロングドライブに不安を感じていたのが嘘のようだ。運転支援機能のサポートを受けながら、シートヒーターとマッサージに癒されて、素晴らしい音響をBGMに紅葉を満喫し、気付けば目的地の金沢はすぐそこだ。

今回の宿はハイアット セントリック 金沢。金沢駅西口のすぐ近くに2020年8月にオープンしたばかりの真新しいホテルだ。入口で迎えてくれる光り輝く松のオブジェは圧巻だった。金沢といえば金箔。そして松といえば兼六園。よく見ると、このオブジェは工具や鋤などの金属を叩いて形作られているようだ。他にも加賀友禅やうさぎなど、金沢らしいモチーフが館内の各所に配置されており、伝統とモダンが融合した見事なオブジェは、訪れた人の「金沢へやってきた」という高揚感を一気に高めてくれる。



寄り道をしていた分、金沢に到着する頃にはすっかり日が暮れていたが、予想していたほど疲れなかったというのが正直な感想で、約500kmを走ってきたとは思えないほど。疲れ果ててしまって、せっかくの金沢を楽しめないのでは?という懸念も杞憂だった。むしろ自分にエネルギーがチャージされた気分だ。

さて、明日はどこへ行こう。加能ガニ・香箱ガニの漁が11月6日に解禁されたばかりだから近江町市場へ出かけてみようか。加賀百万石の伝統工芸に触れてみようか。ボルボV90のおかげで、旅先でも充実した時間を過ごすことができそうだ。



ボルボ V90 B6 AWD INSCRIPTION
ボディサイズ:4945×1890×1475mm
ホイールベース:2940mm
車重:1930kg
エンジン:水冷直列4気筒DOHC 16バルブ(インタークーラー付ターボチャージャー)[ガソリン]+電気モーター
最高出力:220kW(300ps)/5400rpm(ECE)
最大トルク:420Nm(42.8kgm)/2100-4800rpm(ECE)
変速機:8段AT
駆動方式:AWD
車両本体価格:884万円(税込)

文・写真:オクタン日本版編集部

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