快適を売りにする車をラリー仕様に造り替えた!英国車ローバーとラリーの歴史

Photography:Tim Andrew

レイランドに帰属する前の最後のローバーである。20世紀半ばの英国自動車クリエイターたちが、快適を売りにする車をラリー仕様に造り替えた一例がこれだ。

正直にいおう。リチャード・ソーンから電話がかかってきた時、僕はこんな感じだった。
 
A:あまりに夢中で他の仕事のためにキーボードをたたいていて、彼が何といったか明確には理解していなかった。
B:プロのモータージャーナリストとしてローバーP6ラリーカーの話など価値はないと判断した。
 
そんなことは先刻承知とばかり、リチャードは話を続けた。「1966年のラリーチームの車なんだけど、いちげんさんに売っちゃったよ。だけど、これって面白い話にならないかなぁ」たしかにこの一言は、僕を古いブリティッシュ・ブランドの知られていない歴史に少しだけ導き入れた。でも、同時にローバーは母国以外で知られていない有能なドライバーみたいなものだし、このストーリーの結末がどうなるのか僕にはさっぱりわからない。

1966年といえば、モンテカルロでミニが1、2、3フィニッシュした年だ。ところがつまらないレギュレーション違反で3台とも失格。BMCはこの小さなミスに大きな代償を払うことになった。ついでにいうと4位に入ったロジャー・クラークのロータス・コルチナも、同じレギュレーション違反で失格。さらに6台ものイギリス車が失格の烙印を押された年である。だが、ローバーだけは違った。大きな対価を得たのだ。たしかに僕の拙い知識でも、ローバーにとって当時ラリーでの活躍による効果が一体どの程度の対価であったのか、という点はなんとなく理解できる。



念のためにお話しておくと、1967年にブリテッシュレイランドに帰属する以前のローバーは、英国以外ではソリッドだが感激のない上級サルーンとして知られていた。まあ、昔のボルボみたいなものだ。ステレオタイプのユーザー層は退役軍人で、毎日ゴルフに明け暮れ、ランチはブルーブレザー、レジメンタルタイを着用し、そして文句ばかりいう。そんな人々である。あるいは銀行のマネージャーかも知れない。1949年から64年まで作られたP4は、「おばさん」というニックネームで呼ばれるほどである。

編集翻訳:中村孝仁 Transcreation:Takahito NAKAMURA Words:Dale Drinnon Photography:Tim Andrew

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