車の大きさを感じさせない走りの気持ち良さ│誰にでも勧められるSUV 2代目 アウディ Q3

去る7月7日にアウディのSUV「Q3」の2代目が本国デビューから実に2年遅れて、ようやく日本デビューを遂げた。そして、9月9日にアウディジャパンとして10カ月ぶりとなる試乗会が箱根で開かれた。

試乗したのは、2リッター ディーゼルターボエンジンを搭載した最上級モデル、「Q3 35TDIクワトロSライン」だ。Sライン専用のバンパー、スポーツシート、サイドシル部分の専用エアロパーツなど、通常モデルと見比べると差別化が図られている。スポーティなルックス、という売り文句ではあろうが、Sラインは上級グレードらしく“飾り”が装着された感が漂う。
 
コンパクトSUVに分類されるQ3だが、身長175㎝の筆者には必要十分なスペースが前後のシートで確保されている。フロントシートのドアポケット、ダッシュボード下の収納スペース、助手席下の収納スペース、リアシート脇のポケット、リアドアポケット・・・、日本車が得意とすることを貪欲に研究したように思えてならない。スマホやタブレット、ポケットゲーム端末、モバイルバッテリー、ペットボトルの水を持ち運ぶ今時な“ヒップ”なユーザーを思い浮かべているのだろう。



フロントグリルで特徴的なオクタゴンのシングルフレームグリルをモチーフとしたデザインは、インストルメントパネルにも反映されている。アウディの上位モデルから受け継がれた10.25インチのフル液晶ディスプレイ式デジタルインストルメントクラスターやタッチスクリーンを備えた MMIなどにより、スタイリッシュで先進的なデジタル体験が提供されている。また、メーターパネルは「バーチャルコックピット」と呼ばれ、マルチファンクションディスプレイやトリップコンピューターを表示できるのは、まさにDX(デジタル・トランスフォーメーション)時代真っ只中である“今”を象徴している。
 
この液晶ディスプレイはドライバーが操作しやすいよう配置されていると同時に、ドライバーはステアリングホイールに配されたスイッチでも操作できる。ただ、この手のインフォテイメントは助手席の人も操作したがるもの。センターコンソールにはデザイン的に“どうした?”と思わせるほど唐突にポツんと、オーディオのボリュームやトラックを操作するボタンが取り付けられている。あくまでも筆者の想像に過ぎないが・・・、設計の最終ステージで急遽、改善策を出したのではないか、と思ってしまう。
 
2リッター ディーゼルターボエンジンは最高出力150psと聞こえこそ非力だが、最大トルクは34.7kg-mもあるので力強い加速をもたらしてくれる。アクセルをちょっと踏み込むだけで、直感的に “軽いボディだなぁ”と思わせるほど。しかし、車両重量は実に1700kgもある。それほどパワフルな加速をするのだ。
 
そして車両重量を感じさせないもう一つの点に、足回りの良さが挙げられる。235/50R19というワイド&ロープロフィールなタイヤを履きながら、不快感の伴わないちょっと硬めな乗り味を実現させている。荒れた路面では、サスペンションが凹凸を吸収していることが伝わってくるが、SUVにありがちな“ドッシン、ドッシン”とボディが揺さぶられるような不快感とは無縁。もちろん、ボディのガッチリした剛性感もひと役買っているに違いない。


 
驚かされるのは、箱根のワインディングロードでもグイグイ曲がっていく様だ。しつこいようだが、1700kgという車両重量は決して軽くない。おまけに最低地上高を180mm確保したSUVであるにもかかわらず、車両重量も背の高さもまったく感じさせず、どこまでも軽快にコーナーを駆け抜ける。ボディの動きと足回りの動きにチグハグさがない。また、走りの気持ち良さは、速度感応式電動パワーステアリングのステアフィールの良さも影響しているだろう。ステアリングの舵角の大きさ、ステアリング操作量がドライバーの思うまま、なのだ。

足回りの良さが際立っているため、もっとアクセルを踏み込みたくなる欲求に駆られる。ただ、この2リッター ディーゼルターボエンジンは低回転域でのパフォーマンスが重視されているゆえにアクセルペダルを幾ら踏み込んでも、ある一定以上からは加速しないように感じる。また、中間加速域でもっとパワーが欲しい、と思っても・・・、面白い反応に薄い場面があった。そういう意味では「シャシーはエンジンよりも速く」を体現したような車だ。もっとも、そこまでの加速性能を求めるのであれば、今後登場するであろうSQ3やRSQ3などを狙うべきなのだろう。



ラゲッジスペースは通常時で先代モデルよりも70リッター拡大し、530リッターとクラストップレベルの収容力を誇る。また、リアシートは前後スライドとリクライニングが可能で、リアシートを格納すれば最大1525リッターまでスペースを拡大できる。ラゲッジスペースのフロアボードは高さの変更が可能なほか、フロア下にリヤパーセルシェルフを格納できることもできる。ここまで自在に荷室スペースを生み出せれば、大概のアクティビティには対応できると推測する。なお、アウディジャパンとしては“アクティブな20代後半から40代で子供が一人居るヤング・ファミリィ”が想定ターゲットだそうな。



走りの良さは前述の通りだしコンパクトサイズゆえに取り回しは良く、日本の日常生活における送り迎えや買い物で苦になることは皆無だろう。中間加速域での不満を指摘させてもらいはしたが、市街地であれば加速性能に不足は一切ない。そして、高速道路を使った移動ではアウトバーン育ちを感じさせる抜群の安定性と、経済的な燃費が期待できる。Q3はワインディングロードも得意だが、高速道路をただひたすら走って移動する、ということにも実は長けている。ヤング・ファミリィで全国各地のキャンプ場を巡る・・・、実に羨ましい姿だ。個人的にはキャンプやアウトドア・アクティビティなどをせずとも、ヤング・ファミリィでなくとも、いざとなれば荷物をたくさん載せられる長距離移動車両として誰にでも勧められる車だと思う。

文:古賀貴司(自動車王国) 写真:佐藤亮太

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