知っておきたい!「出発点に戻ってきた」四輪駆動の120年にわたる歴史

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ランボルギーニ・ディアブロVT

四輪駆動が高性能ロードカーで効果的なら、スーパーカーではどうか。その草分けは(またしても)ポルシェ959だ。ブガッティEB 110も注目に値するが、四輪駆動の恩恵をフルに生かしたのはランボルギーニだった。1993年のディアブロVT以来、ムルシエラゴ、アヴェンタドール、ガヤルド、ウラカンと、主要モデルすべてで同様のシステムを存分に活用している。四輪駆動によって、二の足を踏むような威圧的なマシンでも怖さが幾分抑えられ、その能力は大幅に向上した。"VT"は"ビスカス(粘着性のある)・トラクション"の頭文字。ハンドリングの特性や反応を劇的に変えることなく、エンジンが発生するトルクを最大25%までフロントタイヤに送るシステムを備えた。


ポルシェ911

ポルシェは、四輪駆動に圧倒的な威力があることを959で証明した。これをさらに押し進めたのが、959の技術を組み込んだ1989年登場の964型911だ。トラクションの増大もさることながら、フロントの重量が増えたことで、ヒヤリとさせられる911のハンドリング特性が多少なりとも和らげられた。以来カレラ4は、911を1年通して利用する人にとって最良の選択となっている。純粋主義者でないなら、どの世代の911でもこれを選べば間違いない。


ジープ・チェロキー&レンジローバー

小型・軽量の軍用車で名を成したジープは、間もなく大型のファミリー向けモデルにシフトした。それは1963年のワゴニアで始まったが、ヒットとなったのは1974年に発売されたチェロキーだった。こうしたモデルが現代のスポーツ・ユーティリティー・ヴィークル、SUVの礎となる。加えて、高級"似非オフローダー"人気の先駆けとなったレンジローバーにも触れないわけにはいかない。初代レンジローバーはエレガントだが、設計とデザインはシンプルだった。しかし代を重ねるごとに、ますますラグジュアリーでファッショナブルになり、現在の高級SUVへの高い需要を生み出した。


ポルシェ・カイエン

SUV をクールにしたのはレンジローバーかもしれないが、カイエンは、SUVがハンドリングの優れた高速ビーストにもなり得ることを証明した。特にカイエン・ターボのパフォーマンスは、たいていの高性能モデルを上回る。好きか嫌いかは別として、カイエンが今のスーパーSUVのテンプレートとなり、ポルシェに莫大な利益をもたらしたことは確かだ。


日産スカイラインGTR

スカイラインGT-Rは、クワトロのラリーでの活躍をサーキットレースで再現しようと試みた。コンピューター制御で必要なところにパワーを分配するクレバーな車だった。世界中のツーリングカーシリーズを席巻し、付いたニックネームは"ゴジラ"。あまりの強さに、翌年は四輪駆動車に厳しい足枷がはめられ、四輪駆動を完全に禁止したシリーズもあった。


テスラ・モデルS、そして未来へ

四輪駆動は未来の自動車技術においても不可欠な要素となるだろう。出力とトルクが一定の範囲を超えたら、理にかなうのは四輪を駆動することだけだ。さらには電気駆動が新たな可能性の世界を切り拓きつつある。2014年登場のテスラ・モデルS は、デュアルモーターを備え、エキサイティングな電動四輪駆動車の可能性を世に示した。不要なギアボックスやかさばるトランスファーボックス、プロペラシャフトは排除。前後アクスルにそれぞれ電気モーターを備え、中央のトルクベクタリングデフが、モーターがゼロrpmから発生する強力な最大トルクを分配する。サッカーに例えれば、テスラは電気自動車のゴールの位置を変えたといっても過言ではない。2019年に登場したポルシェ初のフル電気自動車タイカンも、同様の2モーターレイアウトを採用した。1世紀以上前の遠い祖先、ローナー・ポルシェと同じだ。いま私たちが目にしているのは新たな可能性の幕開けにすぎない。しかしタイカンが示すように、今後も四輪駆動のパフォーマンスカーが姿を消すことはないだろう。

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo. ) Transcreation:Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.)  原文翻訳:木下 恵 Translation:Megumi KINOSHITA Words:Matthew Hayward

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