古くて新しいドイツウォッチ / モリッツ・グロスマン

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あきれるほどの手間と時間を費やして、一本ずつ丁寧に "古き良き時代の機械式時計" の姿を蘇らせた「モリッツ・グロスマン」を、単なる古典的な時計であると済ませることはできない。100年後まで愛し抜ける、機能的でシンプルで美しい、最新技術の古典時計がここにある。


時計の起源は日時計。太陽が作る影の規則的な動きで時間の流れを計測し、暦を作った。機械式時計は13世紀頃に登場した。当初は教会の塔などに使用されていたが、徐々に小型化が進み、17世紀頃に携帯可能な懐中時計が完成する。しかし20世紀に入って生活自体がスピードアップしていくにつれ、時計を取り出すという行為が不要な腕時計が完成する。現在の腕時計は時分針で時間を示すだけでなく、付加機構を搭載することで "月の満ち欠け" や "閏年まで把握したカレンダー" を表示できるようになった。さらにはGPS衛星を使って正しい現在地時刻に修正するモデルやスマートウォッチも増えている。時計の歴史は、新たな段階へと突入しつつあるようだ。

しかし性急な進化だけが正解ではない。連綿と受け継がれてきた時計産業の歴史と伝統を再評価する、古くて新しいドイツの時計ブランド「モリッツ・グロスマン」が話題になっているのは、時代への反動かもしれない。

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ブランド名である「モリッツ・グロスマン」とは、19世紀中ごろにドイツ時計産業の中心地グラスヒュッテで活躍した時計師のこと。彼は時計学校を設立し、時計技術を書物にまとめるなど、時計の文化的側面に光を当てた人物でもあった。そのような偉大な人物が残してきた時計文化を、現代に蘇らせるべく、2008年に「モリッツ・グロスマン」という時計ブランドが立ちあがったのだ。

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モリッツ・グロスマンの時計は、どれもが古典的であり、現在の時計業界で最も懐中時計に近い存在といっていいだろう。100年単位で受け継いでいくことを目標としており、現代の時計作りでは省かれがちな、素材選びやパーツ仕上げの伝統を受け継ぎながら、特にメンテナンス性と耐久性を重視している。それゆえ現在の生産本数は1年間で200本のみ。とにかくゆっくりと時間をかけて、丁寧に時計を作っているのだ。

例えば現代のハイパフォーマンスカーが、50年後にヴィンテージカーとして残ることができるだろうか? 電子制御のメカニズムやハイテク素材は、機能的で実用性は高いが、"受け継いでいく" ことは難しいだろう。それは時計も同じである。トレンドに合わせた技術は、時代によって変化してしまう可能性がある。その時、愛しぬいた時計はどのような扱いを受けるのだろうか......。

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しかしモリッツ・グロスマンは、50 年後、100年後を見ている。金属を削り、磨き、丁寧に組み立てるという素朴な行為は、便利な時代だからこそ価値があるのだ。

モリッツ・グロスマン公式ページ:www.grossmann-uhren.com

文:篠田哲生

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