北へ、南へ、シトロエン2CVと30年│第8回 まあまあの故障

2CV乗り、シトロエン乗りに共通する悪い癖、いや“サービス精神が旺盛”と言い換えるべきかもしれないが、故障ネタは盛り上がるからついつい話してしまう。前回の室内灯ネタも予想以上に好評を博した。そう、悪い癖だとわかってはいるものの、今回は少し前に起きた「除湿剤に救われた事件」について皆さんに報告することとしよう。



少し前から前兆はあった。だから交換パーツも入手済みだった。近いうちに直さなければと思っていたものの、面倒だったのでそのうち馴染みの整備工場に持ち込もうと思っていた。しかし……。

それは突然悪化した。その時は隣に知り合いを乗せていた。前から2CVを見たい、乗りたいと言っていた友人だ。「おお〜、すごいですね〜」「いや〜、素晴らしい!」などと誉めてくれるので少しいい気分だった。

「でも、壊れないんですか?」

2CVに乗った人が必ずする質問だ。その質問にはもう175回くらい答えている。前回のこの連載でも同じことを書いた。

「2CVは適切な整備を行っていればそんなに壊れないんですよ。長年、世界中で多くの人々から愛されてきた車だけに、2CVの壊れやすい箇所、部品は概ね特定されているから」

得意げに176回目の回答をした直後だった。

ビリッという音とともにお尻が沈んだ。しまった!と思ったのは原因に心当たりがあったからだ。シートの座面を裏側から支えている「布」が破れたに違いない!



「布」が破れた!と言われても何のことやら!という方も多いと思うので、ここで解説しよう。2CVのシート構造は非常にユニークで、上の写真(ちなみにこれはリアシート)のように鉄のシートフレームからたくさんのゴムリングでつながった「布」が座面やシートバックの表皮を支えている。「布」の左右端は折り返されて袋状になっておりその中を太い針金が通っている。そこにゴムリングの先端についた金属製のフックを引っ掛けているのだ。

ゴムリングが切れてしまうトラブルはよくあるので、手練れの2CVオーナーならスペアをLHMとともにトランクに常備しているはずだ。しかし「布」にも寿命がある。過去2回交換しているが、前回交換してから既に15年が経過していた。そして少し前に切れたゴムリングを交換した際、「布」の亀裂にも気がついていた。だから冒頭に書いたようにスペアパーツは入手済みだったのだ。

いつか破れるとは思っていたものの、まさか今日破れるとは思っていなかった。多くの人がする言い訳だ。在原業平さんも言っていた。

しかし、不思議なことに「布」が破れた割にはお尻が沈み込まない。前回破れたときは床に尻餅をついて、前が見えないくらい沈み込んだ記憶がある。少し座高は低くなったが背筋を伸ばせば誤魔化せるレベルだ。多分、隣に乗っている友人は異変に気付いていない。でも何か硬いものに当たってお尻が痛い。

ついさっき偉そうに「壊れないウンチク」を垂れたばかり。2CVの名誉のためにも自分のプライドのためにも、彼を降ろすまでは隠し通さねばならない!

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