フランス旧車協会が厳選した20台を展示│文化省が車を文化のひとつに認定

先日の日曜日はパリの車好きにとって退屈な一日だった。そう、La journée sans voitures à Paris(パリ ノー カー デイ)だったのだ。

6回目を数えるパリから車を閉め出そうという規制。秋の空の下マイカーを規制してパリをのんびり散歩で楽しんでというパリの呼びかけと裏腹に、久しぶりに1日中の雨と秋を通り越して最高気温も12℃という天候に、車やバイクに乗れない気持ちのようにどんよりとして寒々しいものとなった。なので、今回は先週末のヨーロッパ遺産の日のもうひとつの車に関するニュースをお伝えしよう。

先週末は快晴で汗ばむような晴天だった。パリの中心地。ルーブル美術館の向かいにパレ・ロワイヤルがある。現在ここには文化省や国務院が入っている。このヨーロッパ遺産の日に文化省は車を選んだ。このパレロワイヤルに遺産として、文化として20台の車を展示したのだ。文化省はその名の通り、芸術、文化を保護、振興指定いるフランスの省のひとつ。そこが車を文化のひとつとしたのだ。

FIAT 500L。1957年に誕生したFIAT 500はイタリアの国民車となった。展示車は1971年モデル。このモデルは1986年の第2回フェスティヴァル・オート・モト・レトロを皮切りにこの日の展示も合わせヨーロッパの多くのイベントの展示車として活躍中。

フェラーリ275GTB<ロングノーズ>。1966年に440台のみ生産された。フランスに新車で登録されたモデル。

AC Ace Bristol Roadstar。元々のオーナーはこれで、地元の草レースから南アフリカのキャラミ9時間レースに参加。その後1998年に発見されフルレストアされた。製造から60年たった今、二人目のオーナーの手に渡ったのだ。


車を手配したのはFFVE(fédération française des véhiculesd’époque:フランス旧車協会)だ。パレロワイヤルの中庭にFFVEによって選ばれた20台の車が展示された。コロナ禍とパレロワイヤルの敷地内ということで一応は入場を制限しながらだったが他のイベントとも各地で行われてることもあり混乱はなくスムーズに見学が出来た。来場者が熱心にその車をのぞき込んだり写真に撮ったりと関心の高さには驚くほど。ここに来場する人たちは特に来るままに後言うわけでもないようだ。

プジョーVLV(véhicle léger de Ville:街の軽量車)。1941年という第二次大戦まっただ中。ガソリン不足から電気自動車を発表。しかし戦時下、占領下の中で377台のみの生産に終わった。

ポルシェ356クーペ1600S。この車は第19代フランス大統領のジョルジュ・ポンピドゥーの妻であるクロード・ポンピドゥーの名で新車登録されたモノ。現在はポルシェ・フランスのコレクションとして保管されている。


数人に声をかけてみたが普段は車を足代わりとする一般市民で、それがここに来て車の奥深さに関心を示したという。年配の来場者は”誰々が乗っていた”などと懐かしむ場面もある。現実問題公害や温暖化などの問題もありパリからは化石燃料とする自動車を排除する方向ではあるが、歴史的にも車の創世記から関わってきたフランス。車を文化とし、自国の遺産として国の省庁がこういった企画をすることに敬意を表したい。写真はここに展示された20台を紹介。

FACEL VEGA Facel III カブリオレ。シトロエンのエンジニアだったジャン・ダニノによって立ち上げられたブランド。ドライエ、タルボやブガティなどと並ぶフランスのラグジュアリーカー。

ルノー4L パリジェンヌ。1963年雑誌のELLEの協力で1台のルノー4を48時間で4200人の女性に試乗してもらった。そこで翌年にそれを記念した女性をターゲットとした特別モデルパリジェンヌが登場した。

写真&文:櫻井朋成 Photography&words: Tomonari SAKURAI

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