スポーツカーのハンドリングをもつ 豪快で快適なオールラウンドSUV アストンマーティン DBX

Photography:Ryota SATO


 
もうひとつ、忘れてはならないのがルーフのほぼ全面をカバーする巨大なパノラミック・グラス・サンルーフで、これがもたらす開放感はまさに圧倒的。ただし、ティンテッドグラスを使っているため強烈な陽射しを和らげる効果が得られるほか、それさえ不要であれば電動サンシェードを閉じることで落ち着きある空間に様変わりする。DBXの心地よさを強調する、実に魅力的な装備だ。
 
ダッシュボード上のスイッチを押してエンジンを始動させる。DBXに搭載されたのは最新のアストンマーティンではお馴染みのメルセデスAMG製の4リッター V8ツインターボだが、その音量はぐっと抑えられている。チーフエンジニアのマット・ベッカーは「家族が車内で会話できることがSUVにとっては重要」と語っていたが、まさにそれが反映された格好だ。しかも、スロットルペダルを踏み込めば「シュワーッ」と澄んだ高音が響く。これはV8エンジンの点火順序を見直すことで実現したものだという。


 
中低速域のトルクが豊富で優れたレスポンスを発揮するこのエンジンのおかげで、DBXの走りは軽快そのもの。スロットルペダルをフロアまで踏み込むといきなり3速分くらいシフトダウンしてびっくりするが、都市部でのストップ&ゴーで小気味いい反応を示すだけでなく、ヘビーウェットのワインディングロードでもコントロール性は良好。もちろん、550psのパワーをフルに解放すれば0-100km/h加速を4.5秒で駆け抜け、最高速度は291km/hに到達する瞬足振りを披露する。
 
乗り心地はしっかりと引き締まった感触を伝えるいっぽうで無粋な衝撃や振動を伝えない洗練されたもので、快適性は高い。ただし、それ以上に驚かされるのが、DBXのハンドリングの奥深さだ。ステアリングレスポンスをわざと過敏に仕立てたりせず、正確さやリニアリティの高さを第一義に考えている点は、スタイリング同様、アストンマーティンの良心が滲み出ているともいえる。


 
しかもステアリングを通じて得られる感触がバツグンに良い。ボディのフロントセクションやステアリング系のどこにもあいまいな部分がないため、路面とタイヤの関係がいついかなりときも克明に伝わってくる。それでいながらステアリング・インフォメーションの雑味成分は見事に遮断されているので、その感触は実に洗練されている。ボディが大きく、タイヤの扁平率も低いとはいえないSUVのハンドリングとしては驚異的な仕上がりだ。
 
おかげでハードコーナリングもSUVとは思えない安定したスタンスを保ったまま、楽々とこなしてしまう。スポーツカーのハンドリングとオールラウンダーな快適性を備えたDBXは、スポーツドライビングの心得を持ちながらも家族とのコミュニケーションも大切にする真のジェントルマンにこそ相応しい新世代のラグジュアリーSUVといえる。


アストンマーティン DBX
ボディサイズ:5039mm×1998mm×1680mm
ホイールベース:3060mm 車両重量:2245kg 
エンジン形式:V型8気筒 DOHCツインターボ
排気量:3982cc 駆動方式:4WD 変速機:9速AT
最高出力: 550ps/ 6500rpm
最大トルク: 700Nm/ 2220 - 5000rpm
最高速度: 291km/h
本体価格: 2299万5000円(税込)

文:大谷達也 写真:佐藤亮太 Words:Tatsuya OTANI Photography:Ryota SATO

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